1話 「彼らは」
『』 は心の中の声です!
【役表/兼ね無し】不問1:♂10:♀5 地獄
N - 性別不問:
ジェイデン - ♂:
ヘイズ - ♂:
ウィリアム - ♂:
ダニエル - ♂:
ブライセン - ♂:
茨 - ♂:
バスティアン - ♂:
フラッガ - ♂:
ジョット - ♂:
ボビー - ♂:
記録 - ♀:
クロエ - ♀:
イザベル - ♀:
メイ - ♀:
ティモシー - ♀:
【役表/兼ね有】 不問1:♂6:♀4
N(性別不問):
♂ジェイデン/ボビー:
♂ヘイズ/大統領:
♂ウィリアム/バスティアン:
♂ダニエル/フラッガ:
♂ジョット:
♂茨:
♀クロエ/記録:
♀イザベル:
♀メイ:
♀ティモシー:
【登場人物紹介】
N
→ナレーターの事。
ジェイデン
→Jayden・Alexander・Brooks。
CIA長官。苦労人。イケオジになりかけ。
ヘイズ
→Mason・James・Hayes。
CIAのチーフ。CIA長官のちょっと下くらいの位置。苦労人。
眼鏡が似合っているとひそかに人気。女性職員の間ではヘイ×デンらしい。
ウィリアム
→William・Edward・Clark
副大統領。うざい。孫娘の為にサンタクロースのコスプレをした映像が流出した。
実は有能。
ダニエル
→Daniel・Thomas・Denith
国防長官。うざい。酸っぱい物が好きだが、舌がすぐ痛くなるのが悩み。
実は有能。
ブライセン
→Brythen・Charles・Taylor
怒っていると勘違いされがち。
有能。
クロエ
→Rousseau・Chloé
モーテルへの強盗襲撃事件の首謀者のうちの一人。
炎を生み出し、操る能力を持っている。
孤児施設でイザベルと共に育った。
褐色の肌。高身長。バインバイン。FA待ってます。
イザベル
Morel・Isabelle
モーテルへの強盗襲撃事件の首謀者のうちの一人。
念力で物体をを動かしたり、破壊できる。
白い肌。普通の男性よりちょっと高い位の身長。ややバイン。
クロエと孤児施設で育った。
FA待ってます。
茨
→茨稜剱24歳。アメリカ米軍で経験を積み、テロ組織への作戦により多く参加すべくフランス軍に入隊、見事対テロ特化部隊であるGIGNに選抜される。
犯罪を起こす超人をある過去によって憎み、執念を以て行動する。
意外とふざけたりもする。vtuber富琳あむが好き。
然し、任務中はGIGNの同期の中で最も効率的かつ迅速に目標の殺害を行う。
甘いものとしょっぱいものを交互に食べるのが好き。
が、あまじょっぱいのはあまり得意ではない。
バスティアン
→Bastien・Deville
陽気。ラッパーを目指している。ラップバトルでコテンパンに負けたので、音源派でやっていきますみたいな顔をしている。26歳。
筋骨隆々で体躯も大きいため、盾や突入時の近接攻撃を担当することが多い。
スタミナもかなりのもので、2人を背負って銃撃戦の中を走り抜けた伝説を持つ。
"実は優しい"キャラでいこうと思っているが、別に普通に優しい。
フラッガ
→Flaegga・Rossi
比較的常識人。射撃の技術が高く、冷静。27歳。
バスティアンのラップを「何だこれは」と言わずに最後まで聞いた初めての人間。
忍耐強く、強靭な精神力を持つ。
パイナップルを全く力んだ表情をせずに両手で割れる程の握力を持つ。
実は次男。
ジョット
→Jott・Wolsheau
おとなしい。24歳。
元ダークウェブの違法薬物取引掲示板管理人兼ハッカー。
本人は「ハッカーではなくクラッキングをしているんだからクラッカーだ」と毎回反論をしてくる。
単なるハッキングだけでなく実は肉体的にも試験では優秀な成績を出しており、運動が苦手なわけではないとの事。
また機械工学などにも精通しており、ドローンやガジェットなども担当している。
銃の扱いは下手。
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N:この世界は、かくも不可思議である。
“無”から“有”が生まれ45億年。
「生き残るのは強い者でも」
「賢い者でも無い」。
「変化出来る者なのだ」。
地質・生物学及び自然科学者───
チャールズ・L・ダーウィン。
<場面転換 CIA長官室>
ジェイデン:.....改竄の可能性は。
ヘイズ:...有りません。
NSA精鋭のエージェントが画素の一粒に至るまで全て洗いました。ですが...映像はシロです。
.....これは.....、長官。
ジェイデン:..............。
ヘイズチーフ。
ヘイズ:は。
ジェイデン:...メアリーだったか?
