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基準作り

 まずは、何よりも大切な基準作りに取り掛かる。


 測定器かなぁ。


 まずは、定規。これがないと直線が書けん。


 適当に定規っぽい物を作る。

 見た感じは直線っぽいけど……


 確かめてみよう。地面に釘を2本打ち付け、そこに糸をピンと張る

 それに定規を添わせてみると……


 やっぱ直線が狂ってるな。取り敢えず精度は低いが、この糸との隙間が無くなる程度には調整しよう。


 もにゅもにゅ


 流石は人間三次元プリンタ。良い感じで直定規が出ました。

 

 で、これに目盛りを入れないといけないが・・・


 1mmってどのくらいだっけ?


 俺の大きさが小さくなってるからよくわからん。


 まあ、適当に決めるか・・・俺様が基準だ!!



 子供の手の大きさが100mm位とすると、まずは100等分しないとな。コンパスがいる。次の測定器はコンパスか。



 俗にいう用器画法ってやつだな。直線の等分なんて、使うことないと思ってたけど・・・


 勉強しといてよかったよ。ママンありがとう。



 いや、ママン関係ないけどさ。



 さてさて、せめて1/10mmくらいは測りたい。ゆくゆくは1/100mmあたりまで測れるといいけど。



 じゃあ、まずは1/10目指してノギス作るか。



 ……



 できたぁ!!!


 いいんじゃない。結構芸術的なノギスだな。この世界初めてのノギス。しらんけど、だれか作ってるのかなぁ。


 150mmまで測定可能。


 俺の手には少しデカいがまあいい。


 マイクロメータ作るにはねじ切らないとできないしな・・・当分はノギスで我慢だ。



 

 つづいて定盤じょうばんをつくろう。


 これは、工作の「基準となる平面」を持つ計測器具だ。


 何事も基準が大事。


 基準となるものが狂っていると、これから作る工作物すべての寸法が狂うことになる。

 逆に、基準がしっかりしていれば、それに基づき製作することで、今後制作した製品の精度が保障される。



 という訳で、まずは学校で使ってた定盤をイメージして作る。


 この定盤と言う計測機器は、鋳物や黒御影石で造られている。

 形状は至ってシンプル。転生前によく使ってた定盤は鋳物で、幅が900mm、奥行き600mm、厚さが100mm程度の直方体だった。


 上面はキサゲと呼ばれる加工がなされていて正確な平面となっている。この面を利用して製品の計測なんかを行う。


 まずは形状を思い出しながら一つ作ってみる。

 

 もにゅもにゅ



 うん。よくできてる。

 見た目はね。


 でも問題は、平面がどのくらいの精度で出来てるかだよなぁ。



 と言うことで、同じものをもう2つ作る。全部で3つだ。


 なんで精度の怪しい定盤を3つも作るかって?

 良い質問だ。


 いや、独り言ですけどね。


 実際、まだ完成じゃないからね。これから正確な平面を作り出す作業をしてくことになる。


 

 まず、今作った3つ、そうだな。便宜上「定盤A」「定盤B」「定盤C」と呼ぼうか。

 で、A、B、ふたつの定盤を使って作業を始める。


 では、定盤Aの上面に赤い塗料を薄く塗りつける。


 できるだけ薄くね。全体が赤くなったところで、定盤Bを上下ひっくり返して、赤く塗りたくった定盤Aの上面に定盤Bの上面をこすりつける。

 すると、もととも塗料を塗っていなかった定盤B上面のいたるところに赤い塗料がつく。そりゃそうだよね。

 でも、全体に赤い塗料がつくわけじゃない。

 なぜかって?

 どちらの定盤も平面が出ていないからね。凹凸がある。つまり出っ張っているところは擦れ合うけど、へこんでいるところは当たらないから塗料が付かない。

 つまり、この赤い塗料がついている場所が、「出っ張っている」つまり高い場所と言うことだね。逆に赤い塗料がついていないところがへこんでいるということになる。


 一般的には出っ張りを削って平面を出していくんだが、

 驚異のスキルを持つ俺ならへこみを膨らませることも出来る。素敵!


 で、これを繰り返すと平面に近づく。

 あ、ちなみに、ここできれいな鏡面仕上げにしてしまうと2枚の平面が張り付いて取れなくなるので、細かな凹凸を残すことになるが、まあその辺は雰囲気で。

 

 で、均一に赤い塗料が付いたら、おおよそ平面の出来上がり。


 本来なら、もう一段階作業があるが、今回はこのぐらいにしておいてやろう。


 この作業地味だから正直嫌いだったんだが、今のスキルなら楽勝ですな。



 と言う割には時間が掛かった。結構めんどい。

 

 だが、まだ作業は終わりじゃない。


 もう一個手つかずの定盤……Cがあるからね。


 そいつは何に使うのかって?良い質問だね。


 また独り言ですけどね。

 

 今の作業だけだと、平面が出ていない可能性があるからだ。


 どういうことかと言うと、今作った定盤A、Bについては、それぞれの上面は互いに「平行」にはなっている。だが、「平面」とは限らない。

 具体的には、今の条件が球面でも成り立っちゃうんだよね。2つの定盤が凹凸の球面の可能性があるって事だ。

 なので、3つ目の定盤「C」が必要になる。

 定盤「A」と「C」に先ほどと同じ作業を繰り返して平行な面を作る。

 で、今度は「C」と「B」で、同様の作業を繰り返すわけだ。

 するとあら不思議、3つの定盤はすべて平面が出ていることになる。


 と、言うのは簡単なんだけど、地味なんだよね。この作業。



 まあ、本当の加工をすることを思えば、ずいぶん楽だけど。


 何事も基準が大事っと。

 

 大事な事なのでもう一度言いました。


 ふう。大事大事っと。


 言い続けなければ心が折れそうだ。よし。もうひと頑張り。

 

 …………


 ようやく平面が完成した。これからは、この定盤を基準に作っていくぞ!!





