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39 陰険メガネ


いつも読んで頂いてありがとうございます。


 私達はのんびりとパフェを堪能してからお部屋に戻った。


 お祖父様達は奥のお部屋で何やらお忙しそうだ。本当に大丈夫なのかな?奥様達もやきもきしているみたいだ。


 「僕、父様達の手伝いできるかな?」


 龍一郎君がお母様に聞いている。小学生なのに凄くお兄さんに見えてきた。出来る事なら私も手伝いたいけど私は幼稚園生なのだ。


 「心配しなくても大丈夫だってお父様が言ってたけど、様子を見てきてくれるかしら。邪魔にならないようにね」


 頷くと龍一郎君は奥のお部屋に行ってしまった。


 その後ろ姿を雪二郎君がうらやましそうに見ていた。


 退屈した虎太郎君が隣でカードしようとごねだした。


 手のかかる幼稚園児め。私だってお祖父様達の事は気になるんだ。


 小説では地震の被害のことばかりで詳しいことは説明されていなかった。


 ハイジャックの方は外国人の犯人だけどそちらの事なら少しわかるかも。小説情報だけどね。


 ハイジャックの方が早く片づけば、政府や警察ももっと地震の被害の把握に本腰が入れられる。


 それだけお祖父様達も助かるって事だ。


 よし、愛梨花ちゃんが解決しちゃうよ!


 ただ月光院家や西園寺家には関係が無いからお祖父様達じゃ手の打ちようがない。


 警察とかだけど……


 思考を巡らせて考える。


 おっと!いるじゃないですか、ピッタリな人間が。


 顔を上げると、思わず拳で手のひらを打った。


 虎太郎君のお母様に聞いて見る。


 「あの、運転手の高島は何処にいるかご存じですか?」

 「あら、スタッフは皆さん本館でお食事されたと思うわ」


 お母様が腕時計を確認された。


 「この時間ならラウンジにいるんじゃないかしら。待ってねうちのスタッフに聞いて見るから」


 お母様が携帯で確認して下さった。


 高島は今はホテルのラウンジにいるとの事だ。


 待っててね!今、行くから。


 虎太郎君のお母様が一人で行くのはダメだと、用心棒に虎太郎君を連れて行きなさいだって。


 虎太郎君は用心棒にはならないと思うんだが。


 チラッと雪二郎君を見る、おっと、目をそらされた。ここに居たいみたいだ。


 虎太郎君がしっかりと手をつないできた。行く気満々だ。仕方ない連れて行くか。


 虎太郎君に引っ張られてラウンジまで迷わずにやって来た。虎太郎君は方向音痴じゃ無かった。


 ラウンジはライトの光を落としていて昼間とは違い落ち着いた雰囲気になっていた。人は殆ど居ない。この時間はバーの方が混むみたいだ。


 窓側のゆったりとした一人がけのソファーに高島が座って新聞を読みながらコーヒーを飲んでいる。


 見つけた、おやすみのところすみません。虎太郎君と二人で走り寄った。


 高島はこちらを見ると嬉しそうに眉尻を下げた。久しぶりな気がする。今朝ランニングですれ違って以来かな?


 「おや、どうしました」

 「お祖父様達にお願いされた事があって、聞いてくれる?」


 高島は呼んでいた新聞をたたんで脇に置いた。


 「大旦那様ですか?もちろんです」


 大きな一人がけのソファーだけど高島が座ると窮屈そうに見えるから不思議だ。


 私は遠慮無く高島の膝によじ登ろうとして抱き上げてもらった。


 隣に虎太郎君が窮屈そうに割り込んできた。オイオイ狭いよ。


 「あのね、ハイジャックの犯人の情報が信用できる先から入ったから警察の知り合いに伝えて欲しいって」


 私はいっきに言うと高島の顔を伺った。動いてくれるかな?