ヘイズ:....あの時は、お世話になりました。
ジェイデン:結婚式以来か。...もう何年になる?
ヘイズ:...は、2年と半年です。
ジェイデン:.....夫婦の絆が試される時期だな。....暫くは帰れない、と。
電話で伝えてやれ。
ヘイズ:........了解しました、長官。
<軽く一礼をして部屋から出ていくヘイズ>
ジェイデン:『.............成程。フランスの介入も頷ける.......。フランスはそういう国だ。....アメリカと違って....現場主義だからな。法整備も情報共有も丸投げという訳だ。........クソッッッ!!!!
..................いや、よそう。今は目の前の問題に冷静に対応するだけだ。
───Fuck that shit。
<場面転換 ペンタゴン 戦略会議室内>
ウィリアム:....アトランタの民家で発生した火災。
居住者の老夫婦の下に訪れた大学生の孫。
夏休み中、里帰りの彼はドラッグでハイになり...午前3時42分、パブから帰宅した直後放火。
生存者はゼロ。
ダニエル:消防士のみならず..SWATまで呼んだそうじゃないか?
なんでも...、事件性を勘案してとのことだそうだが?
全く....この恥ずべき失態からどうすれば臨時保障会議に繋がるのだ?
ウィリアム:CIA長官たる君の申請だからわざわざ私達は時間を作っているのだよ!
何かよほどの事案なのだろうね!
ダニエル:聞いているのかね、ジェイデン・アレクサンダー・ブルックス長官殿!
ジェイデン:....ッ...。
ジェイデン:『想像はしていたがこの体たらく...。
アメリカの中枢に寄生する老人共...!
この無駄な時間...!国家を揺るがす報告にさえついて回るとは...!!』
ウィリアム:全く、諜報は出来てもプレゼンは出来んという訳だ。
CIAは年俸制だったな!?ダラダラと時間をかけても高級車は買えんぞ、ジェイデン君!
ジェイデン:....ッ.........。
失礼致しました。報告を続けさせていただきます。
結論から申し上げますと....先ほど副大統領と国防長官が述べられた事件概要はすべて偽情報です。
ダニエル:...ッな...
ウィリアム:...偽情報だって...!?
ブライセン:.......ほう。
ダニエル:たかだかCIAが偽の情報を独断で流していただと!?ふざけるなッ!!!
単なる偽証罪では済まんのだぞ!
大統領、もう十分でしょう。
何があったのかわかりませんが、彼の行いはアメリカ国防上重大な規定違反である事に違いはありません!
ウィリアム:ジェイデン君!君の身柄を拘束し、現時刻をもって更迭を言い渡す!
この馬鹿げた会議についての言い訳も軍法会議で....いや、特別指定留置室でしっかりと述べてもらうぞ!
ジェイデン:........大統領。
ダニエル:...ッ...。
ジェイデン:今回のCIA、ひいては私の独断...、それは今から共有する情報を確認してから処分を決定していただきたい。
ダニエル:何を勝手な!権力の私物化も甚だしいぞジェイデン君!
ウィリアム:大統領、耳を貸すべきでは...!
