2話「自壊する英雄」
ミス/抜け多いです。ご迷惑おかけします。
茨稜剱...主人公。アメリカ米軍で優秀な成績を収めるが、精神的に問題があるとされアメリカ軍を強制的に休隊させられる。ちょっと法律を無視したお茶目な方法でフランス政府よりフランス特殊部隊GIGNに勧誘される。マッキントッシュの事をケーキの名前だと思っていた。
茨有紀...稜剱の母親。薄幸です、みたいなおさげの黒髪。ファンアート待ってます。
茨良司...稜剱の父親。優しそうな表情をしているが、実はバキバキの叩き上げのビジネスマン。日本酒が好き。新卒の時にスポーツバーで女装したら似合い過ぎていて外国人に12連続でナンパされた黒歴史あり。
トニー...稜剱の両親が殺され、一人で震えている稜剱を見つけて通報した。そのまま引き取って育てる事に。とても優しい。妻に先立たれており、寂しい日常が稜剱によって明るくなった。牧場にいる全ての牛を見分ける事が出来、呼ぶだけで近くに来させられる。贔屓のサッカーチームが負けたときのみ強い酒を飲む。勝っても飲む。
ビート軍曹...米軍名物、新兵の訓練教官。この令和の時代に言ってはいけない・やってはいけない・させてはいけないの全ての3ないをロケットエンジンみたいな熱量で行うヤバい人。その実同じくらいに愛に溢れ、諦めない者を絶対に見捨てない。妻を愛しており、イジると口では言えないシゴキが待っているらしい。
トレバー...お調子者。ところどころ抜けているが、基本的には優秀。
ミリ...トレバーの彼女。そばかすのかわいい女の子。とはいえファンアート募集してます。
店長...店長。
ネリル...日本人とフランスのハーフ。フランス政府のエージェントと名乗っているが、与えられる権利が余りにも大きい。謎が深い。基本的にクールで真面目だが、深刻に天然というか、常識が少し無い。食欲は旺盛。もちろんファンアート募集してます。
N:
稜剱:
良司/トレバー:
ビート軍曹/店長/トニー/隊員A:
有紀/ミリ/アメリカ軍文書:
ネリル/幼い稜剱:
不問1:♂3:♀2
有紀:....素敵な名前ね。
良司:そうさ。きっと優しい子に育つ。
....君に似てね。
有紀:...見て、この子の瞳。
少し紅くて、きらきらして...。
誰かさんそっくり。
良司:........ッ.....。
有紀:...!....っふふ...やあだ、貴方って本当に泣き虫なのね。
良司:一生...ッ!一生だ!
一生二人を守る...!守ってみせるッ....!
有紀:...っもう....。
病院では静かに、ね....。
びっくりしたわよね?...稜剱。
N:国内大企業の幹部に実力で昇り詰めた父。
名家に生まれ、日本舞踊にその身を捧げた母親。
そんな二人の元に、茨稜剱は生まれた。
良司:ほーら、これは何て読む?
...そうだ、じゃあこっちは?
有紀:二人とも~!
お昼ご飯が出来ましたよ~!
N:愛。優しさ。希望。
それらに溢れた、何不自由のない生活。
当たり前にあるそれを、両親は当たり前と教えなかった。
良司:どうしてそんな事を言ったんだ?
幼い稜剱:....だって....。
ぼくはチビだから...一緒にサッカーしてやらないって言われて...。
良司:...父さんはとても傷ついている。
喧嘩をしたからじゃない。言い返したからじゃない。
むしろ、理不尽に対抗する意志を持てるのは、大切な事だ。
だが稜剱。一つ理解しておいてほしい。
いいか?友達よりゲームを持っている事は、何も凄くない。
...凄くないんだ。
持っている、持っていない。
そんなちっぽけな事で友達を評価しようとした事に。
"君の家にはゲームが無いくせに"。
この言葉がどれほど稜剱を孤独にするか分かるだろう?
有紀:お父さんもお母さんも、一度だって貴方の持っているもので貴方を見なかった...そうでしょう?
貴方が誰に手を差し伸べたか。
貴方が何を生み出したか。
誰が貴方に手を差し伸べてくれたかを、覚えているか。
それこそが、貴方という人間の本当の価値なの。
優しさと暖かさはね、笑われることもある。
邪魔と感じる事もきっとに訪れる。
でも、それが無かったら、お父さんとお母さんは此処に居ないし、貴方も居ないの。
....生きるという事は、最後には優しさと温かさが無いと....、行き止まりになってしまうものなのよ。
分かるでしょう?
