第二導 そこにあるのは絶望(かりうど)か希望(ルーウェル)か
「よし、じゃあ早速任務に行こ〜ぜ!」
会議から一日過ぎ、急にそんなことを言われ、任務に行くことに_
内容は悪魔憑きからエルフを救助せよとのこと。場所はグラーツァから見て北にある、サウス・ゴッドグリーンという森。草木が生い茂っていて、見たことない植物や虫、木がある。
暫く辺りを歩いていると、人が一人入れるくらいの折を見つけ、その中には悍ましい化け物が_
人を悪夢が乗っ取り、精神を壊し、気色の悪い姿へと変貌させてしまう_これが悪魔憑き...?惨すぎて吐きそうだ_
「う、うっ...ぐぁぁぁぁっっっ!!」
「精神がやられているみたいだ、ルーウェル君!!」
「言われなくても!」
(浄化魔法 無詠唱)
「ヴァーデ・レトロ・サタナ!」
この魔法書はほんとに英語やらギリシャ語やらが混ざっている_不思議だ。
「...」
姿を表したのは銀髪で髪が長い、裸状態の少し幼気な女の子だった。
「...あな、たは?」
「僕はルーウェル!隣りに居るのが全知全能の神、ゼウス様!」
「よろしくな!」
「助けて...くれたの......?」
「そうだよ!」
「あ、ありが、とう_」
言葉がたどたどしい。悪魔憑きに取り憑かれる前、相当酷い仕打ちを受けたんだろう。
にしても可愛い_そしてスタイルが良く胸も大きめだ!助けて良かった!!
「どこ見てんだルーウェル君」
「か、神様だって気になってるんじゃないんですか〜?」
「き、ききき気になってなどいないぞ。神なんだから」
「動揺してますって」
取り敢えず、城で保護しよう。こんな可哀想な子、置き去りになんて出来ない!!
「ここで、大丈夫。」
「え?どうして?」
「私は、捕まる身。狩人から_ここから、離れたら...恩人の二人を_巻き込む。」
「巻き込む_ねぇ、」
目配せなんて、神様らしくない_
ま、僕が思ったことを話すか。
「君の気持ちはわかった。けど、君はきっとその狩人からずっと逃げ続けて逃げる宛がないんでしょ?」
「う、うん_」
「なら僕達はその狩人に立ち向かう。そして君を、城へ招待する。それでどう?」
「そ、そんなこと...出来るの...?」
「大丈夫。こっちにはさっき言った神様と、その神様の力で悪人を改心させる僕が居るからね!」
ちょっぴり盛っちゃった気はするけど、大丈夫。だと思う_
「す、すごい...!!」
「まぁな〜!」
「何も説明してないゼウス様が照れてる。」
一方、後ろでは誰かがこそこそと着いてきて聞く耳を立てているようだ。
盗み聞きは下賤な行為だが、手を出さなければ許そう。どうせ昨日俺を睨みつけて「殺してやろうぜ」とか言ってきたカス共だろう。
「気付かれないようにしろよ?ゼウス様には頼まれてないがこれは極秘だ。必ずどっかのタイミングで尻尾を掴んで_」
「はいはい、最初からそういうつもりだったんだね〜?」
「だ、誰だッ!?」
「兄貴、多分ゼウス様のお気に入りのやつですよ!!」
「く、くそっ!!だが、本人は俺等よりも少し遠い...どうやって話してんだ_?」
「脳内会話、神様の魔法書に載ってるやつ。まぁ君達はそんな物知らないだろうけど。」
「生意気な口を...!!」
「取り敢えず、頼みたいことがあるんだ。やってくれないか?」
「嫌なこった!」
「よし、始末するか_」
「ま、待て待て!!わかった!!頼みたいことはなんだ!!」
「それは_」
暫くして_
「ここら辺は狩人とか居ないみたいだな_よし、次行こう次〜!!」
「人任せなくせしてこういうときにだけ陽気なんだから_」
「気にすんな〜!」
「いや、多少は気にするよ」
「あの_」
「ん?どうした?」
「服、着せてくれて...ありがとう。なんか、ずっと_変な目で見られてたから_」
実は、兵士と話していた時に魔法を使って服を着せていた。
裸のままじゃ恥ずかしいだろうと思ったからね。ほんとはずっとそのままで良かったんだけど_
「それは...気の所為。」
「気の所為...?」
「そう、気の所為。んじゃ、先行こ〜」
_上に誰か居る...弓を持ってる、狩人らしき人が数人。
「お嬢、ちょっと失礼。」
「_えっ?うわっ!?」
弓矢が隼のような速さで地面に突き刺さった。
「...!!狩人...」
「ほう?これが狩人か_」
心臓に矢が刺さった。
「る、ルーウェル様!!」
「ルーウェル君!!」
仲間の僕を呼ぶ声が聞こえる。神経の一つ一つが泣き叫び、今にでも声を上げたいところだが_これは作戦の一手に過ぎない。
「行けぇぇっ!!兵士!!」
「「了解っ!!」」
兵士二人は手慣れた速さで木に登り、飄々と枝から枝へ乗り移り狩人の近くへ_
「あ〜ばよ。」
「な、何ッ!?ぐわぁぁぁっ!!」
「下に降りま〜す」
「チッ、奇襲攻撃か...あいつ、仲間がいたのかよ!ぐあぁぁっ!!」
その間、僕はゼウス様に蘇生された。
「_ふぅ、」
「ふ、ふぅ!?なんでこんな時に落ち着いてられるんだルーウェル君!!」
「心配_しました...」
「ごめんなさい、少し危険なことをしてしまいましたね_」
どうやら、向こうも片付いたみたい。傷一つない兵士…でも目線は何故か冷たいものだった。
「何故、殺されるとわかっていながら…我々を使った!」
「殺しても構わなかったというのに…」
その言葉を聞いた僕は、全てを見透かしたような顔で兵士を見つめる。
「君達は、僕に実力を見てもらいたかったんでしょ?だから君達に頼んでここまで生かしたんだ。そしてこれからも生かす。僕は誰も殺さない。」
「なっ…!み、見抜かれていたのか…流石、神の使いだな。」
「え?ど、どどどどういうことだ…!?」
「我等は元々、ルーウェルの親友だったんです。ですが、御存知かとは思いますが、例の劣悪な国王が行った大処刑によって分断され、およそ十年もの間、会えずに居ました。」
「なるほど、なんとなく理解した。」
なんとなくかい!
「狩人倒せたし、この子も悪魔憑きを取っ払う事が出来たし、やる事は全部終わった!取り敢えず帰ろ〜!」
「ま、待って_!」
女の子の声が森林に木霊する_
「どうした?」
「まだ私、名前言ってなかったですよね…」
「ま、まぁそうだね_」
「私の名前は鵲です!何卒、宜しくお願いします!」
今までのたどたどしかった口調ははっきり堂々とした物になり、幼い印象も変わり、ちょっぴり成長している感じが伝わった。こりゃあ感動もんだぁ…(T^T)
「あぁ!宜しく頼む!!」
「あと、目線…胸見てますよね…?」
「え、そ、そんなことないんじゃないの〜?ねぇ皆??」
「「「シーン」」」
「何とか言えぇっ!!!」
「はっ!」
「ぶはっ!?ち、力強ぇ〜!効くゥ〜!!!!(ルーウェルのステータスに変態レベルを追加。)」
今回は鵲。次回は誰かな?お楽しみにっ!