彼は今や連邦法と国家安全保障法を違反しているのですよ!
ブライセン:ウィリアム副大統領。ダニエル国防長官。
ダニエル:.....ッ....。
ブライセン:彼の経歴に偽りは無い。
文句なくCIAの長官なのだ。
...彼の話に耳を傾けるべき....と私は考えている。
規約に拘るのはその後だ。
ウィリアム:然し....!
ブライセン:───だが、ジェイデン君。
君を含め私達は冷酷だ。
踏み出している事は分かっているな?
...あまりに重い一歩だぞ。
ジェイデン:......ッ.....、......。
承知しております、大統領。
それでは..、一家放火事件での一部始終を捉えた監視カメラの映像を流します。
....書記官!部屋の鍵を閉め、今からの一切を記録するな。
<ジェイデンが背後の巨大なプロジェクターに映像をリモコンで再生する。>
<ある民家の中を写しているカメラの映像。
画質は悪いが、辛うじて見て取れる。室内用の防犯カメラの映像だ。
その映像の中では、老いた男性と大学生程の若い男性が火だるまになって転げまわっている。>
ダニエル:....殺人ビデオか?趣味の悪い映像だ..遺族には追悼の意を表するがね、悪いがこんな映像では何の説得力も...
ジェイデン:.....ここからです。ご覧下さい。
<ジェイデンがリモコンを操作すると数秒早送りになったのちにある場面が再生される。
すると、映像の中に老いた女性が写される。
彼女は呆然と立ち尽くしている。>
ウィリアム:....この女性が放火魔という訳か?
ダニエル:いや、殺意を持った放火であるが、目の前の惨状を自分が引き起こしたというストレスに耐えられずに茫然自失──...よくあるケースですな。何にせよ、単なる凶悪犯罪の証拠映像かと。
ブライセン:....ジェイデン君、ズームを。
<ズームされる映像。すると、女性の周囲を円形に綺麗に炎がよけているのが確認できる。
また、表情を見ると眼球は明らかにオレンジ色に発光しており、映像が進むと彼女の手からは炎が時折噴出している。>
ダニエル:....何だ......これは........
ジェイデン:以上の動画を踏まえ、大統領を初めこの会議室におられる皆様に対し、正しい報告を共有いたします。
火災事件は突発的に老夫婦とその孫の居た家で起きました。
突如燃え上がった炎に対し通報があり、駆け付けた消火隊が家宅内に入った所、
“全身に炎を纏った老婆から火柱が上がっている”との報告を受け、SWATに行動要請。
SWATが到着した所、錯乱した老婆が炎を纏いながら外に向かって出てきたため、やむなく射殺。
ダニエル:.....つまり....、それは.....、人間から発火.....という.....
ジェイデン:直轄のNSA精鋭のエージェントで画像の偽装、動画への人為的、非人為的に関わらずデータへの介入、編集痕跡、錯覚の可能性を全て洗い出しましたが、結果は無編集。
この映像は“起きたまま”を記録しております。
ウィリアム:何という事だ....神よ.....
ブライセン:ウィリアム君。
問題は神が何をしたか...だ。
サイコロを振ったか...。
それとも....サイコロを作り替えたか?
──君の率直な意見を聞かせてくれるかな、ジェイデン君。
ジェイデン:...ッ、この国に銃が発明されて以来の危機です、大統領!
...いえ、それ以上と言っていいでしょう!
直ちに、...ッ、そして極秘に!米国を挙げて総力で対策を取るべきです!
ダニエル:...フン。
ジェイデン:国防長官、仰りたい事は分かりますがこれはれっきとした“事実”の“記録”であり───!
ダニエル:ほう?ならば私がこう言いたいことも分かるかね?
───...“検死解剖は?”
ジェイデン:....!!!
