15 お祖父様とデート!
家に帰るといつものお医者様が頬の傷を見てくれた。
痕にはならないでしょうとの事でお母様がほっとしていた。
その後に幼稚園から連絡があり、私の衣装が園庭のゴミ箱から出てきたとの事だった。
連絡が来た後はお母様がお怒りモードだった。
何でも”お宅のお嬢様は記憶が戻っていらっしゃらないのでこんな事もあるんですね”とまるで私が捨てたみたいに言ってたらしい。
その先生は誰なの?と聞いたら何と園長先生だって!これは誰か先生絡んでいて、保身に走ったね。間違いない。
もう終わったことだから衣装さえ戻ってくれば良いと思うの。前に愛梨花が何かやらかしていたのかも知れないから、自信ないしね。
お母様にはもう忘れたいと言っておいた。
その代わりと言っては何だけど、クリスマスに東郷寺様から軽井沢に誘われたお話しをしたら、もうお祖父様同士で決めていたみたいで、行っても良いって!
やったあ!憧れのホワイトクリスマス!お兄様も行くかな?
そうそう、忘れたらいけないのが龍一郎君の誕生日プレゼント!お誕生会に行くんだ。お兄様はどうするんだろう?聞いて見なくちゃ。
お母様に相談すると、手作りが良いのではないかって。確かに幼稚園生では買い物しないからね。
プレゼントは最近お得意のクッキーに決めた。
目指すは、四角い缶におしゃれにいろいろ入ったクッキー缶。
まずはスケッチブックにイラストを描いていく。
前に作ったクマさんの型抜きクッキーに星型クッキー、すきまをうめるメレンゲはイチゴパウダーで赤くして、どうかな?
早速厨房のスタッフに絵を見せて打ち合わせる。5歳の絵ではよくわからないみたいで大体のイメージを伝えて終わってしまった。5歳の私は絵がものすごく下手だった。
前日の22日は幼稚園の最終日。終業式が終わったら急いで帰ってクッキー作りに励みます。
23日のお誕生会が終わったら次の日には軽井沢にGo!クリスマス楽しみ!
終業式の日にすみれちゃんとクリスマスの過ごし方を話していた。
すみれちゃんの家では、お母様がチキン焼いてビーフシチューを作って、お父様がケーキを買って帰ってくるんだって!年末からはオーストラリアに行くそう。楽しそう!
「僕達、ハワイの出発は年末からになったから」
虎太郎君が前の席から振り向いて突然会話に入ってきた。君には聞いてないんだな。
「クリスマスはどうするの?」
優しいすみれちゃんが相手をしてあげる。
「あっ軽井沢に行くんだ。うちの別荘あるんだ。愛梨花ちゃんも行くんだろう?遊んでやってもいいぞ!なっ翔」
What!何だと!
「えっ!そうなの?でも軽井沢も広いからね…会えればラッキーだね!」
引きつった笑顔で言うと
「実は遊びにおいでって東郷寺様が……」
翔君が笑顔で言ってきた。君達押しかけてくるんだね。クリスマスまで幼稚園児の相手なんかイヤなんですけど。これはお兄様方に任せるか……
ところでクリスマスケーキ、我が家はどうなっているんだろう?忘れてた!
家に帰ると、千鶴にクリスマスはいつもどうしていたのかを聞いてみた。
なんと寂しいクリスマスだった。
お父様は会社のクリスマスパーティーで遅くなり、お母様はクリスマス商戦の真っ只中で殆ど家にいなくて、お兄様は私と二人なんてイヤだと本家の従兄弟達と過ごしていたらしい。私も小さかったし我が儘だったから仕方ないのかもしれないけど……
エントランスにある立派なクリスマスツリー。豪華なツリー、ライトがむなしく点滅している。
よし!今年からは楽しいクリスマス過ごすぞ!!!
さっそく家族にクリスマスプレゼント買いに行きたい!
執務室で忙しそうに書類を整理している寺森を発見。
「クリスマスプレゼントを買いに行きたいの。お小遣ちょうだい」
寺森は銀縁の眼鏡を右手の中指であげると机の引き出しから金色のカードを取り出した。
「これでお買い物できます。お嬢様でも使えるので高島に案内させましょう」
実は、月光院グループ系列のデパートがあって、そこ専用のカードをらしい。
手に渡された金色のカードがピカピカ輝いて見えた。何でも買えちゃうんだって。
「ありがとう」
魔法のカードだね!寺森から魔法のカードをゲットした。
お礼を言うと急いで着替えて厨房に向かう。クッキー作らなきゃ。
夢中でクッキーを作っているといつの間にか辺りが暗くなり厨房が慌ただしくなってきた。お夕飯の支度が始まったんだ。
いけない、もう夕方だ。慌てて高島を呼び出した。
よし、頑張るぞ!気合いと共に高島とデパートに繰り出す。
着いてビックリ!普通のデパートなのかと思ったらデパートじゃ無い!
