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「もしも、あのとき助けられていれば」
――2111年12月29日
「あー、暑い」
真夏の日差しが容赦なく僕を照りつける。上を見上げると涼しげな青い空に真っ白な球体がぽつんと浮かんでいる。
「いつからだ、日本が一年中夏になったのは」
今からちょうど100年前の大晦日。その事件は起こったらしい。世界でも僅かな人にしか知られていないと言われていた『スペロタリタ教』という宗教があったらしい。その宗教は夏を信仰し、夏にしか活動しないという変わった宗教だった。創設者は日本人で片瀬夏諏その名の通りカスいことをやってくれたもんだと思う。
「ったく。俺が子供の頃なんてこの時期雪下ろしやってたぞ」
そんな独り言をぼやきながら目的地へと歩く。
――ここだ。
建設途中のビル。超高層で100億7000メートルあるとか。先端は宇宙だ。というのは冗談だ。いくらなんでもここまで進歩していない。100年前の高層ビルと変わらない高さである。
「緑色の服、麦わら帽子、ミニスカート、ブーツ……と」
手にしている紙に目を落とすと目的の人物の特長が事細かにかかれていた。
いた。
摂氏39度という猛暑の中で暑そうな、ブーツを履いている少女が。きっとその中はサウナみたいにムンムンしているのだろう。決して興味本位で臭いを嗅いではいけない。たぶん死ぬ。
右腕につけたデジタル時計に目を落とす。性格にはデジタル時計ではない。アクアと呼ばれる電子機器のようなものである。昔とあるゲームで登場していたものが実現化したのだ。開発者はそのゲームを最後までやったのか知らないが。
『予定時刻まで 00:00:10』
「あと10秒」
あと10秒したら俺は死ぬ。
彼女の代わりに。
10
9
8
7
6
5
4
3
2
1
………………0
俺は駆ける。彼女が立っているその位置へボールを追いかける犬のように――。
「任務、完了っ!」
「きゃぁ!?」
彼女を突き飛ばす。
手に柔らかい感触。うわ、あとで捕まらないようにいいわけ考え――
「危ないッッ!」
誰かが叫ぶ。
俺の意識は一瞬にして途切れた。
( O )
『代理死亡承ります』
そんな広告を家の玄関前に張り出したのは俺がこの世に生まれたときだった。
最初から19歳。男性、無職。
おまけに頭も悪いし、人一倍に運動ができるわけでもない。
そんなこと全て知っていて生まれた。
――いや、生まれさせられた。
望んでなんかいない。
俺は生まれさせられたのだから。
誰に? 世界中の奴だよ。
死という概念は今も昔も変わらない。
みんな生きたがっている。もちろん、死にたい奴もそりゃいるさ。そう言う奴は除いての話だ。
事故――
今こそは自動車の衰退で減ったが昔は交通事故が頻発していたらしい。というか、俺が見てきたんだから間違いない。目の前で死んだ親父の姿は一生忘れない。
「ああー」
目が覚めるといつもの部屋。
まるでゲームをやらされているようだ。
いや――ゲームだ。これは。
俺はわき役。主人公を守って死ぬ。かっけーじゃん。
そういう使命なら承ってやろうじゃねえか。
そういうことで代理死亡をやっている。
家のポストに入った人の名前を見るとそいつがいつ、どこで、どんな風に死ぬのかがわかる。なんでかはわからん。俺が昔に生きていた頃はそんな能力なかった。
俺は知っている。
人を一人助ける度に、誰かがこの世から消えているということを。
数の調整だろう。
人間、多すぎちゃだめだ。
きっと、この世界の創設者がそうしている。
外にでてポストを覗く。溢れんばかりに手紙が入っていた。
夏の日差しが暑かった。
うそつき!
小説年内に書かないって言ったろ!
すいせんん!!!
書きたくなりました!
今度こそよいお年を!!!