ダニエル国防長官.....。
ダニエル:その反応を見るに、発火を起こした女性の検死解剖に異常は見当たらなかったという事だな。
...つまり、予想されるのは.....、通常の人間と組成物、また組成比率において全く相違の無い人間が武力を持つ...、検知不可能の武力の時代の到来。
空港の金属探知機の様にはいかない...。
....混乱と暴力のハードルだけが下がっていく。
発火能力だけと考えるべきではない。放電、凍結、その他現象を再現可能な能力、または何かしらの生成、分解....、幅広く対応できるように尽力すべきだ。どうだね、ジェイデン君?
ジェイデン:仰る通りです、直ちに──
ウィリアム:大統領、直ちに情報統制をおこなうべきです。報道規制を敷いた上での研究と対策───、専門家を緊急招集し迅速に制定すべきです。各通信基地及びハブへの非常令を準備させます。
ジェイデン:.......!
ウィリアム:ジェイデン君。
新しい技術は混乱を常に想定しなければならない。
有害なものにしろ有益なものにしろ....だ。
だが制度を作るとは...究極的には有害を許さない事ではない。
有害に言及している事。
世界にとっての事象はまず我々が認識しているという前提の上でなければならない。
ジェイデン:『.....!
これが...!アメリカ合衆国副大統領と国防長官....!』
ダニエル:.......有害をここまで迅速に伝えた者はかつていなかった。認めよう。
ジェイデン君。
君に2日の休暇を与える。
ブライセン:.....極秘の緊急招集をかけろ。
我等が基準たる為に。
ウィリアム:...承知しました。
N:発火───発電───物質操作───瞬間移動───念力───...。
人類は武器の次に“超能力”を授かった。
全くのランダムな人種、全くのランダムの地域、全くのランダムの年齢層───
能力を授かるものに規則性は無く、それはまるで疫病の如く広がっていった。
ただ一つ。能力の発現に対して、例外のない法則が発見されている。
それは、性別。
女性のみに発現している、というデータを、米国は発表した───
<場面転換 防弾加工をされたトラック内。
防弾アーマーを着込んだ特殊部隊の兵士に見える男が4人。1人はトラック内の両壁に備え付けられた簡易的なベンチに腰かけ、うつむいて黙っている。
向かい側のベンチに座っている3人組はぺちゃくちゃと喋っている。>
バスティアン:でよォ、したらあのパブで俺のミックステープを流してくれるって話がついてよォ!
ジョット:すっげェ...。オレも、ラップ、やりてェ。
フラッガ:バカ、おめえのトロさじゃムリだよ、ジェイ。
ジョット:そんなこと無え。...えむね、えもね...エミネムだって聞くしな。
フラッガ:嚙んでんじゃねェか。
バスティアン:いーや、俺は気に入ってるぜ!今度客演で呼んでやるよ!
ジョット:...俺の母ちゃんもよォ、聞いてくれっかな...
バスティアン:テメーん家の母ちゃんはカントリーしか聞かねえだろ?
ラップなんか聞かせたら鼓膜が爆発しちまうぜ。
茨:ENOUGH,Dickheads?
フラッガ:....おー怖え...悪かったよ、ケン。
バスティアン:んーだよ、やけに機嫌悪くねえか?
ジョット、お前またケンの装備素手で触ったろ?
ジョット:触って....ない。
あんなに怒られたのは...母ちゃんの育てたサボテンを食っちまった時以来....だから。
フラッガ:じゃあなんで...
茨:この緊急出動のせいで俺の推しの配信が見れねェからだよクソッタレ!
バスティアン:.....オシ?
フラッガ:コッチ見んな、知らねぇよ。
ジョット:..。おれ、いっかい見たぞ。
なんか、高い声でキーキー喋る...
茨:"高い声でキーキー"?
フラッガ:瞳孔開いてんぞ、ケン。
茨:フザけんな。
まさかお前が言ってんのは擬人化スイーツアイドルVライバー事務所所属 富琳あむ の事か?
違うよな?
もしそうなら今からこのトラックの中で死人が一人増えることになる。
しかも有史以来最も辛く残酷な拷問によってな。
いやマジで。俺が持ってるコレ見える?特殊仕様のMP7なんだけど。お前の頭がトマトになっちゃうよ?
