第96話
ハーブフォレストで調査中の冒険者パーティ達は巨大な魔物の痕跡を見つけていた。
「リーダー、これって」
「間違いなく、何かがいるな」
そこには周りの木の枝が折れ、何かを大きな物を引きずったように地面が抉れていた。
「だいたい幅は5メートル程か?」
「こんなデカい魔物なんて聞いたことないぞ」
「ん?これは」
冒険者の1人が地面にある物に気付き、それを拾い上げた。
「なんだ?花か?」
「ええ、名前は忘れましたが、この花は朝しか咲かないって花屋の友人が言ってました。」
「つまり咲いたところを潰されたと」
「この花の状態から考えると今朝に潰された感じですね」
「おいおい、じゃあ、オレ達が寝てる間に5メートル程の幅もある魔物が近くにいたってのか?」
「おそらく」
「マジかよ。」
冒険者達は警戒し始める。
「まだ近くにいるかもしれない。探索魔法で周辺を確認してくれ」
「了解」
魔法使いの冒険者は詠唱を始めた
「サーチ」
「どうだ」
「目の前に反応あり」
その言葉に冒険者達は武器を構え、戦闘態勢に入るが魔物の姿を確認出来ない。
「どの辺にいる?」
「すぐ目の前」
「魔物の姿なんて見えないぞ。目の前にあるのはデカい木だけだ」
仲間の言葉に冒険者パーティのリーダーは何かに気付いた。
「まさか!?おい、お前達、今すぐこの場から離れるぞ」
「リーダー?」
「急げ、そのデカい木みたいなのが魔物だ!! 」
「あれが魔物?」
そうしているとその巨大な木が動き始める。
「動いた!?」
上を見上げた1人の冒険者が後ずさる。
「……みんな………上を見て」
その言葉に冒険者達は上を見上げた。
「おいおい」
「嘘だろ?」
「こいつはタイラントスネーク!?」
冒険者達が見つめる先には、額に赤い宝石のような物がある巨大な蛇が舌を出しながら、冒険者達を見つめていた。
「本当にタイラントスネークなの?」
「この国で最後に目撃されたのは何百年も前だろ?しかも何百人もの王国騎士団と冒険者が犠牲になって、やっと倒したっていう、伝説の巨大蛇」
「間違いない。あの額にあるルビーのような色をしたクリスタルがその証拠だ。」
「タイラントスネークがなんでこんなところに?」
「そんなことより、今は早くこの場から逃げるぞ。一刻も早くこのことを知らせないと」
「そうね」
魔法使いは呪文を唱え始めた。
「アクセルブースト」
冒険者パーティ全員が輝いた。
「みんなに身体強化魔法をかけたわ。」
「だけど、どこに逃げる?」
「シルヴァスタ村に逃げても、おそらく村が壊滅するだけだ。被害を減らすためにもウェストラディアの方に向かおう。この森を抜けたら平原だ。もしオレ達がやられても、これだけ巨大な魔物なら、きっと誰かが気付いてくれるはずだ。それに運が良ければ、オレ達は助かるかもしれない。」
「喋ってないで、みんな早く逃げるわよ。」
「リーダー命令だ。みんな何があっても生き残るぞ。」
冒険者達はウェストラディアに向かって、森の中を走り出した。
タイラントスネークはその巨大な体で木々を薙ぎ倒しながら、逃げ出した冒険者達を追いかけ始めるのだった。
冒険者達がタイラントスネークから逃げ出して3時間程経った頃
レオン達を乗せた馬車の中では、ティアによるマリーへの説教が始まっていた。
「マリー、わかってる?私達はミレーナちゃんの護衛任務中なの。何、呑気にミレーナちゃんと一緒に昼寝してるの?」
「ずみまぜん」
マリーは泣きながらティアに謝っていた。
「本当にわかって」
ティアが言いかけた時、馬車が止まった。
「何?」
「魔物でも出た?」
サイラスが声をかけてきた。
「ミレーナ様、森の方から巨大な何かがこちらに向かって来ているようです。」
その事を聞いたティアは2人に声をかける。
「レオン、マリー」
ティアの言葉に頷き、レオン達は馬車から降りた。
「サイラスさん」
「森ってハーブフォレストですか?」
「あぁ、もしかすると例の魔物という可能性もある。」
ティアはミレーナの方を向き、決断する。
「ではここをお願い出来ますか?私達『自由の風』が対処します。」
「君達が強いことは知っているが、3人だけでは危険だ。」
「わかっています。ですが今、大事なのはミレーナちゃんの安全です。」
「確かにそうだが」
「もし危険であると判断すれば、合図しますので、ミレーナちゃんを連れて、ウェストラディアに引き返して下さい。」
「わかった。だが無理はするなよ。」
「もちろん」
「マリー先生達、大丈夫?」
ミレーナは心配そうな顔をしながら、マリー達に問いかける。
「ミレーナちゃん、任せてよ。」
マリーがガッツポーズを取る。
「大丈夫」
レオンが親指を立てる。
「安心して、すぐ終わらせて帰ってくるから」
ティアはミレーナに笑顔を向ける
「それじゃあ、私達は行きます。」
「君達なら心配いらないと思うが気を付けてくれ」
「はい。」
「サイラスさん、ミレーナちゃんを頼みます。」
「もちろん、命に替えても守ってみせる。」
マリーが3人に魔法をかける
「フライ」
「2人とも行くわよ!!」
3人は空に飛び立った。




