表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/126

16 お誕生会はハードボイルド?


 あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。


 前世でお誕生会と言えばお友達の家だったのだけど、ここは高級ホテルの最上階。


 ガラス張りの窓からは、遙か眼下に街が広がっている。


 (何だか場違いな気がする……)


 お兄様とこんなに長く一緒にいるのは初めてで。お兄様は一言も喋らない。気まずい……


 会場は立食パーティーになっていて殆どは龍一郎君の同級生やご親戚。雪二郎君のお友達もいらしているみたいだ。


 龍一郎君の周りには女の子達が群がっていてとても近づける様子ではなくて、雪二郎君の周りも同級生と覚しき子供達がたくさんいる。


 お兄様にもお友達が先ほどから挨拶に来ていた。女の子達の視線も刺さる。


 完璧お邪魔虫だ……私……


 お兄様の袖を引っ張る。


 「私、用事思い出したから帰らなきゃ、プレゼント渡しておいてね」


 お兄様にプレゼントを押しつけた。


 「あのな、来たばかりで帰るって、我が儘言うな」


 もの凄く嫌そうな顔で見られた。そんな顔見たくない。思わず走って会場を後にした。


 「あっ?おいこら!」


 お兄様の声が聞こえたけど無視を決め込んだ。駐車場に行けば高島が居るに違いない。


 ちゃんと漢字だって読めるし、32歳大人だし、来た道わかるからね!えっへん!

 

 (何ここ……)


 しかし、地下駐車場は広かった。オイオイ、これじゃあ車が何処にあるのかわからない。


 (どうしよう……)


 車のナンバーまでは覚えていない。仕方ない1度フロントに戻って呼び出しして貰おうか。


 エレベーターのボタンを押して待つことにした。この時間他には誰もいない。


 今日は貸し切りに近いんだろうな。クリスマス会もあるし。


 その時突然、キ、キィーと急ブレーキの音が地下に響いたと思うと黒塗りの車がとまって男達が3人降りてきた。


 マスクにサングラス、黒色の服に黒い帽子。銀行強盗みたいな出で立ちだ。怪しすぎる。


 2人で1人の具合の悪そうな人を支えている。エレベーターの扉が開くとさっと乗り込んで急いで扉を閉めようとしたので滑り込んだ。


 1人がむっとした表情で睨んできた。サングラスでよくわからないけど。雰囲気が……ね。


 19階が押してある。


 「駆け込み乗車は危ないよ、何階?」


 もう1人が言う。


 「19階です」


 男はエレベーターのボタンを見ながら怪訝そうにもう1人を見た。


 「偶然だろ」


 男がつぶやいた。


 19階に着くと先にエレベーターから降ろされた。


 慌てて転んだ振りをしてどの部屋に入ったかを見届けた。1907号室だ。


 何も無ければ良いんだけど私の中で警報が鳴っている。小説に何か出てきたかまでは覚えていない。見過ごせるかどうかしばらく悩んだ。


 よし!きめた。


 顔を上げるとエレベーターの横のコーナーにある電話を取った。フロントにつながるはずだ。


 「1907号室ですがトイレットペーパーがないので3つ持ってきて下さい。焦って廊下に出たら部屋閉め出されちゃったんで至急頼みます」


 電話を切ってしばらくするとエレベーターからホテルのスタッフと高島が降りてきた。


 「お嬢様、見つけました」


 高島が抱き上げるので、耳元でホテルの人の後に黙ってついて行くようにお願いした。


 高島はまたかと言うように頭に手を置いたけど急いで後について1907号室まで来てくれた。最近私の行動に慣れてきたみたいだ。


 「ここですか」


 ホテルのスタッフが確認するようにこちらを見るから頷いた。


 トイレットペーパーを1個持ってあげた。。


 それからマスターキーを使って部屋のドアを開ける。


 もし違っていたら東郷寺のお祖父様ごめんなさい。


 祈るように中を見ると、今まさにぐったりした人を椅子に縛り付けてる最中だった。


 拷問?!!!


 「ま、間違えました」


 ホテルのスタッフが慌ててドアを閉めた。


 皆で黙って顔を見合わせた。いまのって一体……


 急いでエレベーターの前まで移動すると、青くなって震えているホテルのスタッフに高島がすぐに警察に連絡するように指示を出した。


 それから非常階段のドアを19階だけロックして貰った。これで出口はエレベーターだけになる。


 私の役目は終了だね。出来る事はここまで。


 「帰りたい」


 高島が困ったように私を見た。大きなため息をつくと私の頭に手を置いた。


 「一緒にいますから、警察に事情を説明したら帰りましょう」


 途中で全てを放り出して帰る訳にはいかないみたいだ。仕方ないか。

 それから高島に一通り説明をした。後でかわりに説明して貰うから。


 高島が言うには、私が会場を出た後にお兄様から連絡が入って急いで私を探したらしい。


 ホテルの防犯カメラの映像から、怪しい男達とエレベーターに乗っているのを見た時は”肝が冷えた”と言われた。


 ”もう2度としません”と約束させられた。今度からお嬢様にGPS付けるかとかぶつぶつ言っている。何だかそれはイヤかも。


 ハードボイルドは苦手なんだ。ドロドロも好きじゃ無いけど、怖いのは見られないの。テンション下がりまくり。高島のクビに抱きついた。


 「スリルとサスペンスは嫌い」

 「お嬢様は難しい言葉使いますよね」


 と感心された。これのどこが?


 ホテルの出入りは制限されて19階は封鎖された。次々と警察の人がエレベーターから現れて、高島に様子を聞いている。知り合いのお巡りさんも居るみたいで他で待機をお願いしますと言われた。


 廊下はあきたし、銃撃戦になったら怖い!


 案内されたのはホテルのスイートルーム。すでに東郷寺のお祖父様がいらっしゃった。


 事件発生はお誕生会が行われているから、まだ皆にアナウンスされていないらしい。クリスマス会は中止にするとの事だった。


 おおごとになっている!私のせい?


 東郷寺のお祖父様に駆け寄った。


 「ごめんなさい」

 「何を言っているんだ!君のおかげだよ。大事がなくて良かった」


 そう言って私を抱きしめてくれた。


 「愛梨花ちゃんはトラブル続きだね。ところで何を握りしめているのかな?」


 胸元を見ると、トイレットペーパーを抱きしめていた!忘れてた!


 「高島、プレゼント」


 取りあえず潰れたトイレットペーパーを高島にあげた。


 東郷寺のお祖父様が笑いながら抱き上げてくれた。


 安心したらお腹がぐうっと鳴った。


 「しばらくはここから動けないから何か用意させよう」


 そう言って東郷寺のお祖父様が何処かへ電話すると、さっきのパーティー会場で見ていたのと同じ様なお料理が、ルームサービスで運ばれてきた。


 美味しそう。デザートもちゃんとある!


 下の階ではお巡りさん達が頑張っているのに、こんなにのんびりしていて良いのだろうか?


 今はお誕生会に参加した子供達を順次帰宅させているとの事だった。


 全員が帰宅したら龍一郎君やお兄様もここに来るそう。お誕生会大変になってしまったね。


 高島や私は事件とは関わりが無い事になっているからと念を押された。そう言えば誘拐未遂事件も極秘扱いらしい。


 お祖父様と高島が話し込んでいる。聞きかじった情報によると、お金のトラブルがこじれた事件らしい。


 どちらにせよ幼稚園児には詳しいことは教えてはくれない。


 のんびりご飯食べようっと!




 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