ジョット:....いや....違った....と思う....別人だ、うん.....
茨:あの声ッッッがイイんだろうが。
あの声が....はぁ....ぷりんたァァァアん!!!
ボク達甘党の為にいっつも配信ありがとねえぇえええええ!
今日は新作ゲーム配信だったよねぇぇぇええええ!
ボク絶対アーカイブ見るからねぇえええええ!
バスティアン:お...おい、これ大丈夫な奴か..?
フラッガ:...お前がクラブで騙されて変なモン吸わされた時もこんな感じだったぜ。
バスティアン:あん時はションベン漏らしてただけッつったろ!
俺はこんな騒いでねェ!
<ジョットの腕の情報端末が音を鳴らして光る。>
ジョット:!
...作戦概要だ。
フラッガ:そろそろ目的地か。
バスティアン:建築物侵入テストも爆破予定会議も無ェ。
...“超人”案件だろ?
茨:分かッてた事だ。
俺達が動くってのに交渉人の情報は降りて来ねェ。
交渉不要の強制スピード解決なンざ超人対策法でも無ェと認可される訳が無えしな。
バスティアン:米国さまさまだな。見ろよこのシールド。
噂じゃイーロンがロケットのバーニア部分に使おうとしてたのをブン取って作ったとか。
フラッガ:米国が超人周りを完璧にケアしてもう10年か。
俺達も変化に適応すべき時代かね。
ジョット:....雑談はその辺にしてくれ。説明する。
───あーー....。
客の携帯から緊急通報があった。
応答前に切れたので、通話を秘匿回線で強制接続にしたところ──
轟音と悲鳴。
アドレスから建造物内のカメラを確認したところ....
超人案件だ。
4階建てのモーテル、最上階が現場....。
対応人数は5人....、うち救出対象は3名。
バスティアン:おいおい...超人が二人?
厄介な組み合わせじゃ無ェといいが。
ジョット:.....救出対象の3人はメイ・スロッド、ボビー・スロッド、ティモシー・スロッド。
旅行中に運悪く強盗に入った超人に人質にされている。
......家族旅行中だそうだ。
バスティアン:『あーーー...。』
フラッガ:『家族.....、ね。こりゃあ...』
茨:.....モーテルのフロント...、それに他の客は?
ジョット:.....。皆殺しにされてる。通報は近隣住民からの騒音....
"叫び声"との内容だそうだ。
バスティアン:....ま、手練れじゃねェな。
外に声が漏れちまうようなモタモタした殺しをする訳が無ェ。超人ならなおさらだ。
茨:動機も素性もどうでもいい。
現地の情報は?
ジョット:...モーテルの一室...、ほぼワンルーム。窓付近に超人一人、ベッドに腰かけてるのが一人。
防犯カメラからの犯行時の映像によると...念力と炎の生成と操作と考えられる。。
それぞれ発動範囲は恐らく2~5mほど...。
フラッガ:。....ま、神様気取りで犯罪するにゃ十分な能力だ。
ジョット:.....あーー...
バスティアン:何かマズそうな顔だな、ジョット。
ジョット:赤外線カメラでドローンを見てるンだが...。
フラッガ:...何だ、窓の四隅に微弱な熱反応...?
炎...か?
ジョット:...有機的に少しブレてる。
バスティアン:おいおい、俺の事バカだと思ッてんのかよ。
つまりこれは....えー....つまり....
フラッガ:道具じゃ無ェって事だよバカ。
有機的に揺らめく熱反応って事は...超バカデカいネズミか何かが窓の四隅にお行儀よくジーーッと居るか...
ジョット:....弱い炎。
炎が窓に沿うように"設置"されてる...
バスティアン:ああーーーーッ!
つまり、炎の超人の仕業って事か!
