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第十六話 エルフの国に入った

 信長達も、もともと行く当ては無かったのでこの行商人達に同行できないか聞いてみた。


「俺たちか?俺たちはこれから神聖エーフ帝国に行くんだよ。この荷物を納めに行くんだ。まあ、エルフの国は身分証が無くても入れるから連れて行ってやってもいいぜ」


 話を聞くと、人が犬や猫に身分証の提示を求めないように、エルフにとっては惰弱な人族の身元を確認する必要を感じないらしい。荷物の確認と目的地を示す書類だけで入れるそうだ。


「ただし、連中の国じゃ人族の人権はないからな。理由も無く殺されたりすることは無いだろうが、何かやらかしたらどうなるかわからないぜ」


 こうして、行商人達と行動を共にする事になった。


 ――――


 そして2日後、神聖エーフ帝国との国境に到着した。


 そこには大きな検問所があって、荷物検査のため馬車が列をなしていた。と、その中に、人の子供を30人ほど乗せた馬車があった。その馬車には鉄格子がはめてあり、子供たちが逃げられないようになっている。そして、糞尿の臭いをあたりに漂わせていた。


「なあ、おっさん、ありゃ何だ?」


「ん、あれか?ありゃ奴隷だな。朝貢品だよ。帝都の人族領事館に運ばれて、きれいに洗われてからエルフどもに納品されるのさ」


「・・・あの子達が奴隷?ひどい・・・」


 これまでほとんど話をしなかったガラシャがぼそっとつぶやいた。


「何なの・・・この世界・・・ありえない・・・」


 21世紀の日本人の感覚では、そう思うのは当然なのだろう。しかし、戦国時代を知る信長にとっては、それほどおかしな事では無かった。食うに困るような世界では、生産性の無い子供はお荷物になるケースが多々ある。おそらく、親に売られたのだ。


 史実の日本でも、昭和初期まで娘の身売りが行われていた。ここまで酷いのはヨーロッパ人が行った奴隷貿易くらいだろうが、これに近いことは貧しい世界のどこにでもある風景だった。


「おっさん、あれがエルフか?」


 検問所では、美しい金属製アーマーに身を包んだ長耳の男達が荷物と書類の確認をしている。皆金髪で美青年だ。


「エルフ族ってのは、あんな感じの美形揃いなのか?」


「ああ、それがエルフ族の特徴さ。だから、醜くひ弱な人族は嫌悪されるんだよ。まあ、そこのあんちゃんなら対抗できそうだがな」


 行商人はそう言って蘭丸の方を見た。信長も、たしかに蘭丸なら十分に対抗できるだろうと思った。しかし、行商人の蘭丸を見る目がちょっと気持ち悪い。


 荷物と書類の検査が終わり、信長達は問題なくエーフ帝国に入ることが出来た。


「じゃあな、おっさん、助かったぜ!あとは適当にするわ!」


「しかし、いいのか?当ても無いんだろ?この国を出るときは、手形はいらないんだが、時々素っ裸にされるからその覚悟だけはしておけよ。奴隷の入れ墨が無いかどうかの確認だ。奴隷が時々逃亡するからな」


 ――――


「なんであの行商の人たちと一緒に行かないのよ?この国じゃ、私たち人権無いんでしょ?」


 ガラシャが不満そうな顔を信長に向けた。野盗との戦いから数日が過ぎて、やっとガラシャも話をするようになってきた。


「どこに行ってもこんな世界じゃ人権なんて無いだろ。それより、人族の奴隷をどう使っているのかを知りたいからな」


「なるほど。行商人も奴隷がどう扱われているかは詳しく知らないと言っていましたしね」


 蘭丸が頷く。


「それに、人目に付かないところで魔法の練習もしてみたいしな。魔力の流れを感じることが出来たから、簡単な魔法くらい出来そうな気がするんだよ」


 森の中に、少しだけ開けた場所を見つけた信長達は、そこで魔力の練習を始める。


「魔力の流れのような物は感じるんだが、ここからどうやって魔法を出すんだろうな?」


 信長は、魔力の流れをつかむことは出来るようになったが、そこからの魔法の出し方がわからなかった。「ファイヤーボール!」とか「アイスランス!」とか叫んでみてもなにも起こらない。


「魔法をイメージすることが重要という話を聞いたことがあります。魔王を倒した後、死者の魂が集まる地を目指して旅をする魔法使いの話では、イメージ出来ない魔法は使うことが出来ないと言っておりました」


 力丸は読んだマンガの話をするが、そのイメージがそのまま実現するようなことは、残念ながら無かった。

次回更新は、27日の朝予定です

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