金襴リボン『カメラの向こう側』
物語のあるリボン作家『いろいと』です
私の作るリボンには、1つずつ名前と物語があります
手にとって下さった方が、楽しく笑顔で物語の続きを作っていってもらえるような、わくわくするリボンを作っています
関西を中心に、百貨店や各地マルシェイベントへ出店しております
小説は毎朝6時に投稿いたします
ぜひ、ご覧下さい♡
Instagramで、リボンの紹介や出店情報を載せておりますので、ご覧下さい
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ぽかぽかした陽気に私もぽかぽかする
春になれば中学生
一緒にいる友達は、ほとんど同じ中学に行くけど、先生たちは小学校のまま
ずっと一緒にいた先生も今日でお別れ
その事を思うと、ぽかぽかした気持ちは少しションボリしてしまう
もう会えなくなるのかと思うと、黒板の前で、卒業式の最終確認をしている大好きな先生の姿が、滲んで見えてきた
卒業式の朝は、各自登校して教室へ向かう
普段と違う恰好をしている友達を見るのは何だか、むず痒い
私の学校は、卒業式に袴を着ても良いので、何人かは袴を着ている
引越しした友達の学校は、袴を禁止されているようで、羨ましいと言っていた事を思い出す
そんな私も袴を着ているのだが
一通り話を聞き終わり、先生の姿がハッキリと見えるようになった私は、体育館へ行く準備を進めた
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厳かな曲と共に、行儀よく並んで歩く
体育館は、いつもと違う様子で私達を迎え入れてくれる
参列者の中には、すでに泣いているのか、すすり泣く声がちらほら
思わず私も鼻をすする
『一同着席』
号令と共にギシギシと音を立てながらパイプ椅子に腰を下ろす
あぁ。今日で小学校にも来ないのか。
寂しい気持ちになり感傷に浸っていた
一人ずつ名前が呼ばれ、卒業証書を受け取りに教壇へ
数百名の名前を読み上げ、おめでとうと手渡しをする校長先生は疲れないのだろうかと、ふと、そんなどうでもいいことが一瞬頭をよぎった
そろそろ自分の番が近くなり、舞台へ昇る階段で待つ
待っている間に、耳に入るのはパッヘルベルのカノン
寂しいような癒やされるような名曲は、より気持ちをこみ上げてくるものを演出してくれる
いよいよ私の番、担任の先生に名前を呼ばれ教壇の前に立つと、校長先生に再度名前を呼ばれる
『〜卒業おめでとう』
一歩前に出て、右手左手の順で卒業証書を受け取り、頭を下げた
正面を向いたら証書を置いて元の場所へ腰を下ろす
厳かな時間はゆっくり流れていった
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卒業式が終われば、毎年恒例の記念撮影大会が始まるらしく、全員荷物を持ち校庭へ向かう
校庭へ出るなり私達は、運動場を一望する
『いた!』
黒縁メガネをかけ短髪黒髪が似合う担任の先生を見つけた私達は、一目散に走り出す
『先生!一緒に写真!!』
『もう学校来れないの寂しいよぉ!』
『先生に会えなくなるのヤダ!』
せきを切ったように、それぞれが大好きな先生と会えなくなる寂しさを吐き出す
『え?もう会えないの?はは。卒業しても学校来ていいんだよ?』
『え?』
先生の口から出た思わぬ一言に、私達は、あんぐりと口を開け、ぱちりと大きく目を開く
『え?え?来ていいの?先生とこまた来れるの?』
『そのかわり放課後だよ!先生も忙しいんだからねぇ。ははは』
『えーー!ほんとに!』
『行く!』
あれだけ会えなくなると思ってションボリしていた気持ちは、きれいに消え去りぽかぽか陽気が私を包み込む
会えなくなるわけじゃないんだ。どこかホッとした私だが、やっぱりお別れは寂しくて、大粒の涙を一つ流していく
『また遊びにおいでな?ほらほら、みんな泣くなぁ』
『うえーん』
『先生大好きぃ!』
『あ、こんなとこにいた!ほら、みんな笑って!写真撮るよ!』
和服姿の母は、私達の姿をカメラに収めようと探していたみたい
『金襴リボン』のように、鮮やかに華やかに、満面の笑みをカメラに収める
『はい!チーズ!』
カシャリ
気持ちのいいシャッター音は、晴れの舞台を爽やかに送り出す
うん。今日は、ぽかぽかの素敵な陽気だ。
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最後まで読んで下さり、ありがとうございます
色々なお話を書いておりますので、どうぞごゆっくりとしていってもらえると嬉しいです
また明日、6時にお会いしましょう♪