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第100話

タイラントスネークを倒した後、レオン達は何事もなく、街道を進み、シルヴァスタ村へあと少しというところまで来ていた。



「もうすぐね。」



「きっと、村では歓迎の宴を開こうといろいろ準備してそうですけど」



「それは楽しみ」



「マリー」



「わかってるけどさ」



「一応、オレ達、ミレーナちゃんの護衛だから、あんまりハメを外しちゃダメだよ。マリー」



「レオンまで言う」



「まぁワインくらいしか特産品ないですけど、のんびりとした村なので、ゆっくりして行って下さい。」



「ねぇ、マリー先生、アングラ坑道にはいつ行くの?」



「明日くらい?」

マリーはティアを見る。



「そうね。今日はきっと歓迎ムードで出発出来そうにないだろうし」



そうして話しているとシルヴァスタ村が見えてきた。



「みなさん、あそこがシルヴァ……」



エミリーは村が見えてきたので、レオン達に伝えようとしたところ、言葉が詰まった。

それもそのはず、村の入り口に村人全員が集まり、歓迎ムード一色であった。


『ミレーナ様、自由の風のみなさん ようこそ、シルヴァスタへ』

という横断幕まで張ってある。



「なんか凄く歓迎されてるね。」



「まぁ王族が村に来るってなったら、あぁなるんじゃない?普通」



「オレ達のパーティ名書かれてるのは?」



「クリムゾンドラゴンの件じゃないかしら、もしかすると村が無くなってたかもしれないわけだし」



「あれ考えたの絶対、村長だ。祭り事大好きだし」

ボソリと呟くエミリーだった。



そして一行は村へと到着した。

馬車が止まると村人達はしゃがみ、ミレーナが降りてくるのを待つ。

護衛をしているレオン達が先に降り、エミリー、そしてミレーナが馬車から降りた。



「ミレーナ様、遠路はるばるおいで下さいました。私、シルヴァスタ村で村長をしておりますジェイク・ネルソンと申します。」



「ミレーナ・ミストレアと申します。この度の温かいご歓迎、誠に感謝致しますわ。」



ミレーナの話し方が気になったマリーが小声でティアに問いかける。


「ねぇティア、ミレーナちゃんの話し方がいつも違うけど、何かあったの?」



「あぁ、あれ?エミリーがミレーナちゃんの親しい感じの話し方だったのが気になったみたいで、ミレーナちゃんにこういう時の話し方を叩き込んだらしいわ。」



「なるほど」



昨日(さくじつ)、騎士団の方からお聞きしました。タイラントスネークという巨大な魔物からこの村をお救いになっていただいたそうで、誠に感謝しております。」



「感謝は彼ら、冒険者パーティ『烈火』と『自由の風』のみなさまにお願いしますわ。」



「冒険者のみなさま、この村を救っていただき、誠にありがとうございました」


村人達から感謝の言葉が上がる。

レオン達冒険者達は照れ臭くなってしまった。



「みなさまには誠心誠意おもてなしさせていただきます。夜には宴も用意しておりますので、楽しみになさって下さい。」



「ありがとうございます。」



「みなさま、長旅でお疲れでしょう、宿の方、準備致しましたので、まずはそちらに」



「あの、そのことなんですが、この中にエミリーのご両親はいらっしゃいますかしら?」



「「は、はい」」

2人の夫婦が立ち上がる



「あなた方がエミリーのご両親ですね。ミレーナ・ミストレアと申します。エミリーには大変お世話になっておりますわ。」



「父のエドガー・クラネスです。」

