茶会で突然婚約破棄を言い渡されましたが…
ゆるゆる~と書いてますのでゆる~く読んでください。
誤字報告ありがとうございます(*_ _)♡
デイリーランキングにチラッと入っていました。
沢山の方に読んでいただけて大変恐縮です。
「アーリン・ロクサール!俺はお前との婚約を破棄する!」
エドミール伯爵家主催のお茶会のど真ん中で私は皆の注目を浴びながら突然こんな事を言われた。
婚約破棄を突き付けて来たのはキーバン・ナジャフ。
ナジャフ子爵家の長男である。
茶色い髪がブロッコリーの様にモハモハと膨らみ、吊り上がった茶色い目はとてもキツく、その目同様にとても底意地の悪い性格の彼を好きになれる要素なんて1つもなかった。
「婚約破棄とはどう言う事でしょうか?」
「ふんっ!お前みたいな女と婚約してる事が心底嫌になったからだ!婚約者の俺を一切立てようともせず、無視すらする女なんか俺に相応しくないからな!」
この男は何を言ってるんだろうか?
その無駄にモハモハしたブロッコリー頭の中には脳みそは入っていないんだろうか?
「どうして私があなたを立てなければならないのです?」
「婚約者なんだから俺を立てて当たり前だろうが!」
だから何で私が?!
「先程から本当に何を言ってるんですか?あなたの婚約者は私の妹でしょう?」
「はぁ?!」
周囲はキーバンが妹の婚約者だと分かっているので呆れ顔である。
私はアーレン・ロクサール。
ロクサール子爵家の長女である。
私には双子の妹アーリンがいる。
キーバンはその双子の妹アーリンの婚約者だ。
私とアーリンは双子だが見た目は全く違っている。
一卵性双生児ならば瓜二つだったのだろうが、二卵性双生児だった為に本当に面白い程に似ていない。
私はお母様に似てシルバーの髪に青い目なのに対し妹はお父様と同じ紅茶に似た髪色で赤い目をしている。
私は小柄だが妹は身長が高い。
私が小さすぎて妹の方が年上の姉に見える程だ。
アーリンとキーバンの婚約は3年前にキーバンのお母様のお願いで成り立った。
キーバンの家と我が家は昔からお母様同士が仲良しだった。
背は大きいのだがとても引っ込み思案で大人しく優しい性格のアーリンをとても気に入っているキーバンのお母様に「うちの娘になって頂戴」と口説かれ続け、内気な性格も相まって断れなかった妹が首を縦に振ったのだ。
だけど婚約したのに妹を訪ねてくるのはいつもキーバンのお母様だけで、婚約してからキーバンが妹を訪ねてきた事は一度もなかった。
夜会やお茶会に「婚約者とお越し下さい」と招待状が届いてもキーバンは一切アーリンを誘わず、いつも私がアーリンと共に出席していた。
贈り物は届くのだが明らかにキーバンではなくキーバンのお母様が見立てたであろう事が丸分かりの品ばかりで、キーバンにアーリンが大事にされているなんて口が裂けても言えない状態だった。
そんな男だから当然嫌っていたのだが、まさか自分の婚約者の顔すら把握していなかったとは開いた口が塞がらない。
せめてもの救いは今日この場にアーリンが来ていない事だろう。
もしアーリンがこの場にいたら気の弱く優しいあの子の事だもの、酷く傷付いて、下手したら自分を責めてしまうかもしれないから。
アーリンはキーバンの事を嫌ってはいるので婚約破棄自体は万々歳なのだが。
しかしキーバンのお母様はとても良い人なのに、何故息子はこうなった?!
「私はアーレン・ロクサールです!婚約してからのこの3年間一度たりともアーリンをお訪ねにならなかったキーバン様には婚約者の顔もお分かりにならないようですね?」
「3年間も?!酷すぎるわ!」
「自分の婚約者も分からないなんて…」
「聞いて呆れるわね」
周囲の人達がザワザワとし始めた。
「お、お前達が双子だから間違えただけだろう!」
周囲の様子に慌てながらもそれらしい言い訳をしてきたキーバンだが、当然周囲の皆様は私とアーリンが全く似ていない事を良くご存知な方達ばかりだ。
キーバンへ更なる非難の視線が集まった。
「な、なんだよ!なんだってんだよ!双子だから間違えてもおかしくないだろ!」
「はて?おかしいですわね?私はご覧の通りシルバーの髪に青い目ですが、アーリンは紅茶の様な髪色に赤い目で、しかも私よりも10cmも身長が大きく全く似ておりませんのよ?なのに双子だから間違えたと?」
「なっっ?!だって双子だろ?」
「確かに双子ですが、二卵性双生児なので面白い程に似ておりませんのよ、私達姉妹は。その事はお集まりの皆様もご存知だと思いますけど?」
周囲を見渡すと「そうだ!そうだ!」と言わんばかりに皆様がうんうんと頷いている。
「先程「無視する」と仰っていましたが、私があなたを無視するのは当然でしょう?可愛い妹を蔑ろにされている姉としては見たくもない相手ですもの」
「な、蔑ろになんか、してない!」
「へー、3年間もあなたのお母様だけが妹を訪ねて来るなんておかしな状況でありながら蔑ろにはしていないと?贈り物もあなたのお母様が贈って下さっているのに?今日のお茶会も本来であれば「婚約者と同伴で」とのお誘いだったはずですが?あなた、アーリンを誘いもせずにこちらにお出でですよね?」
「そ、それは…」
「蔑ろにしておいて俺を立てろ等とどの口がお言いなのでしょうか?呆れて物も言えないとはこの事ではありませんか?」
「うっ…」
