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おせっかい令嬢はハッピーエンドを目指します!~転生先は現代に似た異世界!?~  作者: 星降る夜
第1章

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44 書庫


 バレンタインデーには誰にチョコレートをあげるの?なんていう話題が幼稚園のクラスで飛び交っている。


 最近の幼稚園生はおませだぞ。


 葵ちゃんを始めクラスの女子からの視線が虎太郎君と翔君に飛んでいた。


 幼稚園児の頃からバレンタインデーにチョコレートをもらうなんて生意気な奴らめ。


 私はあげないつもりだ。


 東郷寺様と西園寺様のお顔を思い出す。お母様方が楽しみにしていらっしゃる。


 無理かぁ~~


 仕方ないからすみれちゃんを含め友チョコをあげる事にした。


 高島は先週から2週間の休暇に入ったからお迎えは本家の運転手が来る。


 他を回ってから来るので時間が大分あいた。最近は忙しいから一人の時間も悪くない。図書室で本を読みながらこの世界のことを考えていた。


 まさか虎太郎君と翔君と仲良くなるとは思わなかった。小説とはずいぶん違ってきたんだなぁ。


 小説は小学校に上がってからのお話が書かれていたから幼稚園の頃はエピソードや事件ぐらいしかなかった。


 小学校はどうなんだろう?お友達出来るのかな?


 「愛梨花ちゃん」


 突然声をかけられた、珍しい。


 顔を上げると、大きなリボンで髪を結んだお嬢様がこちらを睨んでる?


 確か南條 美香ちゃんだっけ、隣にはポニーテールの青空 葵ちゃん。


 「美香ちゃん?」

 「ふ~ん、覚えているだ。やっぱり覚えていないなんて嘘だったんだ」

 

 隣の葵ちゃんに目配せする。何、何?怖いんだけど。


 「虎太郎君と翔君に近づくのやめて」


 とげのある声で言ってくる。


 なんだそう言う事か。幼稚園でもあるんだね、こんな事が。


 向こうが勝手に近づいて来るんだけど何かむかつくからそうは言いたくない。


 「本人に直接いったら、私は近づいていないし」


 虎太郎君と翔君に遊ぼうって言えばすむ事じゃないの?私より長いおつきあいじゃないんだろうか?覚えてないけど。


 少なくとも私は11月頃からしか知らない。まだたったの三ヶ月。


 それまでは美香ちゃんや葵ちゃんと仲良くしていたのかな?そのまま仲良くしていれば良いのにね。


 割り込むつもりはないんだ。


 そこにもう一人女の子が走り込んで来た。三つ編みのおさげを両方の耳の上でクルクルと巻いてお団子にしている。この子は小島 弥生ちゃん?


 「言ってきた」

 「じゃあ良いね」


 美香ちゃんはそう言って私の手を引っ張った。


 「えっ?どこに行くの」


 本棚の横にあるドアを開ける。薄暗くて狭い部屋の中はよく見えない。


 ドンと突き飛ばされ中に入ると後ろからバタンとドアが閉まりカチャッと音がした。


 ドアが閉まると同時に真っ暗な部屋に取り残された。バタバタと遠ざかって行く足音。


 鍵をかけられた。これって、閉じ込められた?


 ふう~っ。やれやれ、幼稚園児とは言え色々考えるもんだね。


 真っ暗になった室内で大きくため息をついた。


 そのうちにお迎えが来るはずだからそれまで、どうしようかな?騒がなくても探しに来るはずだしね。


 取りあえず電気のスイッチがあるはず。


 大抵はドアの横の壁。目が慣れてくると暗くても少しずつ見えてくる。


 見つけたスイッチを押して電気を付けるとここは書庫だった。


 たくさんの本が所狭しと並べてある。


 すごい、パラダイスじゃない。


 最近は絵本や童話に飽きてきた所だったの。


 懐かしい、見てみると世界文学全集から、大学で勉強した心理学の本まである。


 ステップで上の本まで取って読み始めた。幸せかも!