「母のナタリー・クラネスです。」


「うちの娘がお世話になっております。」


「うちの娘が何かご迷惑をおかけしたりしていませんでしょうか?」



「エミリーは優秀ですから、頼りにしています。」



「ありがたきお言葉、痛み入ります。」



「あの一つお願いしたいことがあるのですが、よろしいでしょうか?」



「はい、なんでございますか?」



「エミリーが住んでいた部屋に泊まってみたいのですがよろしいでしょうか?」



「はい、もちろんです………あのミレーナ様、聞き間違いかもしれないのでもう一度言っていただけますか?」



「ですから、エミリーの部屋に泊まらせて欲しいのです」



「「え、えーーーーーーーーーー」」

エミリーの両親は驚きの声を上げた。



「ちょ、ちょっとミレーナ様、いきなり何をおっしゃってるんですか?」

エミリーが止めに入る。



「いえ、ただ優秀なメイドのエミリーがどういう生活をしていたのか気になりまして」



「あのミレーナ様、何か私しました?」



「いえ、エミリーは何も。ただ興味が湧きまして」



ミレーナとエミリーのやり取りを見ていたマリーはレオンに小声で問いかける。


「ねぇレオン、あれってさ」


「なんかミレーナちゃんがマリーに似てきた気がする」


「ちょっとレオン、それどういう意味?」


「マリー、静かにしなさい。」





「あのミレーナ様、泊まっていただくのは構わないのですが、少々お時間いただけますか?」


「出来れば部屋を綺麗にする時間をいただけると助かるのですが」



「はい。無理を言って申し訳ございません。ご迷惑をおかけしますがお願いしますね。」



「迷惑だなんてそんな」



「むしろ光栄の極みです。それでは早速、準備をしてきます。」


「失礼します。」

エミリーの両親は自宅へと大急ぎで帰って行った。



「ネルソン村長、申し訳ございません。せっかく宿の準備をしていただきましたのに、私の我儘で」



「そんな滅相もございません。」



「ネルソン村長には、この村の歴史やワイン作りなど、この村について教えていただいてもよろしいでしょうか?」



「はい、喜んで。では落ち着ける場所でお話いたしましょう。私の家でよろしいでしょうか?」



「はい。」



「こちらです。私について来て下さい。」



「エミリー、行きますよ。」



「は、はい、ミレーナ様」



ミレーナ達のやりとりを見ていたレオン達は小声で話していた。


「今のミレーナちゃん見てるとなんか調子が狂うな。」



「仕方ないわよ。ミレーナちゃん王族だし、今後はもっとこういうことが増えていくと思うから、小さい頃から慣れてる方がいいんじゃない?」



「そうだね、でも、オレ達の前では王族ではなく、ミレーナ・ミストレアという1人の女の子で居られるようにしてあげたらいいんじゃないかな?」



「そうね、レオン」



「よし、とことん甘やかしてあげよう」



「またエミリーに怒られるわよ」



そしてレオン達もミレーナの護衛として同行した。















村長はこの村の歴史やワイン作りについて、ミレーナに詳しく話した。


「大変、勉強になりました。」



「いえいえ、ミレーナ様にこの村のこと知っていただけて、大変嬉しく思います。」



「私はまだ子供なのでお酒は飲めませんが、ワインだけが特産品というのは何かもったいない気もしますね。」



「一応、ぶどうジュースは作ってはいるのですが、アルコールが入っていないので日持ちしないのですよ。この村の子供達に人気なんですが、ミレーナ様、一度お飲みになってみますか?」