「アーリンもあなたの事を慕ってはおりませんので婚約破棄は妹に代わって私がこの場でお受け致します。ですが、今までの事も考えて慰謝料はしっかりと頂きますので。あ、慰謝料はご両親に立て替えて貰う事は許しませんので悪しからず」
「ま、待て!」
「まだ何か?」
「そんな金あるはずがないだろう!」
「おや?おかしいですわね?あなたが毎晩お仲間の御令息や何処ぞの女性達を侍らせて豪遊した挙句、全額奢って差し上げている程にお金をお持ちであるのに、ですか?」
「なっっ!何故それを?!」
「あれだけ毎晩派手に遊んでいらっしゃるのです、嫌でも耳に入って来ますわ。それに何でしたっけ?あぁ、そうでしたわ!「俺はまだ家は継いではいないが、実は子爵家の実権を握っている。俺に掛かれば金なんて幾らでも湧いて出てくる」でしたっけ?それだけの事を仰っているのですから妹に払う慰謝料も何処ぞから湧いて出てくるのでしょう?問題ないですわよね?!」
キーバンは最早顔面蒼白を通り越して紙のように白くなっている。
周囲からはキーバンを蔑む視線が注がれている。
流石にやりすぎたかな?とは思ったが、可愛い妹を馬鹿にされて許せる程私は出来た人間ではないのだ。
きっとこの場にお父様がいたら「もっとやれ!」と援護射撃をしてくると思うし。
「皆様、大変お騒がせいたしまして申し訳ありません」
私はカーテシーをしてその場を去った。
家に帰ると茶会での出来事をお父様に話した。
「よくやった!それでこそ我が娘だ!」
まさか盛大に褒められるとは思っていなかった。
アーリンは婚約破棄された事は気にしていなかったが、自分をとても可愛がってくださっているキーバンのお母様の事をとても心配していた。
その日のうちに騒ぎを聞き付けたキーバンのご両親がやって来て気の毒に感じる程に謝罪していた。
息子の教育には失敗したとは言えこのご両親本当に良い人達なのよね。
「慰謝料は我が家で支払う」と言われたけど茶会で私もあの馬鹿に言った手前キーバンに是が非でも支払って貰う事で合意した。
キーバンは家督を継ぐ権利は疎か貴族としての身分も凍結(態度を改める様なら戻すけどその事は秘密にして)され平民として稼ぎながら妹への慰謝料も捻出する事になったらしい。
取り巻きだった御令息達からは手のひら返しをされて誰も助けては下さらなかったとか。
アーリンは少しだけ落ち込んでたけれど、婚約破棄を聞き付けた男性陣から婚約の申し込みが殺到した為それ所ではなくなった。
見た目こそ私の方が儚い感じを持たれるのだが、実はとっても性格が可愛いアーリンはもてるのだ。
私は性格が少々男っぽいので話してみるとガッカリされるタイプなのである。
*
「…って事があったのよ!」
一連の流れを婚約者のノーザン・ファミークに話した。
もう30分近く話しているので喉が渇いてきた。
ノーザンは男爵家の次男で私と結婚して子爵家を継ぐことになっている。
私の性格を熟知している上で私が良いと言ってくれる貴重な男性である。
「そいつ相当馬鹿だねー!普通興味なくても婚約者なら顔くらい確認しそうなもんなのに」
「でしょー!余りの事にビックリしすぎて笑いそうだったわよ!」
「それはそうと、僕は可愛い婚約者を前に何時までその残念な男の話を聞かないといけないのかな?君の口から他の男の名前を聞くのは少々妬けるんだけど?」
ヤバい、変なスイッチを押してしまったみたい。
「折角学園の休日だからと会いに来たら愛しの婚約者は他の男の話に夢中なんて拷問の様だよ」
ノーザンは我が家を継ぐべく寄宿制の学園に入学して勉強中で本日は貴重な休日だった。
ピトッと私の隣に座ると私の腰に手を回して体を引き寄せた。
爵位こそ低いがノーザンは王子と見紛う程に整った顔をしていてその上恐ろしい程に色気がある。
そんなノーザンに変なスイッチが入ると腰が砕けそうな程の色気を発する。
「ノ、ノーザン?少し近過ぎない?」
「ん?全然?膝に乗せて腕の中に閉じ込めておきたいのを我慢してる位なんだから」
「こ、こ、ここカフェよ?皆に見られてしまうわ」
「僕らの仲を世界中に見せ付けたい位なのに?」
私はもう顔が真っ赤である。
「はい、アーレン、口開けて」
一口大に取り分けたパイをフォークに差して魅惑的な笑顔で迫ってくる。
パクッとフォークに食いつくと「よく出来ました」と頭にキスを降らして来た。
チュッチュッとリップ音が店内に響き渡り、痛い程に視線を浴びているのにノーザンは全く気にしていない。
気にする所か「アーレンは僕のだからね」と耳元で囁き頬にキスをし始めた。
こういう時のノーザンは止まらないし、止めようとすると更に過剰になるので私は恥ずかしさで死にそうになりながら耐えるしかない。
「僕にも食べさせて?」
色気の塊の様なノーザンが口を開けて目を閉じて待っている。
さながらキス待ちでもしているかの様に。
『こうなったのも全てあのブロッコリーのせいだわ!!!』
心の中でお門違いの八つ当たりをしながら、目の前でキス待ち顔で小さく口を開けているノーザンの口の中にパイを詰め込んだのであった。
読んで頂きありがとうございます。
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でも余りにも辛辣な物は凹みますのでお手柔らかにお願いします(。>ㅿ<。)




