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王都への招待

 パパンママンは浮かない顔。

 まあ、そう心配しなさんな。あんな使節団俺がチョチョイとやってやりますよ。


 ……何をどうやるかはまだ思いつかないけど。


 そんなに強くもなさそうだしさ。それに、悪い奴らじゃなさそうだったよ?まあ、気にしすぎさ。


 父さん母さんは、地平線に消えてゆく使節団をじっと眺めていた。

 時折俺の顔を覗き込んでは、二人で言葉を交わしている。

 何やら思いつめた表情の母さんに対して、父さんは引きつった笑顔で答えている。

 力なく俯く母さんの肩を、父さんがやさしく抱き寄せ部屋を出て行った。


 お?これからお楽しみですか?


 などと下種な冗談は言わない。


 ま、何とかなるさ。と言う訳で、俺も工房に戻りさっき覚えた切断を使って新しい工具や製品作りに没頭するとしよう。


 などと、工房にこもること数日……


 結構楽しい日々でした。


 綺麗に直線、平面で切断できるって便利よね。結構精密な部品を作ることが出来ましたよ。

 素晴らしいこの技を

「大切断」と名付けましょう。


 まあ、名付けたところでどうと言うことは無いんだけどね。


 で、最初に作ったスターリングエンジンも、この技のおかげで出力向上できました。

 これなら車作れるな。

 

 とりあえず、三輪車を改造してトライク風にしてみました。三輪バイクね。

 燃料は薪で。


 お、薪の火力でもそこそこ走るね。


 時速……10kmってとこかな。これ車輪小さすぎるな。大きくするともっと速いかなぁ……


 などと調整する事数日。

 スターリングエンジンは、温度差が大きいほど出力が出るから。加熱は薪、冷却は水で、と試行錯誤を繰り返す。すると

 

 いけたよ。バギー完成。

 タイヤも大きくすることで多少の凹凸もへっちゃらさ。


 焚口もロケットストーブを参考に燃焼効率を上げてみました。


 すごいね。エコだね。これこそ真の再生可能エネルギーじゃない?

 カーボンニュートラルです。


 とはいえ、時速30~40kmってところかな。

 でも十分な速度だと思うよ。


 この間来た使節団も馬車だったけど、あんまり速そうな馬じゃなかったからね。

 ロバっぽいと言うか、道産子?

 どちらかと言うとパワー重視と言った感じだったからね。


 何より、俺が乗るなら、燃料は無尽蔵に生成できるからね。

 わざわざ薪を使わなくても、植物油だろうが鉱物油だろうが。ガソリンだってそのまま生成できる。

 無敵でしょ?


 一応、使用人たちが使えるように薪仕様にしてみたが、灯油仕様も作ってみようかな。


 などと考えていたら、使用人たちが工房に駆け込んできた。


 なに?俺が引きこもってるの心配してた?

 え?違う?

 領主様からの招待状?


 大慌ての使用人たちに腕を引かれ父母の部屋へ。



 そこには頭を抱えた父母と、机に置かれた手紙。



 ねえ。パパン。ママン。読んでくれないと分かんないんだけど……



 とも言いづらい雰囲気だな。

 随分落ち込んでる。


 で、仕方ないのでママンの側仕えのおばちゃんに読み上げてもらう。

 

 

 意外に朗々とした良い声してるね。おばちゃん。

 で、相手は領主だとばかり思ってたら、今は皇王を名乗ってるらしい。


 随分偉そうだな。

 いや。えらいのか。

 やっちまったかな。



 そいで、内容はと言うと、


 皇都においでと。

 皇都で学校に入らないかい?勉強してもっといろんなことできるようにならないかい?


 ってさ。



 ほほう。

 なるほど。学校があるのね。

 そりゃ面白そうだ。

 文字も憶えなきゃならんし、この世界の事何にも知らないからね。


 それに何より……

 俺の能力で無双できるかなぁ。


 この間の使節団。あの反応を見るに無双できる気がする。ああしますとも。


 ってなわけで、俺は皇都へ向かおうとパパンに伝えるわけだが……



 すごく苦い顔だ。

 怒り……、悲しみ……とも違う、何だろう。複雑な表情だな。


 父さんは、いつもの柔らかな口調で俺に語り掛ける。

 母さんはその横で心配そうにこちらを見つめていた。


 いやいや。心配しすぎでしょ?

 あんなおっちゃんたちですよ。俺ならチョチョイとやっつけちゃうよ。


 確かにこんな幼い子供が都会に出ていくのは心配だと思うけどさ。

 いずれ子供は巣立っていくもんだよ。


 まあ、俺子供持ったこと無いからよくわからんけど。


 心配し過ぎだって。



 俺の言葉に、パパンはゆっくり頷くと、言葉を一つ二つかけて俺の頭をやさしく撫でる。

 ママンは俺の頬を愛おしそうに撫でると、そのまま俺を抱きしめてくれた。

 ん~。別嬪人妻のハグは良いねぇ。

 

 などと言っている場合ではない。


 どうやらパパンママンにこの申し出を断る事は出来ないらしい。

 自分たちの無力を嘆いていたようだ。


 いやいや。だから心配し過ぎよ。息子を信じてくれたまえ。

 すごいんだから俺。


 ね?

 にこやかに送り出してよ。


 

 俺の言葉に、父さん母さんは微妙な笑顔で答えてくれた。

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