第94話
翌日の朝、レオン達はワーグナー伯爵の屋敷で朝食をご馳走になっていた。
「ミレーナ様、昨夜はゆっくりお休みになられたでしょうか?」
「うん、朝までぐっすり」
「それはよかったです。」
ワーグナー伯爵は真剣な顔で話しかける。
「みなさんにお伝えしたいことがありまして、3日程前、シルヴァスタ村の近くの森で巨大な魔物を見たという報告がありまして、冒険者ギルドの方に依頼を出したのですが、まだ発見報告も討伐報告も上がっておりません。レオンさん達がいれば、安心でしょうがアングラ坑道までの道中お気を付けください。」
「それってどんな魔物なんです?」
「報告によると森の木より高かったと、ただそれを見たのは夜だったようで、姿までははっきり確認出来なかったようです。」
「他には何かあります?足跡とか?」
「足跡はなかったようですが、何かを引きずったような跡があったとか」
「引きずった跡?ティア、マリー何か心当たりのある魔物っている?」
「それだけだとなんとも」
「さっぱり」
エミリーは自分の故郷の近くということもあり、心配そうな表情をしていた。
「エミリー、心配しないで」
「そうそう、あたし達も出来る限り協力するから」
「みなさん」
そのやりとりを見ていたミレーナは何かを思いついたようでマリーに話しかける。
「マリー先生、私がシルヴァスタ村にいる間、その魔物の調査と討伐をお願いしてもいい?」
「ミレーナちゃん?」
レオンとティアはミレーナの言葉に何かを察したようで、ミレーナに相槌を打つように言葉を発した。
「これは重要な任務だね」
「そうね。その依頼、私達、自由の風がしっかり達成してみせるわ」
「ティアお姉ちゃん達、お願いします。」
「任せて」
「ティア?レオン?」
マリーは勝手に話を進める2人に困惑していた。
「では、サイラスさん、私達が不在の間は王国騎士団にミレーナちゃんの護衛をお願いしますね」
ティアはドア付近で警護をしているサイラスに声をかける。
「任された。ミレーナ様は私達が守ろう。」
サイラスも察していたようで、快く返事をした。
エミリーはミレーナの意図がわかり、ミレーナに感謝を伝えた。
「ミレーナ様、ありがとうございます。」
「エミリー、何のこと?私はマリー先生達にそんな魔物から、自分を守ってもらおうとしただけだよ。私、わがままだから」
「わがままですか?」
「そう、わがまま」
「ミレーナ様のわがままなら仕方ないですね。」
ミレーナとエミリーは微笑みあった。
食事を終え、各自、出発の準備を始めたのだった。
「ねぇ、ティア?ミレーナちゃんの依頼って」
「あぁ、アレ?エミリーの心配そうな顔を見たミレーナちゃんが咄嗟に思いついたみたいよ。」
「オレ達はミレーナちゃんの護衛任務が終わるまではミレーナちゃんから離れられないけど、ミレーナちゃんの依頼で行くなら別」
「私達はミレーナちゃんの依頼でミレーナちゃんの安全を確保するために魔物討伐に行ったということに出来るし、ミレーナちゃんが村にいる間は王国騎士団もいるから、安全も確保されてる。」
「目撃情報があるだけで確かな証拠がないから、名目上はミレーナちゃんのわがままに付き合うってことになるけどね。」
「あぁそういうことか」
マリーも理解したようだった。
「ほら早く準備を終わらせるわよ。」
レオン達は準備を終え、馬車に向かうとワーグナー伯爵がミレーナにお見送りの挨拶をしに来ていた。
「ミレーナ様、王国騎士団の方々やレオンさん達がいますから安全だとは思いますが、道中お気をつけ下さい。」
「ありがとうございます。ワーグナー伯爵」
「ワーグナー伯爵」
レオン達が声をかけた
「みなさん」
「一晩お世話になりました。」
レオン達は感謝を述べる
「いえいえ、レオンさん達はウェストラディアを守ってくれた恩人ですからね。お気になさらず」
「はい」
「ミレーナ様のことをくれぐれもお願いします。」
「お任せください。」
サイラスがミレーナの元にやってきた。
ワーグナー伯爵に会釈し、ミレーナに要件を伝える。
「ミレーナ様、いつでも出発出来ます。」
「うん、マリー先生達は大丈夫?」
「もちろん」
「じゃあ、出発」
「ハッ」
サイラスは騎士団に出発の合図を送る。
一行はワーグナー伯爵邸を出発した。
「皆様、お気をつけて」
ワーグナー伯爵は見えなくなるまでミレーナ達を見送っていた。
レオン達がシルヴァスタ村に向けて出発した同時刻
シルヴァスタ村の近くにあるハーブフォレストに依頼を受けた冒険者達が調査にやってきた。
「ここにいるって聞いて来たはいいが、特に変わった様子は無さそうだが」
「そうね、森の入り口付近は薬草を取りにくる人が多いそうだから、危険ってわけではないそうよ。」
「でも森の奥の方に巨大な魔物が住んでいるって噂はあるみたいだけど」
「それ、昔、子供が森で迷って、数日探し回ることになったから、それ以降、子供が森に近づかないようにするために大人が流した嘘だろ?」
「オレは巨木が倒れて道を塞いでいたから、道具を持って戻ってきたら、その巨木が消えていて、アレはきっと巨大な魔物だったって話は聞いたことがあるぞ」
「それ酒飲みな爺さんが言ってたやつだから、あんまり当てにならないっての」
「とりあえず巨大な魔物を見たっていうポイントまで行ってみましょう」
冒険者達は森の奥へと足を進めた。




