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イセカイ×イサカイ=腐れ外道  作者: 里中葉月
二章 【魔法】
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『依存症の魔法使い』

 リリーがアイリスを立ち直らせた後、三人はとりあえず外に出ることにした。


 外では屋敷の中で発生した音や光を警戒して兵士が慌ただしく動いていたが、アイリスが『特に何も起きてない』と誤魔化すことで次第に騒ぎも収まっていった。

そのまま三人は部屋を借りていた宿へ向かうと、この先アイリスはどうするべきなのかについて話し合うことにしたのだった。




 「……それで、どうしてこんなことになってるのかな?」

越喜来は、苦笑いを浮かべながらリリーに問いかけた。

「わ、私が知りたいわよ。とりあえず、この子を早く何とかして!」

リリーはリリーで、顔を真っ赤にして慌てている。

二人の視線の先には、リリーにベッタリとくっついたまま離れないアイリスの姿があった。


 「ああリリーさん、私もうどこまででもついてきます! いいですよね、いいですよね! だって私必要としてもらえたんですもんね! ねぇリリーさんってば!」

アイリスは、リリーの腰に手を回すとキツく抱きつき、まったく手を離そうとはしなかった。

「ちょっと! これどうなってるのよ、何かすごくくっつかれてるんだけど!?」

リリーは何とかそれを引きはがそうとするが、びくともしない。越喜来に助けを求めても、返ってくるのは苦笑いだけだった。


 「まあ、当たり前と言えば当たり前なんだ。他人に依存するタイプの人間が傷ついてるところに、リリーは手を差し伸べたんだから。こういうタイプの人間は、その手を握ったままずっと離さないことが多いからね」