私達の子ですもの。
強くなりなさい。歩み寄れる人になりなさい。
────貴方からごめんなさいって、...言えるわね。
N:間違いを犯しても、前を向かせた。
声を荒げず、ただただ目を見て、言葉を紡いだ。
茨稜剱は、一身に彼らの愛を浴び、すくすくと育った。
有紀:.....どこも痛く、ないのね.....?
N:茨稜剱が15歳になった日。
その日は、茨一家はアメリカに居た。
良司:...ゴホッ、よかった...。
...有紀、稜剱には怪我が無いよ......
有紀:.....なあんだ....稜剱.....
よかった......
N:良司が取れた1週間ほどの休暇。
稜剱の誕生日と重なるからと、アメリカへ海外旅行に行った先。
「カネを出せ」と。
乗車したタクシーの運転手の女が運転中に...唐突に後ろを向き、銃を突きつけた。
幼い稜剱:『....ッ、イヤだ!!!!
そんな...イヤだイヤだ、父さん!母さん!
血が...、誰か!!!!!』
N:女の目は、普通ではなかった。
薬物か何かで汗をかき、瞳孔は大きく開いていた。
錯乱している様子だった。
良司は穏便に話し合おうと金を渡し、運転を促した。
幼い稜剱:だ...ッ、ハァ、誰か....!!
誰か...、誰か助けてください......!
N:女は“もっと持っている筈だ”と叫んだ。
稜剱を守ろうとその身を稜剱に覆いかぶさろうとしている有紀の服を掴み、無理やり引き起こす。
女は手のひらを有紀の太ももに押し当てると、刃物も当てていないのにその箇所が裂けた。
有紀:ッッく....!!!
幼い稜剱:うっ....、うわぁああああああああ────ッ!!!
N:何故───?
ナイフなんてないのに、どうして母親の太ももが痛ましく切れたのか?
どうして、赤黒い血がこんなに溢れているのか?
稜剱が感情を悲鳴として絞り出した瞬間。
女は後ろを向きながらタクシーを運転しているのだ───
車体は大きく道路脇の縁石に乗り上げた。
<幼い稜剱の視界は徐々にクリアになっていく。
頭を強く打ったからか、額から少し血を流しながら稜剱は目を開けた。>
良司:....大丈夫だ。大丈夫.....。父さんと母さんがついてる.....。
一緒に帰ろう......。もうすぐ警察も来る......。
N:大きく転倒したタクシーから運転手の女は近くの川まで身体を投げ出され、タクシーは脇道の林に煙を吹き、木に車体をぶつけて止まっていた。
稜剱と両親は辛うじてタクシー内に居た。
良司:.....稜剱....、有紀......、
幼い稜剱:父さん、母さんが目を開けないよ!父さん....!
N:自分の横で、太ももと胸に紅い染みを作った母親。
潰れたタクシーに体の半分を挟まれ。身動きが出来なくなっている父親。
良司:......大丈夫だ。......大丈夫.....。皆助かる.....。
星を見る約束は、明日に持ち越しだな.....。
幼い稜剱:イヤだ!イヤだ!!!父さん!!!なんでそんな...そんな!!
お別れみたいなこと!!!お別れみたいなこと言わないでよ!
良司:.....................愛してる..............。
N:翌日、稜剱のみが生存者として通りがかった近くの牧場の老人に発見され、保護された。
警察署には、こう報告されている。
トニー:こうやって、まるで寒くさせないためかね。
父親と母親がね、この子を抱きしめていたんだよ。
まるで、眠っているように....。
....グスッ....。.......失礼、涙もろくてね....
...ナンセンスだよ、国の境なんて......子を想う親の愛は、世界共通だというのに......。
N:それから稜剱は半年、一言も喋らなかった。
日本大使館からの連絡も全て返事をしなかった。
親戚からの届けも全て無視し、通りがかったトニーの養子となった。
──────そして、2年後。
トニー:リョウケン、今日もこんなにたくさん手紙が来とるがね。どうしたものか...。
稜剱:..あー、手紙...ね。ごめん、捨てといて。それよりさ、トニーおじさん。
今日牛の出産予定だろ?
4頭もいるンだし、早く行こうよ。
トニー:....リョウケン。ウチだってな、お前の学費くらい出してやれる。
補助金だってある。
英語も喋る事が出来てきているし...同い年の友人も必要なんじゃないか。
稜剱:.......トニーおじさん。
俺に必要なのは友人じゃないよ。
トニー:だったら何だ、何がお前に必要なんだ?
