【第1話:朝の光と、鋼の処刑者】
「恥じらいは弱点……? なら、俺の胸元でゴロゴロ鳴いてるのは誰だよッ!?」
異世界最強のSランク戦姫は、独占欲の塊でした。
最強ヒロインが「美しすぎる」の一言で赤面チョロインに堕ちるまで……わずか数秒。
※全3話の短期集中連載です。需要有りなら、王族への「ざまぁ」が炸裂する異世界帰還編を開始します!
ぜひ最後までお付き合いください!
――どこかも分からない場所。
智也が目を覚ました時、そこにあったのは温もりではなく、肌を刺すような**「死の予感」**だった。
すぐ横で、少女が目を見開く。黒い猫耳が、音もなくスッと立ち上がる。
彼女――シオンは、叫ばない。ただ、吸い込まれるような深淵の瞳で智也を凝視し、指先を微かに動かすだけで、厚手の羽毛布団を「微塵切り」にしてみせた。
「…………これは……?」
低く、鈴の鳴るような、だが凍てつくような声。
彼女はゆっくりと、全裸のまま起き上がった。その動作に、一切の羞恥はない。あるのは「戦士」としての最適解だけ。
「……魔力がない。……大気の質も違う。貴様。……ここが奈落か? それとも、貴様の作り出した精神牢獄か?」
シオンの指先が、智也の喉仏に触れる。鋭い爪が、皮膚を一ミリだけ裂いた。
異世界バルバラガンドにおいて、国に三人しかいないと言われる冒険者Sランク・「黒猫の戦姫」。
「……ま、待て! 何なんだお前はッ!」
智也は叫びながら、ベッドから転げ落ちた。そのままの勢いで、フローリングに額を擦り付ける。「……申し訳ありませんでしたぁッ!!」
理由も罪状も不明。だが、目の前の存在から放たれる圧倒的な「圧」が、生存本能を呼び覚まし、究極の防御姿勢――土下座を選択させた。
(……ほう。これほど無様に、かつ完璧に急所を晒すとは。暗殺者の類ではなさそうだが……)
シオンは冷徹に智也を観察する。殺意も、魔力の揺らぎもない。ただただ、混乱と恐怖に震える男。
(……フン。これほど弱き個体に、悪意を持つだけの器量などあるはずもないか)
「……面を上げろ。なぜ、肌を晒す程度でそれほど動譲する? 戦いにおいて、恥じらいは弱点となろう。……貴様の国では、裸体を見ると死ぬ呪い(ギアス)でもあるのか?」
シオンは一歩、智也の鼻先まで歩み寄った。朝日に照らされ、白磁のように輝く肢体が、土下座する視界のすぐ横に並ぶ。智也は、意を決して顔を上げた。
そこにいたのは、月光のように白い肌、しなやかな身体、そして夜空を切り取ったような、深く、鋭い瞳を持つ絶世の美女。
「…………っ」
智也は、言葉を失った。大の猫好きである彼の魂は、目の前の「気高き黒猫」の、想像を絶する美しさに、ごっそりと持っていかれた。
「……あ、あまりに……美しすぎて……」
智也の口から、本音が漏れる。その瞳は、彼女の裸体という情報を通り越し、彼女という存在そのものの輝きに、狂おしいほどに見惚れていた。
「……美……? ……私が……?」
シオンの時間が、止まった。殺意で武装していた瞳が、子供のように揺らぐ。そして、その白い頬が、朝日に負けないくらい、真っ赤に染まった。
「……貴、貴様……何を……何を抜かしているッ!!」
動揺を隠そうとして、シオンは一歩よろめいた。指先の爪が、ガチガチと震えながら引っ込む。「恥じらいは弱点」……そう自分に言い聞かせ、精神力Sランクまで登り詰めたはずの彼女の鋼の心が、智也の「直球」によって、音を立てて崩壊していく。
「……わ、わかったから! 本当に綺麗なんだ! だから、とりあえずこれ(Tシャツ)を着てくれ!」
智也がおずおずと、自分のXLサイズのTシャツを差し出す。シオンはひったくるようにそれを奪い取ると、バサリと頭から被った。
「…………ふん。……妙な術を使いおって」
Tシャツの首元から顔を出した彼女は、まだ耳まで真っ赤だった。
そして、床に落ちていた智也の学生証をジッと見つめ、小さく呟いた。
「……礼を言うぞ。……『トモヤ』」
「……え? 名前、読めるのか?」
「……フン、この程度の文字、私に読めぬはずがなかろう。……『山本 智也』。……強そうな名ではないな。……だが、悪くない」
第1話を最後まで読んでいただきありがとうございます!
全裸で登場、そして「美しすぎる」の一言で赤面チョロインに……。
最強のSランク戦姫も、恋する乙女(猫)には勝てなかったようですね。
次回、【第2話:現代の魔力と、至福の処刑】
智也の胸元で「ゴロゴロ」と鳴くシオンの独占欲が暴走します。お楽しみに!