越喜来がそう言うと、アイリスが嫌な目つきで越喜来を見た。

「あなたは色々言わないでください。私は今リリーさんと話してるんです!」

そうとだけ言うと、またリリーの方を向いてしまった。越喜来の顔が、笑ったままひきつっている。


 「アイリスが、私に依存してるってこと!? ちょっと、どうにかして……」

「無理だよ。僕はさっきので随分と嫌われたみたいだしね。救ったのは自分なんだから、最後まで責任取りなよ」

リリーの必死の呼びかけをそう躱すと、越喜来は思い出したようにアイリスの方を見た。

「責任といえば、アイリスの罪に関してはどう責任を取らせようか。これをまず話し合おう」

越喜来はそうやってまともにアイリスの処遇について提案したが、この話がまとまるまでにはなんと三時間もかかった。

そのほとんどが、暴走するアイリスを止めるために費やした時間なのは言わずもがなのことである。




 「これで、最後かな」

越喜来が、最後の患者を見送ってそう呟いた。

あの後、二人はアイリスに襲撃事件の被害者を治療させることにした。

アイリスの『魔法の傷は治せる』という発言に嘘はなかったようで、集まった被害者は皆完治し、嬉しそうな顔で帰っていった。


 「それにしてもあなた、少し反省した?」

リリーはそんな越喜来を見て、笑いながらそう言った。

「反省? してないけど、何で急にそんなことを?」

「だって、この治療をする時に『アイリスが犯人だということは黙っておこう』って提案したのあなたじゃない」

心外だとばかりに否定する越喜来に、リリーはこれが証拠だと指摘した。


 越喜来は街の人に向けて『襲撃事件の犯人が見つかったらしい』と発表した上で、『解決祝いにアイリスが治療してくれるらしい』と宣伝したのだ。

それを聞いた街の住民は、ホッとした顔をしていた。


 「それは別に、思いやりとかじゃないよ。ただ、これ以上面倒な騒ぎを起こされたくないだけさ」

越喜来はそう言ったが、リリーとは目を合わせずにそっぽを向いてしまった。

「……ほんと、嫌な性格してるわよね」

リリーはそれを見て呟くと、治療のための器具を片付け始めた。



 治療が終わった翌日、二人は宿屋の中で荷物をまとめていた。

リリーは越喜来の目の届かない場所に隠れると、一人でメモを取り出し、書き始めた。





 今回、主人公の仲間であるアイリスに接触。しかし、有用な情報は得られなかった。

この先も奴の仲間に接触する機会には、情報を得ることを最優先したい。


 街での襲撃は解決した。前の村と同様に、我々が奴の仕事を肩代わりする羽目になっている。本当にこれは偶然だろうか。


 魔力供給は、続けさせることにした。襲撃事件も無くなり、魔力に頼りたくない人もやっていけるようになるだろう。この街が本来の姿に戻り、少し安心した。






 「さてと、じゃあそろそろ行こうか。この街ではろくな情報が手に入らなかったしね」

越喜来は、ほぼリリーの私物で構成された荷物を持つとそう言った。

「ええ。でも、行くといってもどこに行けばいいのかしら。これでとうとう、何の手がかりもなくなっちゃったわよ?」

リリーはメモを隠すと、頭を抱えて言った。このまま闇雲に街をめぐるだけでは、いつまで経っても主人公に近づけないのだ。


 「確かに困りましたね……そうだ、アイリスに聞いてみるのはどうですか? 彼女なら情報を持っているかも!」

「それだわ! いいアイデアね、アイリス……ってアイリス!? 何でここにいるのよ!」

二人の会話にちゃっかり混ざっていたアイリスに、リリーが驚きの声をあげた。

「えー? 言ったじゃないですか。私どこまでもついていきますって。それに、アドル――主人公を探すなら、私の持つ情報は結構重要だと思いますよ?」

アイリスはリリーの腕にしがみつくと、上目遣いで言った。


 「う、で、でも! 過去に主人公と接点あるとはいえ、もう無関係の人を巻き込むわけにはいかないし! ねぇ越喜来、そうよね!?」

リリーは、なにが『そうよね』なのかわからないが越喜来に同意を求めた。

「ははは、リリーは嫌がってるみたいだ。そうだアイリス。僕にだけその情報を教えてくれるっているのは――」

「嫌です。教えません。話しかけないでください。嫌いです」

「――うん。わかった」

越喜来はあまりの嫌われ方に笑顔のまま固まると、そのままベッドに倒れ込んだ。



 「僕はもうダメだ。リリー、後は頼んだ君ならできる」

「今ので心が折れたの!? あんたいつも折る側でしょ! 攻めはいいけど守りが弱すぎよ!」

リリーがツッコむが、反応がない。もはや返事をする気力もないらしい。

「リリーさん、結局どうなんですか? もしかして、必要だっていうのは嘘だったんですか? ……ひどい」

その時、先程からのリリーの嫌がり方を見て、アイリスの中でなにかのスイッチが入った。

何かをブツブツ呟きながら、手に魔力を集め始める。


 「大丈夫です……死にはしませんから、ただちょっと抵抗できなくするだけですから……」

「それ大丈夫じゃないわよ!? 世間一般では大惨事っていうの!」

「だいたい同じようなもんじゃないですか」

「『大○○』しか合ってないわよ!? あなたそれで本当にいいの!?」

そんなやりとりの間にも、魔力は集中していく。アイリスの顔が、徐々に険しくなっていく。

越喜来は、相変わらず死んでいる。



 「……あーもう! わかったわかったついてきていいから! だからその手をおろしてー!」

ついに、リリーが折れた。それを聞いたアイリスが、さっきとは一転笑顔を見せる。

「やった! ありがとうございます、リリーさん! ああ本当に、素晴らしい人に会えて良かったです!」

「や、やめてよ離れて! ちょっと、近いってば!」

すぐにまた体にまとわりつくアイリスを、リリーは必死に止めようとする。しかしアイリスは頬を染めてリリーを見つめたまま、離れる気配は無かった――




こうして、旅の仲間に新たに依存症の魔法使いが加わったのだった。

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