私は何を与えてやれる?
N:トニーがしまった、と口を噤む頃には。
少しだけ眉を下げ、困ったように振り返って笑った。
稜剱:......何言ってんだよ。
トニー:.....リョウケン....。
稜剱:満ち足りているさ。
N:さらに半年後。
育て親のトニー・ケインは肺炎で息を引き取った。
茨稜剱は日本に帰らず、そのまま米軍に入隊した。
ビート軍曹:ンよォォオオく来たなお嬢ちゃん共ォ!
私は米軍初期練兵教官のバイス・ビート軍曹だァァァア!
今日からお前達の鼓動は心臓ではなく私が刻ァァァァァアアむ!
吸うのも吐くのも私の命令無しでは許されんんんんン!!!!
ウォォオイ!!!そこの赤毛のドンくさそうなのォォオ!!!
トレバー:は...ッ、はい!!!
ビート軍曹:名を名乗れェ!!
トレバー:サー!トレバー・マシュー・ゾウスキーであります!
ビート軍曹:何ィ!?全く聞こえんぞォ!?!?
初めてのピアノ発表会で緊張しちゃったかなあお嬢ちゃァァァァァァァァアアアアん!?!?!?
トレバー:サー!!!!!!!!!!!!!!トレバー・マシュー・ゾウスキーであります、サー!!!!!!!!!!!!!!!
ビート軍曹:ンンンやかむゎしいわァァァァァァ!!!!!
貴様この私の鼓膜を破壊する気か!?!?!?!
まさかにっくき社会主義国のスパイでは無いだろうなァァァア!!!
CIAに代わって私が質問してやるゥゥウア!!
出身はどこか教えてもらえるかなトレバー君ンンンンンン!!?!?
トレバー:サー!
マイアミですサー!
ビート軍曹:そーーーかァァァァ!!もう二度と貴様はあの浮かれたビーチでナンパも彼氏探しも出来んという訳だアアア!!
母親に絵葉書を送ってもらうんだなァァアアアアア!!!!
だが安心しろォォオ!!!
お前の様なチーズマカロニ大好きのおねしょが治っていないドン臭いナヨナヨしたアニメとポルノとマインクラフト中毒のボクちゃんでもォォオ!
半年後には我が米軍の誇る優秀な戦士に仕立て上げてやるゥゥゥゥゥァ!
稜剱:『このトレバーという男は、最初から傑作だった。』
トレバー:あれッ...、ヤベえ、靴磨きクリームがもう無ぇ!!!
稜剱:『ある時は、装備調査の直前に泥の付いた隊靴を全く掃除していなかったり。』
トレバー:なあリョ~ケン。
枕交換してくれよ。なんか俺の枕クセぇんだよ。
稜剱:『ある時は、深夜に話しかけてきたり。たまたまベッドが隣だった俺は、コイツとすぐに打ち解けた。』
稜剱:フザけんな。絶対イヤだね。
つーかバレたら懲罰モンだろ。我慢しろ。
トレバー:アッ!違うぜ!
元からクサかったんだよ!
ビート軍曹の体臭にばあちゃんの作るまずいパスタみたいな匂いを足したようなさァア~!
ビート軍曹:ほォ..........?
<二段ベッドの下に寝ているトレバーをいつの間にか横から覗き込んでいるビート軍曹>
トレバー:...............え............
ビート軍曹:就寝時間を超えている筈だが....?
自殺願望を持った男の寝言が聞こえるなァァア......?
稜剱:ぐうぐう。ぐうう。もうたべられない。
トレバー:あぁぁぁああ~~っ!リョーケンテメェ!...ッ、ぐ、ぐうう...熟睡中....むにゃむにゃ....
ビート軍曹:きッッッッッッすヮマには前線に!!!!裸で!!!ン素手でェエエエエエ!!!
送られた方がマシだと思えるほどの訓練でないと熟睡できんらしいなァァァア......?
トレバー!!!聞こえているだろォォオ...?
眠っているなら夢の中でしっかりと聞けェエ!
本日4:30にグラウンドに集合しろ!
1秒でも遅れたらアメリカの法律が許す限りのシゴキを経験させてやるから覚悟しておけ...!
トレバー:ぐう...ぐ、ぐう....
サーイエッサぐう....
稜剱:『1年半後。俺達は中東...、アフガニスタン紛争区域に派遣された。』
トレバー:ハー....ハー....ゲッホ.....
