第84話
私はエミリー・クラネス
田舎で暮らしていた私は真面目だと言われていて、勉強もそこそこ出来てたと思う。
両親に楽をさせてあげたいと思った私は王都の冒険者ギルドの受付嬢に応募してみた。
結果は合格
両親は泣いて喜んでくれた。
王都で1人暮らしを始めて、仕事や生活面に不安はあったけど、私の教育係であるサーシャ・ハリス先輩は丁寧に仕事のことを教えてくれた。
生活面の方もいろいろ相談に乗ってくれて、仕事終わりや休みの時はご飯をご馳走してくれたり、遊びに出かけたりもした。
私にとってサーシャ先輩は良き先輩であり、憧れだった。
だけど、『あの人』が冒険者ギルドに来るようになってから、私の人生は変わり始めた。
「ねぇ君、可愛いね」
「お褒めいただきありがとうございます。」
「この後、時間ある?」
「あいにく、予定が立て込んでまして」
「そっか残念、じゃあまた来るよ。」
そう最初はただのナンパみたいなものだった。
私は受付嬢の仕事をしていて、波風立たないような返答をした。
そのことをサーシャ先輩に言ったら、受付嬢やってると、たまにあるらしく、サーシャ先輩の同期の人は、最初からお互いを気になっていたらしく、あっという間に結婚し、寿退社したらしい。
ただその人かなり仕事が出来る人だったから、辞めた後の皺寄せが大変だったと愚痴をこぼしていた。
それから、連日、ナンパしてきたのだが、私は仕事中なこともあり、やんわり断っていた。
「ねぇ、君、僕の愛人にならない?」
「はい?」
「僕は貴族でね、伯爵の長男なのさ」
「はぁ」
「僕の愛人になれば、もっと裕福な暮らしが出来るよ」
「申し訳ありません。仕事中ですので」
私のそっけない態度に腹を立てたのか、男が机を叩いた。
「僕の言うことが聞けないのかい?」
そうしているとサーシャ先輩が助けに来てくれた。
「エミリー、悪いんだけど、この資料どこにあるか至急探して貰える?私がこの方のお相手するから」
「先輩?」
「急いで」
先輩から渡されたメモには資料室で隠れてなさいと書かれていた。
「わかりました。先輩よろしくお願いします」
「ではお話を伺いますね」
「もういい」
そう言ってギルドから出て行った。
「エミリー、もう大丈夫よ」
「先輩、ありがとうございます。」
「貴族だと厄介よね。」
「はい」
数日、こんな感じに言い寄られ、先輩達が助けてくれるという続いた。
そしてあの人行動はだんだんエスカレートして行った。
仕事が終わり、帰ろうと冒険者ギルドから出た時
「これからディナーなんてどうかな?」
待ち構えられていた。
「すみません」
「僕の誘いを断るの?」
威圧的な態度で私は睨みつけられる。
それを見た先輩達、数人が話しかけてきた。
「エミリー、こんなところにいたの?ほら早く行くよ。」
「すみませんね。エミリーは私達との先約があるので」
「ほらほら」
そうして私を助けくれた先輩達に連れられ一緒に食事をすることになった。
「しかし、あの男しつこすぎない?」
「わかる」
「正妻ならともかく愛人はないわ。」
「バカにするにも程があるでしょ?」
「エミリー、また何かあったらいいなよ?」
「先輩達、ありがとうございます。」
私は涙が溢れた。
「泣くなって」
「可愛い後輩のためだもの」
「せんぱ〜い、ありが…とう…ございます。」
先輩達の優しさに涙が止まらなくなった。
だけど、あの人は毎日のように私の前に現れた。
そしてこれ以上、先輩達に迷惑をかけられないと受付嬢の仕事を辞める決意をした。
そのことをサーシャ先輩に話した。
新しい仕事が見つかるまでの間は受付嬢ではなく裏方での仕事をこなしていた。
資料作成、討伐依頼完了報告の処理などいろいろ
仕事が終わり帰ろうとしたら、あの人が近くにいたので遠回りをしながら家に帰った。
そして私の運命が変わる日がやってきた。
ギルドで仕事をしていたら、サーシャ先輩に呼ばれた。
目の前にいたのは『自由の風』のみなさんだった。
私が受付嬢になったばかりの頃、顔を知らなくて迷惑をかけてしまった人達
私はあの時のことを謝罪した。
3人は私が新人だったということもあり、気にしていなかった。
そして私は仕事を紹介された。
仕事の内容は『自由の風』のみなさんが暮らすお屋敷の管理、掃除、洗濯、料理などだ。
住み込みで仕事が出来、お給金も良かった。
何より、レオンさん、ティアさん、マリーさんが凄すぎて、心の底から安心出来た。
レオンさんが言っていた。
多くの貴族の方達が後ろ盾になってくれてるから大丈夫だと。
その後、マリーさんが最悪、ミレーナ様経由で、国王陛下にお願いすると聞いた時は驚いたけど
そうして、働き始めて数日が経ち、お屋敷の生活にも慣れたのだが
「マリーさん、自分の物は自分で片付けて下さい。掃除が出来ないじゃないですか?」
「エミリー、ごめんって」
「あとティアさんは早く起きて下さい。洗濯が出来ません」
「エミリー、そう言われてもね、起きれないものは起きれないのよ。もう諦めて」
「まぁ2人のことは可愛いものですからよしとしましょう。問題なのはレオンさん、あなたです。」
「えっオレ?」
「なんですか?アレは」
エミリーは屋敷の外に建てられた小さな小屋を指差す
「エミリー説明しよう。見た目はただの小屋だけど、地下があって、秘密基地みたいになってるんだ。なんていうの男の憧れってやつ?」
レオンは自慢げに語った。
「レオンさん、近所からなんて言われてるか知ってます?」
「なんか言われてるの?」
「犬でも飼い始めたのかしらって」
「………………」
それを聞いていたティアとマリーはレオンにトドメを刺した。
「流石、名犬レオンね」
「そうだね、番犬レオンだけはあるね」
その後、レオンは地下へ行ける扉だけ残して小屋を潰したのだった。