フラッガ:...十中八九、そうだろうな。
元はカネが無ぇ民間軍事会社がよくやってた仕掛けだ。
超人に簡易的な爆弾や仕掛けを起動させる...ここ10年で犯罪者に人気の技術だよ。
大方、何かが窓から飛び込んで来たら...撒いておいた油か何かに引火...、爆発だ、
センサーも無線もいらねえ。超人に度胸さえ座ってりゃコスパ最強の罠ってワケ。
バスティアン:...でもよ、俺達の装備なら突っ込んでも無傷じゃねえか?
超人とはいえ民間の....、つーか個人の用意できる罠ぐれえじゃ俺達は止まるワケもねえし。
ジョット:......いや。
茨:そうだ。人質が死ぬ。
茨:俺達が突っ込んで何かが作動した場合...
生身の人質は高温にも爆風にも耐えられない。
念力の超人もいる。
窓から侵入しても後手の俺達は不利だ。
バスティアン:.....ッんじゃ、どーすンだよォケン!!!
ノックして招き入れてもらうか!?
クッキーと紅茶でも持ってよォ!
フラッガ:...確かに、バストの言う事も一理あるぜ。
どうすんだ?ケン。
茨:....一つ、アイディアがある。
ジョット:『す....』
バスティアン:『す....』
フラッガ:『すごく嫌な予感....』
<場面転換 モーテルの一室。モーテルの中は死体がごろごろと倒れている惨状。
その一室。人質の家族は怯えている。
褐色の肌に緩くパーマのかかった赤髪のガタイの良い女性と短く髪を切りそろえた金色の紙の細身の女性の2人が退屈そうに椅子に腰かけて会話をしている。>
クロエ:バレてねェよ、イズ。
最初だけちっとミスしたけどよ、残りの奴らはみーんな叫んだり通報する前に殺っちまってる。こんな田舎町のサツが嗅ぎつけるもんかよ。
イザベル:あんたは爪が甘いのよ。
クロエ:あのなァ。
モーテルでアタシ達の顔を見た奴らは皆殺しで?
窓と扉の外にはガソリンまいて?
アタシの炎でいつでも爆破を準備して?
極めつけの人質共も取った。
近くの港から船が出港するまであと4時間。
十分すぎる準備だろ!
イザベル:船でメキシコまで足を残さず高飛び。
超人が今一番荒稼ぎできる国...
クロエ:ハハハハハ!
米国も捨て難いがなァ!
イザベル:米国は報酬は巨額いが危険も多い...。
超人への対策が尋常じゃない。ま、当然よね。
天下のアメリカ様が後れを取る訳にはいかないもの。
...その点、メキシコは超人の犯罪者の羽振りが良い...。
クスリ、殺し、あらゆる法の外の売買...自然、超人のもたらす暴力と相性が良く、徒党を組まずとも暴力をカネに変えやすい。
結果メキシコへのあらゆる通路は検閲が厳しくなる...。
分かる?私達に準備し過ぎは無いの。
クロエ:へいへい。長々とどーも。アンタの脳ミソが無きゃどうせアタシは野垂れ死んでましたよーっと。
ティモシー:ふうっ....ううっ...ひっく...
メイ:ダメ...ッ、声を出しちゃダメよ、ティモシー...!
良い子だから...、お父さんとお母さんがついてるから...!
クロエ:そーそー、必死にそのカワイコちゃんを宥めてくれよォ、奥さ~ん。
アタシだって子供を殺すのは好きじゃないンだ。
ボビー:....ッ!
クロエ:おんやぁ~?何だその目?
遅めの反抗期?
"他のガキは殺してただろうが"ッて?
正義の味方のパパさんよォ~。
....ムカツクなァ。
残った左足もターキーレッグにしてやろうか?
<黒く痛々しく焦げたボビーの右足をクロエが踏みつける>
ボビー:ぐあああぁあぁああッ....!!!
イザベル:辞めて。
男のそういう豚みたいな呻き声、ホントカンに障るから...。
クロエ:なァ~んだよ、アタシはこういう情けない声、好きだけどなぁ...?
