第86話
レオン達はアングラ坑道へ行くための準備を始めていた。
「地下迷宮みたいになってるって聞いたけど、どうなのかしら?」
「地図とか借りれないかな?」
「そうだね。国が管理してるって聞いたから、ミレーナちゃんが遊びに来た時にセバスチャンさんに聞いてみる?」
「そうしましょう」
アングラ坑道について話しているとエミリーがリビングに入ってきた。
「みなさん、お茶の準備が出来ましたよ」
「ありがとう。エミリー」
「エミリー、もう少ししたら、私達出発しちゃうけど、1人で大丈夫?」
「この辺りは貴族様ばかりなので治安はいいですし、安心です。この前、サーシャ先輩に会った時に言われました。まだギルドを辞めたことは言ってないから、毎日会いに来てるよって」
「しつこすぎない?」
「ええ、辞めた後も先輩達に迷惑かけてるので、心苦しいと言いますか」
「エミリーのせいじゃないからね。なんだったら、あたし達がお詫びに何か持って行こうか?」
「すみません。お願い出来ますか?」
「任せて」
エミリーは冒険者ギルドには顔を出せない状況なので代わりにマリー達にお願いし、お詫びとしてお菓子を持って行って貰った。
帰ってきたマリー達は伝言を預かったと言うので聞いてみたら
『辞めたとしても可愛い後輩には変わらないから気にしないで、落ち着いたら、ご飯でも食べに行きましょう。』
とのこと
「本当に私は良い先輩達を持って幸せです。」
エミリーは誰にも聞こえない声で1人呟くのだった。
エミリーが屋敷で働き始めてからは平穏な日々を送っていたのだが、ある日、事件が起こったのだった。
その日はマリー達は買い物に出かけていた。
マリー達が屋敷に住み始めてから、ミレーナはよく遊びに来ており、その日もいつもの時間にミレーナとセバスチャンが屋敷に訪れた。
「こんにちは、エミリーお姉ちゃん」
「こんにちは、ミレーナ様。マリーさんなら今、お買い物に出かけてるんですよ。もう少しで帰ってくると思うんですけど、それまでお屋敷の中で待っていますか?」
「うん、そうする。」
「では中に、セバスチャンさんもどうぞ」
エミリーはお茶を入れ、ミレーナとセバスチャンをもてなす。
マリー達が帰ってくるまでの間、談笑していると屋敷の前で馬車が止まる音がした。
「お客様かしら?すみません。私、少し出てきますね。」
2人にそう言い、エミリーは屋敷の外へと向かった。
エミリーは屋敷の門の前までやってくると
「どちら様です…」
「やっと見つけたよ」
「どうして、あなたが!?」
目の前にはエミリーをストーカーしていた貴族の男が立っていた。
エミリーは身構えてしまう。
「どうしてってこっちのセリフだよ。君が冒険者ギルドを辞めて、こんなところで住み込みで働いてるとは思いもしなかったよ。」
「私の勝手でしょ?」
「何を言ってるんだい?君は僕の物なのに、勝手なことをしては困るな。」
「私はあなたの物じゃない」
「全く聞き分けがない子だね。これは躾が必要だね。」
男がエミリーを引っ叩き、エミリーは地面に倒れた。
「痛いかい?君が僕の言うことを聞いていればこんなことは」
「ストーンバレット」
男に石が当たった。
「誰だ!僕に石を当てたのは?」
「エミリーお姉ちゃんに何してるの?」
ミレーナが外を眺めていると、男と話すエミリーの様子がおかしいことに気付き、屋敷から飛び出して、エミリーの元へとやってきた。
「なんだ、この子供は?」
「エミリーお姉ちゃん大丈夫?」
「私は大丈夫ですから、早くお屋敷の中に」
エミリーはミレーナに危害が加えられないよう逃がそうとする。
「ダメ、エミリーお姉ちゃんをいじめるな!!」
ミレーナがエミリーを守ろうと男の前に立った。
「そうか、2人とも躾が必要だね。」
男は剣を抜き、ミレーナに斬りかかった。
「危ない!」
咄嗟にエミリーはミレーナを庇い、男に背中を斬られた。
「アッ…くぅ」
エミリーは力が抜けミレーナにもたれかかる。
「エミリー…お姉ちゃん?」
「早く…逃げ…て」
ミレーナの手は血で赤く染まる
「エミリーお姉ちゃん!!」
「全く僕に逆らうからこうなるんだ。」
「ミレーナ様、急にお屋敷から飛び出しては…」
セバスチャンはミレーナを追いかけ、屋敷から出てきた。しかし目の前には、座り込んでいるミレーナ、ミレーナを覆い被さるようにして倒れているエミリー、そして剣を持った男が立っていたのだった。