「そうなんですか?是非飲んでみたいです。」



「ではご用意いたしますね。」



村長はぶどうジュースをグラスに入れ、ミレーナに差し出した。



「ちょっとごめんね、アンチドート」

マリーがそのぶどうジュースに魔法をかける。



「あの、これは一体?」



「すみません、毒は入ってないとは思うんですが、これも護衛任務の一つですので、ご理解下さい。」

ティアが説明する。



「あぁ、すみません。おもてなししたいばかりに気が回りませんでした。」



「まぁサンドヴァイパーの毒でも簡単に解毒出来るからね。あたし」



「なんと、猛毒で有名な毒蛇サンドヴァイパーの毒を」



村長はマリーの魔法に感心していた。


そのことにレオンはティアに問いかけた。


「ねぇ、いつそんな猛毒の蛇の解毒を?」



「王都にいた時に観賞用に飼おうとした貴族が噛まれたところをたまたま通りがかったマリーが解毒したってわけ」



「もし解毒が間に合わなかったら?」



「10分もせずに死ぬわね」



「えっ!?よくそんなの飼おうとするな」



「なんでも、その貴族、無類の爬虫類好きらしいわ。それでマリーは命の恩人だからと何かお礼がしたいって言われたから、マリーは孤児院の援助をお願いしたのよ」



「ティアとマリーが育ったっていう」



「そう、私としても援助してもらえるのは嬉しいんだけどねぇ」



「ティア、何か含みがある言い方してない?」



「命を助けられたお礼として、孤児院の援助をしてもらうのはいいんだけど、他の貴族が羨ましがってるというか」



「それってマリーがミレーナちゃんの魔法の先生で王族と繋がりがあるから?」



「そうではなくて、人身売買組織壊滅させた時のお礼がほとんど出来てないからよ」



「そういえば貰ったのって剣の費用だけだっけ?」



「えぇ、それでたまに聞かれたりするのよね?困ってることはないかって」



「そのうち、何かお願いしようか?」



「そうね。貴族としてのメンツもあるだろうしね」



そして2人はミレーナに目線を戻す。




「では、いただきます。」



ミレーナがぶどうジュースを一口飲む。

ミレーナの口にぶどうの香りと味が一気に広がった。


「甘くて、美味しい」



「お気に召したようで良かったです」



「はい。王都でもこれほどの物は滅多に飲んだことがありません。」



「ありがたいお言葉です。王都でも飲んでいただければいいのですが、新鮮な状態でないとこの味は出せないのですよ。」 



「残念です。王都でもこの味を広められたらと思いましたが」



「じゃあ、ジャムにでもすればいいんじゃない?ジャムだったら日持ちするでしょ?」

マリーが提案する



「マリー先生、とてもいい案ですね」



「自分達が食べる分くらいならいいのですが、砂糖を大量に購入すると輸送費がかかりまして、採算が合わないんですよ。」



「あのジャムを作って貰ってもいいでしょうか?一度、食べてみたいのですが」



「それは構いませんが」



「砂糖はこちらで用意します。エミリー、たしか馬車の荷台に積んであったわよね?持ってきてくれる?」



「はい、ただいま」



「ジャム作りは冷えて固まるまで時間がかかりますがよろしいですか?」



「構いませんわ」



エミリーは荷台に砂糖を取りに行き、戻ってきた。



「ミレーナ様、持ってきました。」



「エミリー、ありがとう。村長お願い出来ますか?」



「わかりました。」



「ではジャムが出来上がるまで、私達はこの村を見て回りましょう。エミリー、案内の方、お願いしますね」



「はい、ミレーナ様」



「村長、また後でお伺いします」



「ミレーナ様、ジャムが完成するのは明日になると思います。」



「そうなのですね。では完成する明日が楽しみです。」



「ミレーナ様が満足出来るよう最高のジャムをお作りしましょう」



「ミレーナ様、私もジャム作りのお手伝いをさせていただいてもよろしいでしょうか?今後のお菓子作りに活かせればと思いまして」

ミレーナの付き添いのメイドの1人が提案する



「えぇ、ではお願いしますね。」



ミレーナのメイドの1人が村長に付き添い、台所へと向かい、ミレーナ達は村を見て回ることにした。



「案内と言っても、この村、ワインの工房とぶどう園くらいしか目ぼしい物がないのですが」



「ではその二つの案内をお願いします。」



「あのさ、あたしちょっと別行動してもいい?」



「マリー?」



「ティア、結構辛そうだから、タイラントスネークに結界魔法張ってこようかなと」



「マリー先生、お願いします」



「ミレーナちゃんのお許しも出たってことで行ってくるね。ティア、シルフ、ちょっと借りるよ。」



マリーはシルフと共にタイラントスネークのところへと魔法で飛んで行った。