 どのぐらいたったのだろうか?窓がないので時間の感覚がなかった。


 お迎えが思ったよりも遅い。


 本が読めるから別に良いんだけれど、お腹が空いてきたぁ~おやつ持ってくれば良かった。


 後悔先に立たずか、チョコレートあればなぁ……


 それでも本が面白すぎて読むのがやめられなかった。いつの間にかまた、夢中で本を読んでいた。


       ♢     ♢     ♢



 「愛梨花、愛梨花、起きなさい。大丈夫か?」


 誰かが呼ぶ声がする。遠くから聞こえていたようなその声が段々大きくなって目が覚めた。


 んっ~さぶい、ぷるっと震えた。


 寝てしまっていた?


 目の前にはお祖父様の顔があった。後ろには泣きそうな高島が居る。


 あれ?休暇中じゃなかったけ?


 「今日はお祖父様がお迎えですか?」


 まだ眠くてぼんやりした頭で聞くとお祖父様がクシャッと顔をゆがめた。


 「ああ、そうだ」


 お祖父様がギュッと抱きしめてきた。珍しい。寂しかったのかな?


 「大旦那様、私が運びます」


 見ると高島の手に私の幼稚園バッグがある。教室から持ってきてくれたんだ。


 「高島カバンをありがとう。カバンしょってく」


 高島は何も言わずにカバンを持ったまま抱き上げてくれた。歩けるのに。


 (暖かい)寒かったから体温の高い高島は丁度良い。


 「休暇は?」

 「終わりました」


 堅い声で言う。何だか機嫌が悪そうだ。


 「あれ?まだ1週間しかたっていないよ」

 「良いんです」


 お祖父様に休暇を短くされたのかな。それで機嫌悪いのか。


 高島の顔に両手を当ててほっぺたを外側に思いっきり引っ張った。


 変な顔だ。のしいかみたいだ。


 横でお祖父様が吹き出した。


 「笑ってね」


 こてっと首を曲げて高島を見た。みるみる眉尻が下がる


 「お嬢様ぁ~~~」


 げっ、やばい墓穴を掘った。やめて死ぬから。来ないで!


 頬を引っ張っていた手をパンとはなした。


 高島がぎゅうっとする前に高島の首に抱きついて回避する。


 色々技を覚えてきたのだ。


 えへへ


 「愛梨花ちゃ~ん」


 ん?虎太郎君?


 声のした方をみると虎太郎君が西園寺児様と見えている。忘れ物か?


 「あれ?どうしたの?」


 虎太郎君は走ってくると高島に飛びついた。


 「愛梨花ちゃんが帰らないって、愛梨花ちゃんのお祖父様から父様に連絡が来たからお迎えに来たんだ。僕が忘れて幼稚園に置いてきたみたいでごめんね」


 何だか言ってる事が支離滅裂だよ。泣きそうな虎太郎君を見たら何だか視界が曇ってきたよ。


 虎太郎君のせいじゃないけど虎太郎君のせいだし、訳わからないよ。


 お祖父様の顔を見るとバツが悪そうに西園寺様に謝った。


 「お騒がせしました。我が家の運転手から西園寺様の所へいったと聞いたもので」

 「いやいや、愛梨花ちゃんには息子がいつも世話になっているから心配していました。無事で良かった」


 西園寺様はそう言うと私の頭を撫でた。


 私の頭の中にはハテナマークが飛び交う。大事になっていたの?


 私のお腹がぐうっと鳴った。大きな音に赤面してしまう。


 ずっと飲まず食わずだったんだ。


 「おなかすいた」


 小さな声で呟くと、お祖父様を見る。


 お祖父様は安心したように笑った。



 


 いつも読んで頂いてありがとうございます。謎のバグは直ったみたいです。良かった。

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