22 暖炉でマシュマロ焼くよ!
お祖父様に駆け寄ると抱きついた。私が甘えるのが珍しいみたいでお祖父様が顔を覗き込んだ。
「どうした?」
「何でも無いんだけどお願いがあって」
お祖父様は笑いながら抱き上げてくれた。
「言ってごらん」
「高島にいつも迷惑かけているから、明日は一緒にご飯食べたい」
「この間みたいにかい?」
私が頷くと頭を撫でてくれた。
「どこのレストランに行くかな?」
私は嬉しくてお祖父様に抱きついた。
「ありがとう」
龍一郎君が横に来た。
「皆でサプライズしようか?」
ワォ~それは嬉しい。高島腰抜かさないかな?
「お祖父様、以前お世話になっているので良いでしょうか?」
龍一郎君が東郷寺のお祖父様にお伺いをたてた。この間の誘拐の時の話かな?
「勿論じゃとも、明日は山の上のリストランテに予約を入れているから席を増やしておこう」
お祖父様と顔を見合わせた。良かった。ところで虎太郎君と翔君も来るのかな?
今日は別荘のコテージでビュッフェスタイルのディナーだ。お寿司の板前さんまで来ていて好きな物を握ってくれた。
虎太郎君のご両親と翔君のお父様が大きなクリスマスケーキを持って来られた。3段ののイチゴショートケーキだ。
やったあ!心の中でガッツポーズをする。
虎太郎君のお母様と目が合った。ウインクされた!お見通し!?
頬がほてってきた。32歳としては恥ずかしい……
虎太郎君と翔君はご家族が合流して嬉しそうだ。妙にはしゃいでいた。
早速もみの木の踊りを披露して、聖夜の合唱もお聴かせした。
龍一郎君がクリスマスソングのメドレーをピアノで弾いてくれた。
リサイタルみたいですてき!
今度はこの階段でミュージカルみたいにやってみたい!ドレミの歌とか良いよね、きっと!
ダイニングに移るとパーティーの始まりだ。東郷寺のお祖父様がシャンパンを開けてタワーになったグラスの上から注いだ。
これが噂のシャンパンタワー?いいなぁ……
子供達はアップルサイダーだって。
男の子達はローストビーフに群がっている。私はお寿司も食べるんだ。サラダも食べたい。人参のドレッシングが美味しそう。
素敵なクリスマスパーティー。
いつの間にかまた雪が降り始めて、ライトアップされた中庭に光を反射してキラキラ舞っている。ダイヤモンドダスト?
雪二郎君がチョコレートフォンデューの所から大きなマシュマロをお皿に入れて持ってきた。
「あっちの暖炉で焼こうね」
2人でこっそりと会場を抜け出して暖炉のあるリビングに移動した。
割り箸にマシュマロを刺して暖炉で焼くと周りが焦げてとろりとなった。カラメル味がして美味しい。
「美味しいね」
雪二郎君を見ると嬉しそうに笑った。
「でしょう!」
得意げに言う雪二郎君が可愛い。
それから学校でのことなどを教えてもらった。
そう言えば私立の学校へ行くのに受験していないけど、私はどこの学校へ行くんだろう?
「どこの学校へ行くのか知らないの」
「たぶん一緒だと思うよ。皆来るから」
次のマシュマロを割り箸に刺しながら、何でも無い事のように雪二郎君が言う。
そんな物なのか?まっ両親が何か考えているから良いか。
パチパチと燃える薪を見ているのは飽きない。
雪二郎君は穏やかで、のんびりとしたこんな時間も悪くない。
「あっ!愛梨花ちゃんずるい!」
向こうの部屋から虎太郎君と翔君がこちらに向かって駆けてきた。幼稚園児の来襲だ!
思わず雪二郎君と顔を見合わせた。静かな時間も終了だ。
「明日はそり遊びしようよ!裏山で出来るってさっき龍一郎が言ってた」
虎太郎君が偉そうに言う。
暖炉の前で翔君が持ってきたカードゲームをしながら最後に二人にクリスマスプレゼントを渡した。
ただの靴下だけどね。
嬉しそうに笑いながら来年はプレゼント交換をしようと虎太郎君が提案してきた。
どこでクリスマスを過ごすかわからないけど三人で約束したら龍一郎君と雪二郎君も参加したいって!
嬉しい!お兄様も来たら良いのになぁ……
明日も来るなら泊まっていくと、ごねる虎太郎君と翔君はご家族に回収されて帰って行った。
君達の面倒は見切れないよ!こちとらおじいちゃん達しかいないんだからね!
おじいちゃん達は後ろのロッキングチェアーに揺られながらいっぱいやっている。
時折溶けた氷がカランと音を立てた。お二人ともほろ酔い中だ。
暖炉の前に大きなビーンズクッションがあって、東郷寺の兄弟と座りながら中庭を眺めている。
先ほどから本降りとなった雪がしんしんと降っている。
クリスマスイブの夜は静かに更けていった。