稜剱:『俺達"紅の旅団"は優秀だった。
ネイビーシールズによって構成されたその部隊は、俺とトレバーの努力と優秀さを示す最高の勲章だった。』
稜剱:クソッタレ、なんなんだあの手榴弾はよ!
追尾ミサイルかよ!!!!!
隊員A:ハァッ、クソッ!全隊、2時の方向!黄色の建物3階に観測手らしき女!民間人じゃねェ事は確かだ!手榴弾の誘導装置を所持している可能性が高ェ!射殺許可!繰り返す、射殺許可だ!
稜剱:『通信が傍受され、おまけに妨害電波が広く流されていた。
俺達の動きは把握され、援護の要請までもが封じられ、周囲を囲まれていた。
何のことは無い。敵に出所不明なカネと技術が流れていたんだろう。
米国に一発かましたい勢力は山ほど居る...。
戦争じゃよくある事だ。』
トレバー:悪ィ...撃たれちまった.....
稜剱:『それはまだいい。問題だったのは敵の新兵器だった。
空中で生き物のように軌道を変え、障害物を避けて飛んでくる手榴弾。
建物の中に逃げ込んだ時には、俺とトレバー以外の仲間の姿は無かった。』
稜剱:喋ってんじゃねェトレバー!傷を押さえてろ!!!
トレバー:.....なァ.....
稜剱:『"紅の旅団"の定時連絡がない事により、爆撃が始まる予定だった。
....だが、電波妨害で無人爆撃機は場所が特定できないだろう。
状況は絶望的だった。』
稜剱:喋んじゃねえッつってんだろ!!
良いか、俺達は助かる!!!
明日にはお前の巨乳の彼女にアメリカで英雄扱いされてるさ!
愚痴ってたろ!!!テメエのお袋のまずいパイを食わされに行くんだろ!
トレバー:......ハッハ....ったく........言い辛ェなァ.....
イヤ...実はよ......
俺の父ちゃんと母ちゃんはよ....もう死んじまってんだ....
稜剱:......ッ...
トレバー:両方医者でよ、紛争区域で働く変わりモンでな....
..........空の棺だけが......返ってきたよ.......。
<轟音を立てて近くに砲弾が落ちる。>
稜剱:...ッ、トレバー、喋んじゃねえ!!!!
遺言のつもりかよ、許さねェぞ!!!!
俺と生きて帰ンだろ!!!!
トレバー:......お前に......余計な気を遣わせたくなかったんだ.....。
.........だが、今思うとよォ......殊更に家族の話なんかして....俺ッて......ズレてるよなァ....
稜剱:黙れ!!!!黙れ!!!!!
トレバー!!!俺を見ろ!!!!次目を開けたらベッドの上だ!!
病院食なんか無視してタコスを食って!!クラブにナンパしにいくんだろ!!!
トレバー:.........へっへっへ.......タコスか.......供え物は決まったな.................
稜剱:...、ッふ......、フザけんな!!!!フザけんなよ!フザけんなトレバー!!!!!
笑えねェんだよ!!!笑えねェ!!!!ちっとも面白くねェんだよバカ野郎!
トレバー:......でもよ..............巨乳の彼女は.......マジだぜ.................
ありゃ....最高のビッチだ..........兄弟..............。
稜剱:『トレバーのその言葉を聞いてからは....。
そこからは記憶が無い。
気が付いたら、ヘリコプターに乗せられていた。
トレバーが死んでから、二日経っていた。
応援部隊は血眼で区域を探してくれたらしい。
....俺は血で染まっていたが、致命傷は負っていなかった。
あんなに敵に囲まれていたのに、どうやって俺を回収したのかと聞くと。
────到着した時には、皆殺しにされたゲリラ兵と俺しかいなかったらしい。』
アメリカ軍文書:「"紅の旅団"状況報告及び生存者"茨稜剱"の処分について」。
───「現場の状況から、本人の驚異的な生存能力、戦闘技術の発揮は目を見張るものがある。」
「──────が、"対処"という言葉を大きく超えた凄惨さが現場検証から伺われた。
敵兵の死体の異常な損壊率に対し、本人の負傷の少なさ───
結果を見るに────、喜ぶべきことに───、そして恐るべきことに──、圧倒的優位に居たのは茨稜剱であり、敵兵は蹂躙された様相を呈していた。またこれに際し、本人の戦闘中の記憶が一切無い点についてだが────」
「兵士として超がつく程に優秀であり、また人間としては大きく外れてしまっていると結論付けざるを得ない。これには異論を待たぬものであり、特別措置として茨稜剱を無期限の休隊とする。」
N:...茨稜剱は強く、精密で、無慈悲で、完璧主義だった。
────...つまり、特殊部隊に適し過ぎていた。
両親の死。生まれ育った故郷を離れての生活。育ての親の死。...親友の死。
これらの負荷は、茨に問いかけた。
"もう誰も失わないためには"?