「ごめんね、ミレーナちゃん」



「大丈夫」



「ありがとう」



ミレーナ達はワインの工房とぶどう園を見に行くことにした。












「ねぇシルフ、魔物を寄せ付けない何か強力な結界魔法ってある?」



「あるにはあるけど、かなり魔力使うぞ」



「なら教えて」



「わかったよ」



そしてタイラントスネークのところまで来ると、見張りをしている王国騎士団がいた。


「すみませーん」



「マリーさん、もしやミレーナ様に何かありましたか?」



「いえ、タイラントスネークに魔物が寄ってこないように結界魔法を張ろうと思いまして」



「それは助かります。」



「全員にタイラントスネークから少し離れるように伝えて貰えます?」



「わかりました。」



全員が離れ終わるのを確認するとタイラントスネークの上空に移動した。



「よし、やるか」



マリーが手を上に掲げる




「アイソレーション」




タイラントスネークに強力な結界魔法が張られた。



「やばっ」



マリーは魔力切れを起こし、落下し始める

バッグから魔力回復薬を取り出し、一気に飲んだ。



「フライ」




地面に直撃する前に飛行魔法をかけた。



「危なかったぁ」



「マリーさん大丈夫ですか?」

騎士団員が駆け寄ってくる



「ご心配なく、もうこれで魔物は寄って来ないと思います。」



「それはありがたい」



「ではあたしはこれで、引き続き見張りの方お願いしますね」



「はいお任せください」



マリーは飛び上がり、シルヴァスタ村へと戻って行った。


シルフはマリーに話しかける。


「マリーの魔力の多さには呆れるよ」



「なに、バカにしてんの?」



「むしろ逆、尊敬に値するよ。本来、あの魔法は数人がかりで使う魔法なんだけどな。あれ」



「だからあんなに魔力持ってかれたわけね」



「でもマリーはよくやったよ。」



「ティアが辛そうにしてたからね。」



「悪かった。最初からマリーに頼ればよかったよ」



「そうだよ。もうあたし達は仲間なんだから」



「これからはそうするよ。」













マリーとシルフがシルヴァスタ村に到着した頃、ミレーナ達も村を回り終えた頃だった。



「ただいま」



「おかえりなさい、マリー先生」



「ただいま、ミレーナちゃん」



「マリー、お疲れ様」



「マリーおかえり、結界魔法の方は?」



「シルフに教えてもらった魔法で完璧」



「マリー先生、その魔法、私にも教えて」



「ミレーナちゃん、それはまた今度にして、かなり魔力使うから、今日はもう無理」

マリーがフラフラと倒れそうになる




「マリー、大丈夫?」

レオンがマリーを支えた。



「レオン、ちょっと肩貸してて、あの大きさだから根こそぎ持ってかれたんだよね。」



「マリーありがとう」



「そっちはどうだった?楽しめた?」



「ワイン工房にはたくさんのワインがあったわよ。少しだけ試飲させてもらったけど、同じワインでも年数が経つと味わいが変わることに驚いたわ」



「ティア、ズルい」



「心配しなくても、夜の宴で出されるでしょ?ただし飲み過ぎないでね」



「わかってるよ」



「ぶどう園は広かったね。ワインになる前のぶどうを食べさせてもらったけど、ワインにするのが惜しいくらい美味しかった」



「ではそろそろ、エミリーのお家に行きましょうか?」



「あのミレーナ様、私、何かしました?私の実家に泊まる理由を聞いてもいいですか?」



「えっと、それは」



「それは?」



「エミリーが」



「私が?」



「厳しすぎるから」



「はい?」



「お勉強とかマナーとかいろいろ」



「あのですね、それはミレーナ様を立派な淑女へと導くためです。国王様からも専属メイド兼教育係としてお願いされています」



「それはわかってるけど、でも、このお勉強終わらないとマリー先生のところに行っちゃダメとか、嫌いな物も残さず食べさせられるし、それで」



「それで私に仕返ししようと私の実家に泊まると言い出したんですか?」



「うん」



「あのですね、ミレーナ様、世間から見れば、『自分のメイドが今までどんな生活をしてきたのか興味が湧いた』ということになるでしょうけど、あなたは王族なんです。自分の立場をわかって下さい。今後、こういうことをされてはダメですからね。」



「…………うん」

エミリーに言われたことでミレーナはしょんぼりしてしまった。



「エミリー、ちょっと言いすぎよ」



「たしかに厳しかったかもしれませんね。ですが、それをしっかりと出来るようになったミレーナ様は流石です。この村に来てからの話し方や立ち振る舞いは素晴らしかったですよ。仕えている私は誇らしかったです。頑張った甲斐がありましたね。」