大きな時計台のある3階建ての建物で中庭が12月から2月まではスケートリンクになっている。それ以外の時は公園になっているらしい。
建物の中には高級ブティックがいくつも連なっていてジュエリーストアーもあるよ。
私が固まっていると高島が声を掛けてきた。
「お嬢様は何が欲しいのですか?」
サプライズにしたかったんだけどしょうがないか……
「靴下とハンカチ。私のお小遣いで買うからここじゃ無理かな。でもこのカードはここしか使えないの?」
「そうですね。他のは持ってきていないので」
「高島、お祖父様に電話できる?」
「大旦那様ですか?番号はわかりますが出られるかは?」
「電話してみてくれる?」
高島が携帯で電話をするとこちらに携帯電話を渡してきた。
「あっ、モシモシ、お祖父様?愛梨花です。今デパートにいるのですがお祖父様とデートしたくてお電話しました」
”おっ、愛梨花ちゃんか、嬉しいな。今すぐ出るから待つのは大丈夫かな?”
「えっ!直ぐですか?本当!嬉しいです」
”1人ではないな?”
「高島が居るから大丈夫です。あのぉ~お友達のクリスマスプレゼント一緒に選んでもらえますか?」
”もちろんじゃよ。じゃあ高島に代わってもらえるかな?”
「やったあ!待ってます。今代わりますね」
それから高島に電話を渡した。お祖父様と待ち合わせ場所を決めたみたいだ。来るまでジェラードを食べながら待っていた。お祖父様を見つけると走って行って抱きついた。お祖父様は嬉しそうに頭を撫でてくれた。
「お祖父様とデートできるなんてすてき!」
お祖父様は破顔した。
「帰りにはクリスマスディナーを予約しておいたぞ」
「嬉しい!ありがとうお祖父様!」
お祖父様にしがみつくと抱き上げてくれた。
「何処へ行きたいのじゃ?」
「靴下がたくさん売っているお店に行きたいの。後、お金持っていなくて……」
「そんなことは心配せんで良い」
高島が近くのショッピングモールの靴下屋さんに連れてきてくれた。
お友達と高島や寺森、千鶴に厨房の皆に靴下を買う。クリスマスラッピングをして貰うとクリスマスカードも買ってお母様とお兄様にはハンカチを、東郷寺のお祖父様達にもハンカチを買った。
お父様とお祖父様にはネクタイを買うつもりなのだけれどもお祖父様は今日も和服だ。
「お祖父様にネクタイを選びたいの。お洋服は持っているの?」
「おおそうか!ではついでに洋服も選んで貰おう」
最初のデパートに戻ると、お祖父様と2人でキャッキャ言いながらお洋服を選んでいたら、店員さんに恋人みたいに仲良しですねと言われて、お祖父様の財布のひもが消失した。
それお世辞だから!乗せられちゃダメな奴!
クリスマスディナーは高島も一緒にテーブルに付いた。
私が今日は高島のおかげだとお祖父様に言ったら、お礼に誘われたのだ。お祖父様は、今日とても楽しかったんだって!
レストランは夜景の綺麗なビルの高層階で照明が落ちていてムーディーな雰囲気。
入り口に、小学生以下はご入店はご遠慮下さいと書いてあった。
お祖父様の顔を見たらうちの系列だから大丈夫だって。でも気まずい……高島の影に隠れていよう。
テーブルに着くと嫌いな物をどんどん高島のお皿にのせていく。高島は気付かずニコニコ食べている。
便利だ!高島が”食べても食べても減らない”と言うから、”魔法のお皿だね!”と教えてあげた。
お祖父様がまねをして、ひょいと人参を高島のお皿にのせたのを見た。相変わらず気付いていない。
お祖父様と目が合って笑った。
高島は”美味しい、美味しいです。”と感激しながら食べていた。
高島、君は2人前は食べたんじゃ無いだろうか?食後にはいちごのパフェが出てきた。
もちろんパフェは完食した。
クリスマスケーキの話をしていたらお土産に急遽シェフがホールのクリスマスケーキを作ってくれた。
お土産まで出てきて幸せ!
帰りの車で”お祖父様と別れたくない”とごねたら、お祖父様をお持ち帰りする事になった。
入り口で寺森があたふたしている。
何故かお父様もお母様もその日は早く帰ってこられた。やれば出来るじゃん!
リビングでお祖父様と一緒に、皆へのプレゼントをラッピングしたり、クッキー缶の作成やクリスマスカードの作成まで手伝って貰った。
いつの間にか寝落ちしていて、気がつくと朝になっていた。
ベッドのサイドテーブルには、昨日作ったプレゼントとクッキー缶、クリスマスカードが全部置いてあった。
お祖父様、実はサンタさんだった?
いつも読んで頂きありがとうございます。もうすぐ今年も終わりますね。来年からは更新がゆっくりになります。またよろしくお願い致します。よいお年をお迎えください。