"何が自分の道を阻んでいるのか"?
"自分はどう在ればいいのか"─────?
意識している間も、していない間も何度も何度も───その問答は同じ一つの答えを導き出し続け、最早一つの自己暗示として機能した。
徹底的に計算し、予断を許さず現実的に。
強く、緻密に、冷酷に。強く、緻密に、冷酷に。強く、緻密に、冷酷に。強く、緻密に、冷酷に────────。
"殺す"という行動において、自己の心を守るために記憶という機能を排除し。何万回、何億回と孤独に使命を口ずさむ。
両親の言葉を抱き締め、返り血に濡れ続ける無比の戦士。
......上層部は、茨稜剱を自壊する英雄と呼んだ。
<場面転換 晴れたビーチの近くの住宅街 茨は黒いスーツを着てある家の前に居た>
稜剱:『"君は休隊だ"と言われた。....ざっくり言うと、俺は数十人の敵兵士を一人で殺したらしい。記憶が無いのは、一時的なショックだとか。直後には、4回の精神テスト。唐突に結ばされた守秘契約。なるほど、"壊れた部品は倉庫行き"...ってか。なんだか中二病なコードネームもついてたっぽいけど、なんて言われたか忘れた。.....どうでもいい。国の監視付きとはいえ、ニート生活を楽しむさ。』
N:ある家の前で立ち止まり、インターホンを鳴らす。すると、華奢な栗毛の女性が現れた。
稜剱:『....ま、早速楽しめねえ仕事をする訳だが。』
ミリ:....あの....。
稜剱:ミリ・フォイルさん....ですか?
ミリ:.....?はい、そうですが.....。
...ええと、どなた...
稜剱:部隊名は言えませんが...
米軍兵籍番号261228。茨稜剱と申します。
トレバー・マシュー・ゾウスキーの同僚です。
ミリ:.....それで.....、何のご用でしょうか....?
稜剱:トレバーの申請書類と"これ"に、貴女の名前と住所が。
<そう言いながらちゃりん、とトレバーの名前が刻まれたドッグタグを差し出す茨>
ミリ:.....嘘....................。
稜剱:.....残念です。
ミリ:.....、うそ、嘘ですよね......!?.....トレバーは大怪我をしているだけでしょう....!?
びょ、病院はどこですか!?トレバーは寂しがりなんです、私が行ってあげないと....!
稜剱:.......親友でした。
ミリ:...そんな................ッ..........。
稜剱:.......。
ミリ:........私なんか...、私なんかのことを守るって、お金も送ってくれてっ、私っ....
貯金してっ!帰ってきたら、結婚するって....!!!1ドルだって使わずに、とっておいたんですっ...!!!
稜剱:.....最期口にしたのは、貴女の事でした。
ミリ:...ッ、っ....、あっ、あああぁああぁぁあああ....!!!!
トレバあああああ.....!!!!!
稜剱:『トレバー。お前やっぱズレてるよ。』
ミリ:行かなくて良かった!行かなくて良かったの!
貴方が居るだけでよかったのに!
もっと強く止めれば!もっと強く!!止めていれば...!!!ああぁぁぁあぁぁあああ......!!!
稜剱:『...巨乳じゃねェし.....全然尻軽でもねェじゃねェか。』
<場面転換 2年後。>
稜剱:らっしゃっせー。
<美しい黒の長髪の女性が客の少ないハンバーガーショップに入ってくる。>
ネリル:.....ふむ。
稜剱:ご注文は?
今ならギガベーコンチーズの
ネリル:勲章は?
稜剱:....は?
ネリル:前線で武装兵を23人も殺せば、戦功勲章が授けられる筈です。携帯されていますか?
