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帰路

 準備を終えた馬車は積み込んだ荷物が荷崩れを起こすほどの勢いで走りだした。

 出発からしばらくは、偽装した箱の中でピンボールのように壁に頭をぶつけながら耐えてたんだけど……


 流石にキツイ。

 ということで、床に穴をあけつつ、馬車の下に小さな小部屋を作ってみました。


 何と言う事でしょう。

 そこはふかふかなクッションが敷き詰められ、体をしっかりとホールドしてくれるではありませんか。

 

 とはいうものの、明り取りが無いので真っ暗だ。まあ、イメージ通りに作れてるだろうから問題無いんだけどさ。



 にしても、暗くて周囲から優しく包み込まれるこの感覚。

 良いな。

 とてもいい。


 なんだろう。凄い落ち着く。


 馬車の揺れすら心地よくなってきた。


 ん~。



 zzzzzzzzz……



 ……



 は!?


 寝てた。


 おそらく結構寝てたよね。

 口開けて寝てたせいか、ベロがかっさかさだ。


 そこから推測してもかなりの時間が経ってると思われる。

 何より、腹が減った。


 とりあえず水でも飲むか。

 と、直接口の中に水を作り出す。


 ああ、乾いた体にしみわたるねぇ……


 って、いつも思うけどさ。この物質何処から湧いてくるのさ?


 質量保存則とか……なんかいろいろ無視してません?

 等価交換とか言って、俺の寿命減ってないよね?大丈夫?


 まあ、俺には確かめようもないけどさ。


 気にしたら負けか。



 と言う訳で、パン的な食べ物も口の中に作り出して食事を済ませる。


 車体下の我が居室。

 快適ではあるが、外の様子が見れないのは何とも……


 で、小さい窓を付けてみました。首を横に向けると、ちょうど視線の位置に来るように。

 小さいがガラスの嵌った素敵な小窓。


 随分日が高いな。こりゃ結構寝たな。

 

 車窓から見える馬車の車輪は、ごうごうと唸りを上げながら高速回転している。


 結構飛ばしてるなぁ。とはいうものの、このペースでもフォスター領までは1日以上かかるはずだ。夜になるとどこかで露営するんだろうな。

 皇都へ旅発った時はのんびりした旅だったから、あんまり休憩しなかったけど。

 今回は全速力に近いもんね。何を慌ててるんだか知らないが。


 それは良いとして、露営中、今回はノコノコ外に出るわけにもいかんよなぁ。

 たぶん見張りも居るだろうし。俺見つかったら怒られるんじゃなかろうか。屋敷を抜け出してるからね。


 とりあえず、この居室に籠るか。

 ま、この居室の床に穴でもあければ用も足せるし、食事も問題ないからね。

 何より、この居室居心地が良すぎる。


 何かに似てるような……



 は!?

 子宮か。



 いや、知らんけどさ。入ってたんだろうけど記憶に無いし。

 でも、そんな感じだよなぁ。


 まあ、いいや。


 などと、考えを巡らせながら外の風景を眺めていると、徐々に日が傾き始めた。


 車輪越しに見える遠くの山並みに夕日が沈んで行く。

 ああ、奇麗だねぇ。心地よい揺れと、柔らかく包まれるこの感覚。たまらん。


 zzz……


 

 は!?

 また寝てた。


 ありゃ、もう夜だな。そろそろ陣を張るのかな。

 と、思ってたんだが、その様子はない。

 いまだ軽快に馬車は走り続ける。


 これ……明け方にはつくんじゃないの?そんな無茶して、馬大丈夫?

 ま、俺の知ったこっちゃないか。


 zzz……


 …………


 ギギギギ!!

 ヒヒィ~~~~ン!!



 馬の嘶く声でたたき起こされた。

 なんだ!?今の。


 小窓からは柔らかい明かりが差し込んでいる。

 日の出が近いんだろう。空が白み始めていた。

 ドカドカと荷物を下ろす音がする。この時間に宿営?そんなことないよね。ってことは……到着したって事かな。

 でも、今出ていくと見つかるなぁ……、もう少し待つか。


 周囲の音が落ち着くのを待って、荷馬車の床に穴をあけ、車体下の居室からゆっくりと顔を出してみる。


 馬車の中には誰も居ない。

 久々の外の空気は、なんだか埃っぽく嫌な臭いが混じっていた。


 この臭い……なにか焦げてる?


 俺は背伸びをしながら居室から出ると、荷馬車の外に顔を出す。

 


 なんだ……これ。


 周囲の山々、自然は見慣れた風景だが、その中にある屋敷や集落にあの頃の見る影は無かった。


 建ち並んでいた使用人たちの小屋は焼き討ちに会ったように焼け焦げ、一部はまだ火がくすぶっている。

 整備されていた畑も、多くの足跡で踏み荒らされ腐敗した作物が転がっている。


 そして、遠くに見えるのは……

 俺が途中まで作っていた防壁だ。


 あの後ろ、物陰になっているところに我が家があるはず。


 状況が呑み込めないながらも、俺は歩みを速めてゆく。


 防壁がどんどん近づく。そして、その向こう側が見えた……


 え?

 

 どういうこと?

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