第91話
「本当にすみません」
「エミリーが謝ることじゃないよ。」
「ですが」
「ミレーナちゃんの好奇心くすぐるようなこと言ったのこっちだし」
「ありがとうございます。レオンさん」
「まぁカーラムの森を抜けるのはオレとマリーだけじゃキツかったし、助かったよ。」
時は昨日へと遡る。
お城へ帰った後、ミレーナは国王である祖父にお願いしていた。
「お祖父様、私、アングラ坑道に行ってみたいの」
「ミレーナよ、アングラ坑道に魔物はいないがそれまでの道中には危険がたくさんある。流石に認められんよ。」
「じゃあマリー先生達と一緒に行くのはダメ?」
「確かにあの者たちと一緒であれば危険はないだろうが」
「お祖父様、お願い。」
うるうるとした目で国王を見つめるミレーナ
「わかった。」
ミレーナのお願いに負けた国王であった。
そして翌日、レオン達の元へ国からの護衛依頼が届いた。
「依頼内容はミレーナちゃんの護衛、旅の道中は王国騎士団が同行か」
「レオン、なぜこうなったの?」
「昨日、ウンディーネがアングラ坑道はドワーフ族の地下帝国って話をしたからじゃないかな?行きたいって言ってたし」
「流石に断れないよね?」
「オレ達もアングラ坑道に行くのに断るなんて出来ないよ。」
「受けましょう。この依頼」
レオン達がお城に着くとミレーナとエミリーが出迎えてくれた。
そして話は冒頭へと戻る。
そして謁見の間に連れて行かれ、国王が用件を述べる。
「冒険者パーティ『自由の風』のそなた達に孫娘ミレーナの護衛任務を依頼したい。引き受けてくれるか?」
「ご依頼、確かに承りました。ご安心下さい。ミレーナ様は必ずお守り致します。」
「ではよろしく頼む。」
「かしこまりました。」
形式的な話が終わった後、国王がレオン達に話しかける。
「ミレーナが迷惑をかける。」
「いえ、そんなことは」
「どうしても孫にお願いされると敵わないようでな」
「それは私達も同じようなものですし」
「ミレーナのことよろしく頼む」
「はい」
「それで、そちらの準備は終わっているのかね?」
「ほぼ終わっています。後は食料の買い出しくらいでしょうか」
「そうか、わかった。食料はこちらで用意しよう。こちらが無理にお願いしたようなものだ、これくらいはさせてもらおう。では明後日の朝、出発ということでいいだろうか?」
「承知しました。」
レオン達は謁見が終わり、謁見の間を後にした。
「マリー先生、旅の間よろしくね。」
「まさかこんな手を使ってくるとは。やるなぁ、ミレーナちゃん」
楽しそうにミレーナと話すマリー
「最近、ミレーナ様の言動がマリーさんに似てきた気がするんですよね。」
エミリーがため息混じりで呟いた。
「マリー、ミレーナちゃんに変なこと教えないでよ?」
「大丈夫。わかってるって」
「本当かなぁ?」
レオン、ティア、エミリーは疑いの目をマリーに向ける。
「ちょっと、なんでそんな目をあたしに向けるの?」
「だって」
「ねぇ」
「ええ」
「ミレーナちゃん、あたし良い先生してるよね?」
マリーはミレーナに泣きついた。
「うん、自慢の先生だよ。」
「ほら」
「…………」
「…………」
「…………」
「ねぇ、なんで、みんな無言なの?」
「なるほどね」
「国王陛下もこんな感じでお願いされたのね。」
「ミレーナ様の将来が心配です。」
レオン、ティア、エミリーは残念な物を見るような目でマリーを見つめる。
「なんでそんな顔であたしを見つめるの?」
「レオンさん、ティアさん、私も同行することになりますけど、ミレーナ様のことよろしくお願いします。」
「任せて、エミリー」
「大丈夫、安心して」
「あとマリーさんもよろしくお願いします。」
「ちょ、エミリー、なんであたしだけ、ついでみたいな感じなの?ねぇ?」
「それじゃあ、明後日の朝にまた」
「ほら、行くわよマリー」
ティアがマリーを引っ張る。
「ちょっと痛いって、ティア〜」
「マリー先生、ティアお姉ちゃん、レオンお兄ちゃんバイバイ、また明後日ねー」
レオン達が城門を出ようとした時、騎士の鎧を来た男性が話しかけてきた。
「君達が冒険者パーティ『自由の風』か?」
「はい、そうですが」
「私は王国騎士団一番隊隊長サイラス・ホーランドだ。今回、君達と共にミレーナ様の旅に同行させてもらうことになった。」
「私はティア・スカーレット、彼女はマリー・イーグレット、彼はレオン・アステールです。よろしくお願いします。」
「あぁ、よろしく頼む。」
それぞれ握手を交わす。
「君達の話は伺っているよ。ミレーナ様の誘拐を防ぎ、人身売買組織を壊滅、そしてドラゴン討伐と凄い活躍をしたそうじゃないか。」
「ええ、まぁ」
「その頃、私達、王国騎士団一番隊はナシル様とミリアリア様の護衛任務でこの国にはいなくてね。知らせを聞いた時は驚いたよ。」
「そうだったんですね。」
「王国騎士団を代表して、君達にお礼を言いたい。この度はミレーナ様の救助並びに組織壊滅、街を救っていただき、誠に感謝する。ありがとう。」
サイラスがレオン達に頭を下げ、感謝を伝える。
「はい」
サイラスは頭を上げ、レオン達を見つめる。
「しかし驚いた。」
「何をです?」
「君達の見た目からはベヒーモスやドラゴンを倒したとは思えなくてね。」
「そう見えます?」
「ドラゴンを倒す程の実力者だと、話は聞いていたが君達の姿を見たことがなかったのでね。もしここが戦場で、君達が敵なら、私の隊は死んでいたかもしれない。」
「そんな大袈裟な」
「いや、そんなことはない。人は見た目で判断することが多いからね。私も先輩から『人を見た目で判断するな』と何度も言われたよ。例えば、見た目は可憐な少女だが実は暗殺者だと言われたら驚くだろ?」
「そうですね。」
「私も騎士団に入ってから、いろいろ経験してきたからね。まさかこんな子供がということも何度も経験したよ。君達も見た目で判断すると痛い目を見ることになるから注意すると良い。」
「わかりました。気を付けます。」
お城から、騎士の鎧を付けた男性が走ってきた。
「隊長、ここにいたんですか、そろそろ時間ですよ。」
「もうそんな時間か、先に戻っていてくれ。」
「了解しました。」
そしてお城へと戻っていった。
「すまないね。私はこれで、では出発の日にまた会おう。」
「はい、出発の日にまた」
サイラスがお城へと駆けて行った。
そして出発の日になった。