稜剱:『....珍しい事じゃない。どこからだって噂は漏れるもんさ。どっかの記者か何かだろう。今までだって何人か来た。...TMZがしつこかったぐらいか。...ま、知らんふりしてりゃいつの間にか帰っていく。綺麗な姉ちゃんを連れてきたって無駄だってのにな。』
稜剱:何の事ですか?クレームなら店長にお願いしますよ。
ネリル:バッジを貰うどころか、何故か異例の速度で退役させられた元特殊部隊員がここで働いていると聞きまして。
稜剱:...。ランボーって映画見た事ある?そんな強ェ兵士はあれぐらいムキムキでデッカいナイフを持ってて赤いハチマキしてんの。こんなダセー制服なんか着てねえの。
ウチはハンバーガーショップで、俺はしがないアルバイト。
今ならギガベーコンチーズのセットを頼むとSサイズのシェイクがタダ。
で、ご注文は?
ネリル:Mais quel abruti。
稜剱:は?なんて?何語?悪いけどこれ以上ワケわかんないこと言ってっと店長呼びますよ。呼んじゃお。ムカつくから。
店長ォォオ!クルクルパーがきてまああす!
店長:どうしたあ~?まったく、ホームレスなら無料クーポンを渡してやってくれ....ッ、うっ、うおおお!?!?
N:店長と呼ばれた恰幅の良い男性が不機嫌そうに店から出てくる。すると直後、信じられないものを見たような表情に変わる。
<片手で警察手帳の様なフランス政府のエンブレムを見せながら銃を構えるネリル。>
ネリル:私はフランス政府より特任を受けて行動しています。
アメリカ政府も合意し、現在の私の行為に対しては殺害を除き法律が機能する事は有りません。
通報しても警察は来ませんし、スマートフォン等の録画機器は現在微弱な妨害電波で停止させています。
私と茨稜剱...、貴方以外の人間はいつも通り日常を過ごせばいい。
....以降の警告は、ありませんので。悪しからず。
店長:ひっ、ひいい!撃たないで!
稜剱:悪しからずじゃねェェエよ!!!
どこで拳銃抜いてんだバカ野郎ォ!
稜剱:『ッや.....やべえやべえやべえやべえ......!!!!!何だこのブチキレてる三流記者...!!フランス政府がどうのこうの言ってんのは聞こえたが...!!!監視は何してる!?!?オレ襲われてますよ!?今襲われてんすけど!?!?!?!?』
<しっかり両手を上にあげている茨と店長>
ネリル:ニューヨークはいいですね。
防弾ガラスが無くてやりやすい。
稜剱:マイペースかコラァ!!!
俺の平穏をブッ壊しやがって!!!!
店長ォ、俺はこんな女知りませんから!
店長:わ、分かってるとも!
私もトゥウェンティーフォーやマトリックスを見て育ったんだ!
バイトの安全はこの私が守るッ!
ムゥン!そこのキミッ!その距離から銃は当たるのかね!?
何があったかは知らないが...このペイントボールはぶつけられると臭いしインクがつくよ!
ネリル:そうですか。私のこれは高電圧テーザー銃です。
規定値の電圧を大きく超えている為、被弾すると激痛の中に失禁をしながら気絶します。
店長:茨くん、君はクビだ。
稜剱:クソがァ!
ネリル:賢明なご判断です。
稜剱:はぁ....チッ。
<エプロンをほどこうと後ろに手を回すと、突如茨の全身に電流が走る。>
ネリル:.....あっ。
<ネリルが銃を発砲し、茨の体は銃から射出された電流を発生させるビーズにより感電で痙攣している。>
稜剱:んびびびびびびびびびびびびびびびびびび!!!!!!!
ネリル:大変失礼しました。
稜剱:なななななななななななにこれれっれれれれれれれr
ネリル:驚きました。常人なら即失神する筈ですが。
稜剱:うごごごごごごぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎ
ネリル:武器を取り出すかと思ったので。つい。
早めに失神したほうが楽ですので、力を抜いたほうがよろしいかと。
稜剱:ぶ、ぶぶぶぶ、ブッ殺..............ガク
ネリル:おお。鍛えているんですね。失禁しないとは...。
.....むっ
<隣に立っていた店長をグリンと首を回して見るネリル>
店長:ヒッ!
ネリル:ギガベーコンチーズのセットを。11ドルでしたね。
店長:い、今なら...
ネリル:ではレモンシェイクも。
店長:えーと....サイズは.....
ネリル:Lで。
店長:.....追加で4ドルに......なりま....
ネリル:........Lで。
店長:......えっ、えっとお....初回サービスで、無料で......ははは.....
ネリル:どうも。
<11ドルを支払うと、気絶した茨を片手で引きずり、ガサガサと購入したセットが入った袋をもって退店するネリル。それを後ろから呆然と見送るしかない店長>
店長:.........仕事変えよう.......。