「エミリー、本当?私頑張った?」



「はい、もちろんです。」



「やった。」



「ところでどうして私に仕返ししようなんて考えたんですか?」




「それはマリー先生がティアお姉ちゃんにやり返して困らせてやるって言ってたから」





そこにいる全員がマリーを見る。





「…………やっぱり」


「…………うん、そうだよね」



「わかりました。やはりマリーさんでしたか、心優しいミレーナ様がこのようなことをすることに疑問を感じていました。」



「ちょっと、あたしのせい?」



「知ってます?弟子は師匠に似るものなんですよ」



「いや、待ってエミリー、ここは話し合おう、ねぇ、ほら、あたし今、魔力切れで思うように動けないしさ」



「ではお話しましょうか?宴が始まるまで、じっくりと」



「ひぃ」



「ミレーナちゃん、助けて」



「ミレーナ様、いいですか?大人になると責任を持つになりますので、マリーさんを見てしっかり学んで下さい。」



「ティア、レオン」



「私にはどうすることも出来ないわ。そもそも自業自得」

「右に同じく」



「ほら行きますよ」



そして、エミリーはみんなを連れ、自宅へと帰ってきた。


「ただいま」



「エミリーおかえりなさい。」


ミレーナが前に出て、エミリーの両親に挨拶をした。

「改めまして、ミレーナ・ミストレアです。よろしくお願いいたしますね。」



「いえ、こちらこそよろしくお願いいたします。」



「立ち話もなんですので中にどうぞ」



「お邪魔いたします」



「お父さん、お母さん、手紙に書いたと思うけど、改めて紹介するね。こちらが自由の風のレオンさん、ティアさん、マリーさん」



「娘の命を助けていただきありがとうございました」



「なんとお礼を言っていいやら」



「ちょっと頭を上げて下さい、そもそもエミリーを危険な目に合わせてしまった私達にも非はありますので」



「いえ、助けていただいたのです。何かお礼を」



「いやお礼なんてそんな」



「そうですよ」



「あたし達も王族や他の貴族と繋がりあるから流石に手が出せないだろうなって油断してたのが原因だしね」



「ですが」



コホンとミレーナが咳払いをする



「私にとってエミリーは命の恩人なのです。お祖父様からもエミリーのご両親に褒美を取らせよとの命を受けております。エミリーをアレを」



エミリーはこの旅の間、持たされていた鍵がかかった重たい箱を両親の目の前に置く。



「ミレーナ様、これは一体」



「この鍵で箱を開けてみて下さい」



鍵を受け取り、開錠して箱を開ける。

その箱の中には大量の金貨や色とりどりの宝石や貴金属が入っていた。




ミレーナが立ち上がり、エミリーの両親に告げる

「アレックス・ミストレアの代理として、ミレーナ・ミストレアが伝えます。自らの命をかけ守ったエミリー・クラネス、その父、その母に褒美として、これを授与する。」



「ちょっとミレーナ様、私聞いていませんが」



「エミリー、前に渡そうとしたら、『自分には専属メイドという大役をいただきました。それで十分です』と拒否されてしまいましたので、では、ご両親に渡してしまおうとこの旅の前にお祖父様と決めました。」



「でも多すぎますよ。一生遊んでも余るくらいありますよね?」



「エミリー、私は国王の孫娘ですよ。本来であれば、名誉貴族にしても良かったのですが、マリー先生達とも相談した結果、今後、何不自由なく暮らせるようお金にしたというわけです。宝石や貴金属はお父様、お母様からのお礼です。」