 その後、円筒についても同様に作ってみる。つまり、軸|(丸棒)と穴だな。


 これも機械部品を作るためには必要不可欠な要素だ。



 で、基本の形状が作れるようになったところで、Vブロックやら金マスやらいろいろ作ってみた。

 正確な平面が作れるようになったので、先ほど作った定規やノギスも精度よく作り直す。


 いいんじゃない。測定器や工具類が揃い始めると俺の工房が欲しくなってくるね。


 今度パパンとママンに頼んでみようかな。



 ……


 頼む前に、工房作ってくれてた。すげー協力的な両親だ。



 さあて、最初に作った三輪車と高枝切りばさみを作り直しだ!!!



 ……



 動きの滑らかさが違うな。


 すてき、うっとりするね。



 次は、馬車のサスペンションとショックアブソーバーも。ついでに車輪はゴムのノーパンクタイヤで!!


 すげーぞ。オフロードの走破性が半端ない。


 よおし、次は何作っちゃおうかな。



 ああ、使用人たちの尊敬のまなざしが心地よい。

 なんでも要望して。


 つくっちゃる。


 おっちゃん幾らでも作っちゃるけんね。


 何弁なのかすらもうわからないほど舞い上がっておりますが・・・


 ……



 とうとう、この時が来た。


 精度が高いパーツを作れるようになったので、


 次の段階に入りたいと思います。





 工業系学生のあこがれ。


 「スターリングエンジン」



 誰もが一度は作ってみたいとあこがれる夢の外燃機関!!!


 ものづくり大好き学生が、「作っては見たものの結局何の役に立つの?」ってなって熱が冷めるまでがデフォルトです。

 いや、結構実用化されてはいるんだけどさ。学生風情が作った程度の出力では、あらゆる文明の利器に囲まれた近代日本においては、オブジェ以外に利用価値はありません。


 しかし

 しかしですよ。

 異世界ですよ。ここ。


 井戸から水を汲み。薪で煮炊きする。この世界では十分に活用できるんではなかろうか!!!



 まずは、練習から。


 暖炉の近くに置いたら回る程度のもので良いので、作ってみましょう。


 そもそも「スターリング牧師」が発明したこの「スターリングエンジン」


 自動車のエンジンなどがシリンダ内で燃料を燃焼させその熱で動力を得る「内燃機関」であるのに対して、外部の熱、正確には温度差で動力を得る機関となっている。


 って、誰に説明してるんだ?


 まあいいや。非常に気分が良いので続けよう。



 なので、熱源は何でもよい。むしろ温度差がありさえすれば回転運動を得ることができるというのがこのスターリングエンジンの素晴らしいところ。


 まあ、蒸気機関を作ってもいいんだけど。とりあえずね。


 学生の頃に、実験室の隅にあった廃材で作ろうとして失敗したあの雪辱を果たしたい。



 さて、とりあえず、熱伝導率の良い材料でシリンダーを作る。


 ピストン。これは軽くて丈夫。熱に強い材質で作る。できれば熱膨張率が小さいほど良いけどね。



 で、フライホイール。つまり、はずみ車ですね。


 こいつの勢いでシリンダ内のガスが膨張・収縮するのをアシストする。




 ばばぁ~~~ん!!


 できた。


 やっぱり簡単にできるなぁ。これすげー能力だよね。



 で、動かしてみましょう。



 使用人のおっちゃんにお願いして暖炉に火を入れてもらう。


 おっちゃんと一緒にスターリングエンジンを眺める事数十秒。

 おっちゃんは俺の顔とスターリングエンジンを交互に見始めた。そりゃそうよね。俺何も説明してないし、何も起こらないから心配になるよね。

 まあ、もうしばらく待ってくださいな。


 よし、そろそろ良いかな。俺はフライホイールを指ではじいて軽く回す。


 

 カタ


 カタカタ


 

 カタカタカタ・・・・タタタタタタ・・・・・・・・・・


 最初はゆっくりと回り始めたフライホイールは、見る見る加速しとんでもないスピードで回り始める。


 おっちゃんはその様子に目を見開き、また俺の顔とスターリングエンジンを交互に見る。テニスの観戦でもしてるんですかってくらいに交互に見てるよ。

 


 いい!


 良い反応だ!

 その驚きが欲しかった。


 それにしてもしっかり回るねぇ。すげー。語彙力ねぇ。でもすげー


 ガンガン回る。


 これ、発電できそうだな。



 でも、発電の前に、この動力を使って工作機械を動かすか。


 今のところ、俺しかものを作れないけど。これで工作機械が動かせれば使用人たちにも作業してもらえるんじゃなかろうか


 いろんな便利グッズが独占販売。材料は俺がじゃんじゃん出せばいいし。これはウハウハなんじゃなかろうか?



 ひゃっほー。きたー。大富豪フラグきたぁ!!!

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