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第十一話 野盗が出てきた

「これは、血のにおいだな・・・」


 集落に近づくに従い、その臭いはだんだんと強くなっていった。耳を澄ませば、男達の下卑げひた笑い声が聞こえてくる。


「信長様、これは・・・・」


 蘭丸が信長に言葉をかけた。その目は鋭くなり、すでに戦闘モードの表情をしていた。


「ああ、これは野盗だろうな」


 この世界に来て初めての集落だが、この臭いと下卑た笑い声には記憶があった。戦国時代の初期においてはよくあることだったのだ。


 5人は林の中に身を隠して、集落の様子をうかがった。そこには、動物の革で作られたと思われる貧相な鎧を着た野盗達が、家屋から服や食料を運び出していた。そして、その周りには数名の死体が転がっている。服装からして、おそらくこの集落の住人だろう。女や子供の死体も確認できた。


 野盗達の姿は、白人系のような感じもするが中央アジア系といえなくも無い、オリエンタルな雰囲気のする人種だった。村の建物は、少なくとも和風では無い。ここは少なくとも日本ではなさそうだ。


「胸クソの悪い連中だ。じゃあ“ヤル”か」


 信長はそう言って立ち上がる。それに従って蘭丸達三人も立ち上がった。


「ま、待ってよ信長君。あいつらをどうする気?まさか・・」


 信長を見上げて、ガラシャが不安そうに言葉をかけた。


「決まっている。あいつらを皆殺しにする。力丸はガラシャの近くに残ってやれ。あの程度の連中なら俺と蘭と坊丸で十分だ」


「み、皆殺しって・・・・」


 ――――


「親分、こんな小さな村ですが、わりと蓄えてましたね!酒もありますぜ!それに、上玉の娘も楽しめましたねぇ」


 野盗達が下衆な話をしながら荷物を荷車に積み込んでいた。


「ん?なんだ、おまえらは?この村の人間か?」


 と、そこへ三人の少年が歩いて来るのが見えた。


「おいおい、前も隠さず裸かよ。お?後ろのやつは可愛いな。俺好みだぜ」


「えっ?親分、あれ、男ですぜ?」


「ばかやろう!おれは見た目が良かったらどっちもいけるんだよ!出来るだけ傷つけずに捕まえろ」


 野盗達15人くらいが、近づいてくる少年3人を取り囲むように集まってきた。そして、腰から剣を抜いて構える。


「おいおい、にーちゃん達。そこで止まりな。おとなしくしていれば痛い目に遭うだけですむぜ」


 ――――


 “まったくこういう連中には反吐がでる”


 信長はそんな事を思いながら村に入っていく。


 生きるに困っているのかもしれないが、その日の糧を得るために他人を襲って食料も命も奪う。こんな事をしていれば国の生産性は下がり、どんどん貧しくなっていく。そんな簡単なこともわからないのか?


 こういう連中は、周りの村を全て襲い尽くした後、どうするつもりなのだろう。最後には自分の手足でも食うのだろうか?


 相手との間合いは5mほどに詰まった。すると野盗どもは剣を抜いて構えてきた。両刃の直刀だ。芸術的な美しさは無く切れ味も良さそうでは無いが、人をたたき伏せるには合理的なのだろう。


「さて、やるぞ」


 信長はそう言って右足に力を入れて飛び出した。その加速はすさまじく、野盗達が対応できる時間など一瞬も与えることは無い。


 次の瞬間、野盗達の一番前に居た男の首に信長の手刀が刺さり、その頭はくるくると宙を舞っていた。


 そしてその勢いのまま、体を回転させて隣に立っている野盗の頭に回し蹴りを食らわした。何の防御も出来ずに正面から信長の蹴りを受けた野盗の頭は、爆弾でも仕掛けられていたのかと言わんばかりの勢いで爆散してしまった。


 信長に続いて蘭丸と坊丸も野盗に向けて駆け出す。そして、正拳突きや回し蹴りで野盗の男達を“破壊”していく。その姿はまさに地獄の修羅のごときであった。


「ひゃーはっはっはっはっはっ!逃げるやつは盗賊だぁ!逃げないやつはよく訓練された盗賊だぁ!」


 信長は奇声を上げながら盗賊を解体していった。これではどっちが悪役なのかわからなくなる、そんな凄惨な情景だった。


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