「はい?3人は知ってたんですか?」



「まぁ」


「えぇ」


「最初、爵位を与えるとか、王都に家をプレゼントするとか言ってたからね。」


「いきなり爵位を与えられても困るだろうし」


「あれやこれや聞いてるうちに眩暈がしてきたもの」


「今後、何不自由ない暮らしが出来るようお金の方が嬉しいのでは?とオレ達が提案したら、こうなったよ。まぁここまでの大金だとは思わなかったけど」



「そうだったんですか?」



レオン達3人はコクリと頷いた。



「やはり爵位の方が良かったですか?」


ミレーナが聞くと、エミリーとその両親は全力で頭を横に振っていた。




「ではこちらを」



「ありがたく頂戴いたします」



大金を手に入れることになった両親は手が震えていた。



「あっみなさんお茶淹れますね」

慣れた手つきでお茶を入れてみんなに配る



「あのあたしの分は?」



「マリーさんは私と大事なお話があるので」



「えっ?」



「レオンさん、ティアさん、ミレーナ様をお願いしますね。では行きましょうか?マリーさん」



「流れてなかったの、さっきの」

マリーを連れ、自室に行き、扉の鍵を閉めた。



「あのお話というのは」



「気にしないで下さい。こちらの話なので」



「はぁ」



「あのみなさんにお聞きしたいんですが、エミリーに何があったんですか?手紙では簡単に書かれていただけだったので」




「えーとですね…」


レオンとティアはエミリーの出会いからミレーナのメイドになるまでのことを話した。


「…というような感じです」




「そんなことが…」



「本当にエミリーを助けていただきありがとうございました」



「いえ」



「その後、お城に呼ばれて専属メイドとして働き始め、今に至るという感じですね。」



「ミレーナ様、本当にうちの娘で良かったのでしょうか?」



「はい、メイドとして優秀で、私にとっては凄く頼れる姉のような存在ですね」



「今後とも娘をよろしくお願いいたします」



「はい、こちらこそ」




レオン達の話に区切りがついた頃、エミリーはマリーを連れて戻ってきた。

だが、マリーはまるで魂が抜けたような感じになっていた。



「エミリー、マリーさんに何かしたの?」



「ただの教育です。」



「マリー」

ティアは手を叩いて、マリーを現実に引き戻した。



「あれ、あたし何してたっけ?」



「エミリー、何したの?マリーの記憶が少し飛んでるけど」



「ミレーナ様の今後の教育方針について、じっくりと話し合っただけですよ、レオンさん」



「そう…なんだ」



「もうそろそろ時間ですね。村長達が宴を用意してくれているので、向かいましょうか?」



「あのみなさんにお願いがありまして」



「どうしたの?お父さん」



「頂いた物をすぐ近くの銀行に預けるのについて来てもらっていいでしょうか?家の中に置いておくのも怖いですし、こんな大金を持って外になんて怖くて出られません」



「あっ、うん、そうだよね。ミレーナ様、私からもお願いします。」



「いいですよ。」



エミリーの両親と共に近くにある銀行に行ったのだが、かなりの額に驚愕してしまった。


タイラントスネークの件で王都から応援が来るまでの間、王国騎士団の2人を銀行の警備に回すことになった。


警備にあたることになった騎士団員はミレーナ直々のお願いということもあり、かなり嬉しそうな顔をしていた。


後日、任務を終え、王都に戻った時に警備にあたった1人が同期の仲間達にこのことを自慢していた。


「任務お疲れさん」



「タイラントスネークが出たんだって?」



「あぁ、かなりデカかったぞ。まぁ俺達はミレーナ様の護衛で、倒したのは自由の風の3人だがな」



「知ってる。王都でもかなり話題になってたからな」



「流石、ミレーナ様の懐刀と言われてるだけはあるな。昔にも討伐されたらしいがかなりの被害が出たらしいし」



「あぁ、あんな化け物を3人で倒してしまうんだからな。味方で良かったと心の底から思ったよ。」



「で、お前はこの任務で何してたんだ?」



「どうせ、ぞろぞろ後ろをついて行っただけだろ?」



「ふふふ、よくぞ、聞いてくれた!」



「なにか活躍したのか?」



「あぁ、シルヴァスタ村にある銀行の警備だ!」



「ちょ、お前、ミレーナ様の護衛でどうして警備なんだよ?」



「全くだ。戦力外通告でも受けたのか?」



「ただの警備ではないぞ、ミレーナ様、直々に警備するよう命を受けたんだからな」



「なんだと!?」



「ミレーナ様直々!?」



「詳しく話そう。ミレーナ様の専属メイドのエミリーさんがいるだろ?」



「そのエミリーさんがどうしたんだ?」



「あぁ、ミレーナ様を身体を張って守ったことは知ってるよな?」



「もちろんだ。」



「俺達、騎士団の中でエミリーさんを尊敬していない人間なんていないくらいだ」



「あぁ、その褒美として、エミリーさんの家族に多額の報酬が支払われたんだ。」



「当然の話だよな。国王陛下の孫娘となれば」



「その額はわからないが一生遊んで暮らしても余るくらいらしい」



「マジかよ?」



「エミリーさんが言ってたと仲間から聞いた。で、当然、そんな多額のお金を家に置いとけないだろ?」



「エミリーさんって今は専属メイドとして働いているが元は庶民だっけ?置いておいたら盗まれるかもしれないな。」



「あぁ、それで村にある銀行に預けることになってな。ただシルヴァスタ村は田舎だからな。警備の面では不安があると銀行側からミレーナ様に相談したんだ。で、たまたま近くを警備していた俺に『王都から応援が来るまでの間、銀行の警備をお願い出来ませんか?』とミレーナ様にお願いされたわけよ。」