そ~れ~~に~~~♪
イズ、アンタもベッドの上じゃ大概な声だと思うけど...?
イザベル:...バカな事....
クロエ:アタシ達はボニーとクライド♡
ま、どっちも女だが...、それも洒落ててイイじゃんか...♡
なァ、ちょっとだけさァ...誰も来ねェよ...、
イザベル:...10分で終わらせて。
N:クロエの太い腕がイザベルを抱き寄せる。
人質を気にしないかの様に───いや、むしろ見せつけるかの様な蠱惑的なその行為。
ティモシー:『パパ───...!ママ────..。!
お願い────誰か....!!!!』
N:彼女たちの唇が触れるその刹那──────
バスティアン:要救出対象三名確認!
フラッガ:続き超人二名確認!!
N:天井が爆音とともに崩れ落ち、怒声が響く。
クロエ:ッッッな...
イザベル:クソッ....、何だ...!?!?
フラッガ:警告する!
超人2名!3秒以内に地面に伏せろ!
応じない場合超人対策法を適用し、
実射撃を持って状況を鎮圧する!
クロエ:『警察...!?...ッいや、警察の訳が無え!!
警告も無しに、いきなり天井を吹ッ飛ばして突っ込んでくるなンて...!!!』
クロエ:ごほっ、ごっほ...!!
クソ、何も見えねえ..!
イズ!無事か!
イザベル:この...ッ、邪魔ァ!
N:念力を発生させ、土埃を払う。
明瞭になったイザベルの視界に写るのは、4人の武装した男。
イザベル:───...ッ、どこから......ッ!
クロエ、壁は張る!
"燃やし"なさい!!!
N:───隣にいる筈の彼女からは返事は無く。
イザベル:『ッチイイ....!!何をボサっとしてンのよ!』
イザベル:クロエ、何をボーッと...
N:視界に映るのは、胸と額に穴が開き──────
光の失った瞳で天井を見上げるクロエの姿。
イザベル:『撃たれた....ッ!!速.......!!!!!』
バスティアン:1名、制圧!
イザベル:....ッ、クッ.......ソォオ....!!!!
N:轟音。衝撃。怒声。───クロエの死。
自分を取り巻く全てが"詰み"へと押し流されていく感覚。
そんな感覚を振り払うように叫ぶ。
イザベル:クソッタレ、無能力者が!
ッ、じゅ、銃を捨てなさい!
少しでも動けば人質を....ッ、ガキの喉をへし折って殺す!!
ティモシー:くあっ.....、息が....ッ、苦しいっ...!!
メイ:お願い!!この子だけは許して!
この子だけは!
N:自分の理屈のみで世界を構成してくれていた、自分の能力。
自分の暴力を代弁するかのように掌を背後の家族に向ける。
イザベル:『そうよ...!!!
無能力者!
お前たちは超人に怯え!
搾取され!
淘汰されるのが正しい!
私は進化した!超越したのよ!!
進化した種は常に劣った種を滅ぼしてきた...ッ!
人類の歴史が証明している絶対の摂理なのよ!』
イザベル:銃をこちら側へ投げ捨てろ!!!
早く!!!!!
N:自分以外の命の使い道は、利用か排除のみ。
内に秘める暴力性と悪の冷酷さを備えた彼女が導き出す、ドス黒い解答。
──────が。
この空間には、"漆黒"がもう一つ。
茨:ジェイ。
N:奇妙な表現だが...モレ・イザベルは、"不運"と言える。
───三択を外してしまった。
ジョット:───了解。
N:ジョットはそう呟き、"左手首の小さな腕時計端末から指を離した"。
その瞬間、窓ガラスを突き破って飛び込んでくる小さな物体。
イザベル:!?何っ.....!?
小型ドローン....!?爆撃....!?
いや、ここで爆破すれば人質も無事では済まない!なら....
