社員旅行と小悪魔の夜
社員旅行の準備で浮き立つ社内。
けれど葵にとっては、ひとつ大きな問題があった――。
同居中の“男装女子”・優が、同じ旅行に参加するという現実。
理性と小悪魔の攻防戦、開幕です。
「今年の社員旅行、楽しみだね〜!」
「優様、今年は絶対参加なんでしょ!? ビジュが見れる……尊い……!」
朝のオフィスに、みゆともえのテンションMAXな声が響き渡った。
社内はもう旅行ムード一色。俺(葵)はというと――。
(いや、俺は仕事が山積みなんだが……)
書類を片付けていた俺の前に、優がひょっこり顔を出した。
スーツ姿の“爽やかイケメン”モード。
だがその実態は――中身が完全に“女”な男装女子だ。
「葵。部屋割り、決まったらしいぞ」
「おぉ、マジで? で、俺は誰と?」
優が手にした紙を見て、俺は思わず声を上げた。
「おい、待て。お前、他の男と同じ部屋になってんじゃねぇか!」
「そうだが?」
「そうだが、じゃねぇ!!」
俺は反射的に優の肩をガシッとつかみ――。
「お前は、俺と同じ部屋な」
その瞬間、周囲がざわついた。
みゆ&もえの二人が両手で頬を押さえ、目を輝かせる。
「ちょっ……尊死する……!」
「肩組んでる! 肩組んでるぅぅ!!」
「ビジュがいい! 構図が神!!」
社内の空気が一瞬でBLサロン化。
俺は耳まで真っ赤になって叫んだ。
「ちょ、ちょっと落ち着けお前ら!」
一方の優はというと――。
俺の肩に軽く寄りかかり、耳元で囁く。
「……なあ、なんか楽しいな」
小悪魔な声、近すぎる距離。
心臓がドクンと跳ねる。
「た、楽しくねぇよ!!」
「ふふっ」
優は小悪魔みたいな笑みを浮かべ、くるっとみゆ&もえの方へ。
「俺……彼女たちと一緒の部屋でもいいけど?」
「ぎゃああああ!!」
「死ぬ! 尊すぎて死ぬ!!」
「神が舞い降りた!!」
社内はもはや修羅場。
そして俺の心の声は――。
(お前……マジで男だな、それ!!)
***
夜。帰宅後。
旅行の話が落ち着いたあとも、妙に落ち着かない俺。
ソファに座る優は、完全に“女MAX”モード。
髪を下ろして、可愛いスイーツを食べながらニコニコしている。
「なぁ、葵ってさ。女嫌いなの?」
「あぁ。そうだけど……なんだよ急に」
優はカップを片手に、ゆるく笑った。
「俺さー、葵っていい奴だなーって思うから、好きな奴できたら言えよ」
「……」
「おい、聞いてんのか?」
「あぁ……聞いてる」
「なんだよ、変なやつだな」
そう言って、優はふとこちらを見た。
「ところでさ。優って本当の名前、何なんだ?」
「……ゆうだょ♡」
ふわっと揺れる髪。
ほのかに甘い香り。
そして――口元に、白いクリーム。
「お前、クリームついてるぞ。こどもかよ」
タオルでそっと拭うと、優はイタズラっぽく笑った。
「なぁ葵。ちょっとドキドキしたろ?」
「してねぇ……」
(……してるだろ俺)
***
社員旅行当日。
温泉旅館での宴会。
優は男装スーツのまま、隣の席でおちょこを片手にしていた。
「ほら優、もっと飲めよ〜!」
と、同僚たちに勧められ、少し顔を赤くしている。
(やばい……飲みすぎだ)
そして、ふと視線をやると――
胸元が、少しだけはだけていた。
(おいおいおい! バレる!)
「お前、飲みすぎだぞ!」
俺は慌てて優を支えて、部屋へ連れて行った。
部屋の中。
布団の上に座らせると、優がぽつりとつぶやく。
「……葵、優しいね」
「は? そんなわけ――」
ふらっと身体を寄せてくる優。
目の前、距離ゼロ。
「ねっ♡ 寝よっか、葵くん」
……理性、崩壊寸前。
(あぁ、俺……絶対に眠れねぇやつだわ)
――この夜、俺の理性は試されることになる。
ここまで読んでくださってありがとうございます。
社員旅行編、ついに開幕!
BL女子・みゆ&もえの暴走、そして優の小悪魔モード全開。
次回――
酔った優が放つ“破壊力MAX”の一言で、葵の理性がついに……!?
「続きが気になる!」と思っていただけたら、
ブックマーク&評価で応援してもらえると嬉しいです。
どうぞお楽しみに!