「マジかよ?」



「おいおい、一生自慢出来るじゃねぇか、それ」



「そうだろ?翌日、俺1人じゃ休めなくなるからってもう1人ミレーナ様に決めてもらったんだよ。誰だと思う?」



「わからねーよ」



「ヨハン師匠だ」



「そうか、ヨハン師匠か」



「若い頃、散々世話になったな。たしか今回の任務で騎士団を引退するんだっけ?」



「あぁ、だから最後の任務でミレーナ様の直々の命を受けれたことを喜んでたぜ」



「最後の任務で未来の王女様に直々に頼まれるとか最高の栄誉じゃねぇか」



「あぁ、あの人相当嬉しかったみたいでな、目頭に涙が溜まってたよ」



「だろうな。そういえばヨハン師匠ってこれからどうするんだ?」



「騎士学校の講師になることが決まってるそうだ。」



「ヨハン師匠教え方上手かったからな、かなり厳しかったけど」



「昔、散々しごかれたよな、おかげで今があるから感謝してるけど」



「王都に帰ってきて、別れ際に自由の風のレオンさんに試合を申し込んだみたいなんだよ」



「なぜに?」



「おそらくタイラントスネークが原因だろうな。滞在中にタイラントスネークの鱗を貰ったんだがかなり頑丈でな。ヨハン師匠ですら、傷すらつけれなかった」



「おいおいヨハン師匠って言ったら、居合斬りの達人だぞ?あの人ですら傷がつかないって!?」



「だからこそ興味が湧いたんだろうな。自分では歯が立たない相手に深傷を負わせる剣技に」



「見てみたいな。その試合」



「まだ発表はされてないが1週間後にやるらしいぞ」



「そいつは見てみたいな」



「心配しなくても強制参加だそうだ。今後もしタイラントスネークのような魔物が現れたら、大変だからな。」



「自由の風のレオン・アステール、クリムゾンドラゴンを一撃で倒し、ベヒーモス2体を同時に倒す実力の持ち主、しかもパーティメンバーの2人もドラゴンを単独撃破した上に、3人がかりならタイラントスネークですら倒してしまう程の実力か」



「面白そうだな。その試合」



「あぁ、楽しみだ」















時は戻り

銀行にお金を預け、ホッとしたエミリーの両親は宴のことを思い出していた。


「あっ、エミリー、私とお父さん、先に行って村長に知らせてくるわね。」



「では、ミレーナ様お待ちしております。」


エミリーの両親は村長達の元へ向かった。




「ねぇ、ティア、ワイン飲めるかな?」



「そうね、社交辞令として乾杯くらいならいいんじゃないかしら?」



「それだけ?」



「当然よ、護衛任務中だって忘れたの?」



「そうだけどさ」



「ティア、まぁ今日くらいはマリーにワイン飲ませてあげようか?タイラントスネークの結界魔法で魔力切れしたみたいだしさ」



「レオン…そうね、マリー、今日だけよ。」



「へっ?いいの?」



「ただし、飲み過ぎないでね。」



「やった、たらふく飲むぞー!!」



「マリーさん」

エミリーの手がマリーの肩に置かれる



「わかってますよね?」



「は、はい」



「一体、何を話したらあぁなるんだ?」



「ちょっと後でエミリーにマリーにどういう話をしたか、聞こうかしら」



「ティア、なんかマリーが可哀想になってくるから、やめてあげて」



レオン達が村の広場に着くと村人が全員集まっていた。


「ミレーナ様の到着だ」



「さぁ、ミレーナ様、こちらへどうぞ」



「では村長の私が挨拶をさせていただきます。ミレーナ様、冒険者パーティ自由の風のみなさん、遠いところはるばるお越しくださいました。冒険者パーティ『自由の風』、『烈火』のみなさん、タイラントスネークからこの村を救っていただき感謝致します。」



村人達から感謝の言葉と拍手が上がる。



「感謝の意味も込めまして、精一杯のご馳走を用意させていただきました。今宵はごゆっくりお楽しみいただければ幸いです。」



「では乾杯の音頭を取らせていただきます。みなさま、グラスはお持ちになりましたか?」



「それでは、ミレーナ様、自由の風のみなさんの歓迎、烈火のみなさんの活躍、自由の風のみなさんによるタイラントスネークの討伐、そして、この村の無事を祝しまして、乾杯」





「「「「かんぱーーーい!!」」」」」





そして宴が開催された。

飲めや歌えのどんちゃん騒ぎ

楽しい一時(ひととき)をレオン達は楽しんだのだった。

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