N:唐突な予測不能な介入。
引き起こされた致命的な隙。
ジョット:良い反応だ。
───その通り。爆発はしない。
囮だからな。
N:イザベルが致命的と自覚する頃には───
彼女の世界は、圧縮されていた。
1秒が10秒、100秒、1000秒───
指数関数的に引き延ばされていくような───
命と引き換えに与えられるような───
極限状態の人間にのみ与えられる時間が満ちた空間。
全ての雑音が消えた世界。
────そんな世界で、彼女は確かに聞いた。
茨:助かってもいるんだ。
イザベル:はあッ....、はぁッ.......!!!!!!
茨:....お前が悪で居てくれることに、助けられている。
イザベル:....くそ....、くそ......!くそッッッ.....!!!
茨:お前が惨めに死ぬ事に、どんな祈りも必要ない事が。
本当に楽なんだ。
イザベル:────、くっそォォオオぁぁぁぁあぁあぁあああああああああああああああ!!!
N:吠えながら掌を茨ら4人に向ける。
心に迫る冷たい"死"の文字を振り切る為に。
イザベル:『私が!私が!!!私が!!!!!!!私が負ける筈がないんだ!』
N:────...バスティアン・ドゥヴィル。92名。
イザベル:『何年かけたと思ってる!何人殺したと思ってる!』
N:フラッガ・ロッシ。113名。
イザベル:『私はこの能力で!この暴力で!!!
全てを支配する!支配できる!』
N:ジョット・ウォルシュ。79名。
イザベル:『こんな所で...!こんな所で!こんな所で!こんな所で!!!!!!!』
N:そして...茨稜剱。
───293名。
"作戦中に殺害した超人"の人数である。
<茨のライフルの銃口から火花が散る>
イザベル:『....................クロエ..............』
茨:....二秒経過。
N:イザベルの額を、弾丸が貫通していた。
ジョット:........熱反応無し。
フラッガ:....クリアだ。
N:フランス軍非公開軍事演習での政府防衛省の査察記録。その中にとある一節がある───────。
記録:“無慈悲かつ緻密。特殊部隊の鉄則だ。だからこそ...今回の演習を査察した私の胸中に渦巻く“頼もしい”が、“恐ろしい”に変容していく事──必然であると捉えたい。”
ジョット:...人質の三人、男性は右足に三度の火傷。
女性と児童には擦過による多少の流血以外は外傷はなさそうだ。
バスティアン:....そりゃイイね。
......でもよ。...ケン、大丈夫か?
記録:“痛感する。 徹底的な正義の下の力は、理解されてはならないのだ。"
茨:─────俺?
俺は───
記録:“抑止力とは。人間でありながら、人間を────引いては、人類を脅かすようなものでなければならないのだと、痛感させられる。”
バスティアン:...救えたんだぜ。今回もな。
分かってンだろ?
完璧だった。なあ、フラッガ。
フラッガ:....あぁ。指揮も、結果も。
完璧以外の何物でも無い。
茨:さっきから何だよ。
ジョット:引き金から指を離せ、ケン。
茨:...................。
記録:”扱い方を間違えてはいけない力───そう在り続ける事。
それこそが彼らの究極的な命題。”
ジョット:俺達は厳格だ。
遊びや快楽...それに、憎悪で戦わない。
俺達と悪の違いはそこに尽きる。.....そこだけに尽きるんだ。
分かってるよな。
記録:"私達は化け物に怯えない。”居ない”と分かっているからだ。
茨:...大丈夫か、お嬢ちゃん。
ティモシー:ッッ嫌ッ───...!!!
記録:”────居ない筈と、分かっているからだ。”
メイ:どッ...、どうしたのこの子ったら...、この人はね、助けてくれたのよ?
ボブ:無理もないさ、混乱しているんだ....。
すみません、貴方達は命の恩人です...!
茨:....いえ。
良かった。
貴方達が無事で、....本当に。
N:彼らは、フランス国家憲兵隊治安介入部隊。
───通称"GIGN"。
世界でも有数の対テロを掲げる特殊部隊である。




