バヌアツの一月と冬のホラー
序盤尤もらしい記述がありますが、あくまでもこれはフィクションです。ないとは思いますが真に受けないようご注意ください。
南緯18度48分50秒、東経169度7分22秒。
日本より南南東微南へ約7,000 km。
南太平洋のメラネシア地域バヌアツ諸島南部に存在するその島の名は『エロマンガ島』。成人向け漫画を思わせる島名だが当然ながら関係は全くなく、由来は『血の洞窟』『食料の土地』を意味するポリネシア語であると言われている。
日本人からすれば冗談を思わせる島名だが、その実この地の歴史は悲惨だ。
原住民は東南アジアから移住してきた諸部族が起源とされる。彼ら豚や鶏などの家畜、ヤムイモやパンノキなどの食用植物を島に持ち込んだようだが、どういうわけか食人文化が芽吹いていた。部族間の抗争も少なくなかったことから考えるに食料事情は芳しくなかったのかも知れない。そしてそんな事情と現実的対応の狩猟文化が信仰と結びついたという可能性も考えられる。但しこれらはあくまでも現代人の憶測に過ぎないのではあるが。
そんな地に西洋人として初めて上陸したのは英国人探検家ジェームス・クック、広くはキャプテン・クックとして知られる人物であったとされている。何が原因であったかは不明だが彼らは現地人との間に諍いを起こしており、双方に負傷者が発生。クックは現場となった上陸の地ポトナーヴィン付近のこの半島を裏切り者の頭と命名したという。人間狩りにでも遭ったのであろうか。
後の時代にもこの地に教化にやってきた宣教師たちがその被害に遭ったという話がある。まあ、そのときの商人たちも奴隷狩りを行っていたというのだから国レベルで見ればお互い様ではあるのだが。
とはいえ、彼らの布教の成果もあって(征服による教化の可能性も?)か、現在では国民の多くはキリスト教であるという。当然ながら食人文化も過去のものである。
そんな歴史もあって、毎年クリスマス前後になると神様が雪が降らせ人々の諍いを止めるようになったという伝承がこの地に生まれたという──
「んなわけあるか!
南半球赤道近辺のバヌアツの1月に雪なんて降るわけがないだろうが!
それっぽい話にでたらめを混ぜて読者を混乱させるんじゃねえっ!」
「あ、馬鹿っ、そんなこと言ったら──」
作者に暴言を吐く男を傍の女性が慌てて制止する。
だがしかしそれは意味を持たなかった。
彼女の言葉の終わるよりも速く彼の肉体にノイズがはしる。そして彼は塵一つどころか影の痕跡さえも残すことなく彼女目の前でこの世界から消失した。
「もうっ、だから止めたのに……」
嘆く彼女には悪いのだが、作者の意に反する言葉を口にした以上彼には消えてもらわねばならない。それがこの世界の秩序でありコンプライアンスというものなのだから。
そもそも、この作品は『冬のホラー企画4』という企画である以上冬らしい描写は必須なのだ。況して主催者様の決めたキーワードの中から『バヌアツ』を作者が選んだ以上、それが赤道付近の地であっても避けることは許されない。作者にも主催者様への忖度はあるのだ。
なお、ホラーでなくギャグコメディとなっているという批判は受け付けない。主催者様からは作者がホラーと言えばその作品はホラーであると御墨付きを貰っているのだ。だからこそ私は主催者様の意向に従っているのだ。
そう、だから私は悪くはない。
というわけで、精々この作品の中の者たちには不条理な作者とそれを許した主催者様をホラーと思ってもらうこととしよう。
主催者様、ごめんなさい。
私に真面目なホラーは無理なんです。
まあ、主催者様も似たようなことをしてますし、問題なしということでいいですよね。(笑)