 「警察の知り合いですか?そうはいってもコンタクトできる奴はいるかなぁ~~」


 高島は目をつむって考え込んだ。


 「陰険メガネ?とかは?」


 高島が何かいつもぶつぶつ言ってた気がする。


 「いましたね。そんなやつが、やっかい事が好きそうでしたよ」


 高島と目が合う。何だか嬉しそうだ。笑顔が黒い。


 隣で虎太郎君が”陰険なメガネ?”とつぶやいているが今は放っておこう。

 

 「今から言う事を伝えてね、メモしてくれる?」


 高島が胸元から手帳を出した。よしよし準備OKだね!私は知っている事を話した。


 犯人は自爆すると言ってるけど虚言な事、アメリカに収監されている仲間の釈放と自身の保護を訴えているはず、そのリストの中に実はある人物が入っていて、一見重要で人物では無いが実は凄く重要人物な事、その人物は女性でローズ ブラックと名乗っているけど偽名であるはず。ハイジャックの真の目的は彼女の釈放。


 犯人も知らない黒幕はある国の皇子。確か18皇子だったか……ちなみにキャビンアテンダントの中に仲間が居る。腕に蛇のタトゥーが入っている。そのぐらいだけど大丈夫かな?


 そこまで言うと高島が感心したようにペンを置いた。


 「大旦那様の情報網は凄い……」


 放心したように手帳を見ていた。実は私だけどね。


 「愛梨花ちゃんのお祖父様はエージェントみたいだな」


 虎太郎君も言う。珍しく途中で茶々を入れなかった。この手の話が好きみたいだ。


 感心したように私を見る。ん?お祖父様にでしょう?感心しているのは。


 「電話してみないの?」


 高島は周りを見渡すと困ったように言う。


 「ここじゃちょっと、部屋に行きましょう」


 三人で部屋に戻るとリビングはがらんとしていた。皆さんで奥の部屋に入ったみたいだ。さっきは私達幼稚園児に遠慮していたんだね。


 入り口の横にある高島の部屋に入ると鍵をかけた。誰も入ってこないとは思うけど用心のために。


 ”電話に出るかな”高島がつぶやきながら電話をかけると陰険メガネは意外にもすぐに電話にでた。


 「高島です。情報がありましてお伝えしたいんですが」

 ”はぁ!嫌がらせか?今忙しいんだ!”

 「待ってください、ハイジャックの件です」

 ”どこ情報だ?”

 「東郷寺様と月光院様からです」

 ”場所を変えるから待て”


 それから高島が私から聞いた事を話した。


 高島の部屋にはベッドが二つあって虎太郎君と一緒に跳ねたり枕を投げたり遊んでいた。虎太郎君の方が身体も大きいし体力もあるから私の方が不利だ。枕が飛んでくると高島の影に隠れた。


 高島を盾にしながら遊ぶのは面白く、高島は電話を片手に空いている方の手で枕を防いでいた。なにげに上手くかばってくれるし、やるじゃん高島!


 遊び疲れて、いつの間にか虎太郎君と寝てしまった。


 気がつくとお祖父様と一緒のお部屋で虎太郎君も高島も居なかった。


 もう朝?何だか身体がだるかった。遊びすぎかなぁ。ぼんやりとしているといきなりお祖父様と目が合った。


 「起きたか。おはよう」


 お祖父様が私の顔を覗き込んでいた。


 「ん……まだ眠い」


 お布団の中に潜り込む。ベッドがきしんでお祖父様が横に座ったのがわかる。


 お布団の上からお祖父様がポンポンと叩いた。


 「愛梨花、昨日何かしたか?」

 「何もしてない」


 モゾモゾとお布団の中を芋虫みたいに移動する。まだ寝ていたい。

 

 「朝食だよ、起きなさい」


 お祖父様は笑いながら布団を剥いだ。寒いんですけど!

 目をこすりながら起き上がるとお祖父様がポンと頭に手を置いた。


 「昨日高島に何か話したか?」

 「うん」

 「どうして先にわしに言わなかった」


 ん……あの状況じゃ言えないと思うんだけど。お部屋に籠もりっきりだったし。


 「忙しそうだったから」


 お祖父様は苦笑する。ですよね。


 「もしまた何かあればわしに言うんじゃ。わかったな」

 「うん」


 そうそうそんなことはないと思うけど頷いておいた。


 覚えていたらねお祖父様。


 








 評価して頂いた皆様本当にありがとうございます。続けて読んで下さると嬉しいです。よろしくお願いいたします。

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