1-9 こりゃ禁忌になりますわ
不思議な体験を後にしつつ私は宿に帰ることにした。
道中魔導書を開きたい気持ちを押し殺すので手一杯であった。
鎖で巻かれていたりだとか鍵がついてたりとか禍々しい模様が描いてあったりとかではない何の変哲もない黒い装丁の本。
この本に一体何が書かれているのだろうか。
「今日も泊まっていくかいお嬢ちゃん」
宿につくと見慣れたおばちゃんが声をかけてくる。
お願いしますといい銅貨5枚を支払う。
あっそうだ、どこかで銀貨を両替しておかないとと思いつくが既に足取りは毎日使わせてもらってる一室に向かってしまっている。
もういいや明日でも変わらん変わらんと部屋に入るなりベッドに腰をかけ本を開く。
一ページ目の一文目を読む。
『この本は僕がこれまで通った世界のえげつない魔法とかを記してあるよー、いくつかオリジナル魔法も書いとくねー、自動翻訳付きだよーほんじゃまーどうぞー』
ナニコレ?
もっと堅いことが書いてあるかと思ったがなんだこのゆるーーーい感じの一文は。
しかもその一文以外このページは空白だ。
本とはもっと堅いことが書いてあるのではなかったか?
いやまぁしかしゆるーいのはいいとして通った世界とは一体?
この世界以外の世界を渡ったということなのだろうか。
世界が何個もあることなど考えてもみなかったがあってもおかしくはないだろうな。
取り敢えずで次のページを捲り文字に目を落とす。
『ザ●キ:相手は死ぬ』
一発目からえげつないの来た、何か他の意味で怒られそうな気もするが気のせいだろう。
『ははっ、著者が著者に牙をむくなんて面白いでしょ。え、ダメ?真面目にやれ?仕方ないなぁの●た君は。ハイハイまじめにやりますよ』
意味が分からない上にふざけている、確実にこの本の著者はろくでもないやつだ。
悪態を垂れつつも再び文字に目を落とす。
『禁忌の初級魔法
火魔法:爛 血を沸騰させる
水魔法:溺 肺を水で浸す
風魔法:空 真空領域を作る
土魔法:腐 土壌を腐らせる
雷魔法:嬲 電気信号を弄る
光魔法:透 使用者を見えなくする
闇魔法:肉 狂わせる』
え、えげつない。
殺すことに特化した魔法しかない。
しかも透以外どの魔法も体験したくない死に方ベスト10には入りそうな死に方になるだろう。
い、一応中級と上級も見てみるか。
ページを捲る。
『禁忌の中級魔法
火魔法:爛落 血を沸騰させ、体表を消えない炎で包む。
水魔法:溺零 肺を水で浸し、一度吐き出させてから深海に転移させる。
風魔法:空亡 見える範囲の大気を真空状態にする。
土魔法:汚腐 土壌を腐らせる、永遠に戻ることはない。
雷魔法:嬲去 電気信号を弄る、範囲から逃げた場合電気信号が逆転する。
光魔法:肩透 意識したもの以外全て透ける。
闇魔法:肉塊 狂う、伝染する。
禁忌の上級魔法
火魔法:壊爛落 世界を消えない炎で包む。
水魔法:枕溺零 深き深き海に世界を沈める。
風魔法:暴空亡 世界を真空状態にする。
土魔法:汚腐海 世界の土壌、水、全てを腐らせる。
雷魔法:姦嬲去 全ての生き物の電気信号が入れ替わる。
光魔法:無肩透 全ての生き物が光を認識できなくなる。
闇魔法:荒肉塊全ての生き物を狂わせる 』
あ、こりゃあだめだぁ。
使ったら世界規模で被害が出るものしかないやぁ。
あぱー。
読むだけでどっと疲れた私はベッドに横になりオリジナル魔法の項目を読むのをすっかりと忘れてしまっていたのであった。




