猫になりたい
私は猫になりたい。自由に、気ままに、誰にも縛られず生きる猫に。
朝、陽だまりの中で目を覚まし、のんびりと毛づくろいをする。人間の喧騒や、時計の針に急かされることなんて知らない。自分のペースで歩き、狭い隙間にそっと体を滑り込ませ、屋根の上に登って街を見下ろす。そこには、果てしない空と、風の匂いだけがある。
私は、人間として生きることに、疲れてしまったのだ。期待、責任、他人との比較――そんなものに縛られ、心が重くなる日々。誰かの言葉に傷つき、自分の居場所を見失う。こんな私でも、猫になれば、きっと違うと思う。気まぐれに振る舞っても、誰も咎めない。むしろその自由さが愛される。
飼い猫のようになりたい。温かい家で、優しい手で撫でられながら、静かに喉を鳴らす。ご飯の時間にはそっと催促し、飼い主の膝の上で丸くなる。あの無垢な瞳でじっと見つめれば、どんな心も溶けてしまうだろう。愛されるために難しい言葉はいらない。ただそこにいるだけで、誰かにとって特別な存在になれる。
猫なら、愛情を素直に表現できるのに。しっぽを振って、そっと寄り添って、静かに「ありがとう」を伝える。人間の私は、こんな簡単なことがどうしてこんなにも難しいのだろう。
猫になって、自由に、愛されて、生きていきたい。そんな夢を、今日も静かに抱きしめる。




