断罪
パーティ当日がやってきた。
月能は来賓の受付、茂治さんは色々とセッティング等していて忙しくなっていた。
私は、呼ばれるまで控え室で待機していろと言うことだった。
せっかくのパーティ、だというのに気が重い。
「……チッ」
「花音様。そろそろ……」
「わかったっす」
私は重い腰を上げて、舞台へ立ちに向かう。
会場が近づくに連れて、緊張が激しくなる。私は父の顔をよく知らない。
どんな顔をして舞台に上がればいいんだろうか。わからない。
「花音、来なさい」
と、茂治さんが私の名前を呼ぶ。
私は舞台にあがる。茂治さんは私の肩を掴み、会場を見渡していた。
「この子自身が君が不倫したという証拠だ。清治」
「なんだそのガキ……」
「気づかないのか? 16年前、お前が不倫した相手との間に生まれた子だ。心当たりがあるだろ?」
「ない。私はそんな子ども知らない。大体、何を根拠に?」
「君とこの子のDNAが証明しているんだよ。無駄な言い逃れはよせ」
すました顔をしながら、淡々と反論している清治という男。
すると、背後のプロジェクターになにやら映像が映されていた。これは一体?
音声も聞こえてくる。
『堕ろせって言っただろ! なに子ども産んでんだ!』
『あなたとの子……。あなたを愛しているの……! あの女と別れて私を見てよ!』
『うるさい! 私は立場があるんだ……。愛だなんだと鬱陶しいだけでしかない。今すぐその子を殺せ。その子がいてはいずれ私は……』
なん、だこれ。
清治さんと、私の母が映っている。
「これが証拠でもある。今の科学技術の進歩は凄いからな。他人が忘れている記憶も、こうやって映像に呼び起こせる時代になった。これは紛れもなくこの子の記憶だよ」
「…………」
「諦めろ。もう手遅れだ」
「……クソ、クソ! あの女が殺さなかったから! 俺の人生は!」
「お前の人生なんかどうでもいい」
「今も、これからもですね。とりあえず、これにサインを。離婚しましょうね」
「ひっ……」
逃れられない清治という男。その嘆く様子は会場からは滑稽に思われているだろう。
立場に固執して、ひた隠していた。
「に、兄さん! 悪かったよ。俺が悪かった。だから……」
「お前……すげえ滑稽だな」
「嘲笑ってもいい! 許してくれれば俺は……!」
「清治。お前、いつまで阿久津家の名前に泥を塗るつもりだ? お前がやったことで、少なくとも二人不幸になっているんだ」
「…………」
「お前自身が蒔いた種だろうが。もちろん私としても許すつもりはない。阿久津の名を二度と語るなよ」
「そんな……」
と、清治という男は私の方を睨んできた。
ふらふらと、テーブルに向かうとナイフを手にして、私を殺そうと襲いかかってくる。
誰も止める暇がなく、呆気にとられていた。
「花音」
「わかってる」
私は腕を掴み、捻った。そして、ネクタイを引っ張り転ばせる。
「残念だったな。私を散々不幸にしてくれやがって……。お前のせいで私の人生がめちゃくちゃなんだよ。オイ」
「クソ……クソがっ……!」
泣き出した清治という男。
諦められないんだろうな。いい思いばかりしてきたから。阿久津家の名前を使って好き勝手やって来たのだろう。
警備の人がやってきて連れていった。
私はパンパンと埃をはたき、立ち上がる。
「楽しい誕生日パーティにこんな暗い話題を持ち込んですまなかった。そして、北海家の方々に深くお詫びを。そして、この子は、私が養子縁組を組み、引き取らせてもらいます。自己紹介、しなさい」
「あ……えと、市ノ瀬 花音っす……」
私は弱々しい声で自己紹介をしたのだった。
「この子はまだマナーなどは分かっていないことを、あらかじめ言っておく。つい最近、私もこの子の存在を知ったばかりで教える暇もなかった。だが、あの清治とは違い、ものすごいいい子ではある。仲良くしていただけると……」
「そうですね〜。私たちも一度お会いしましたが、悪い人ではないですよ〜。ふふ」
恋がマイクを奪い取り、皆に告げたのだった。
「はら、花音、そして北海家の皆様。会場の皆様。お食事の続きをいたしましょう」
パーティはまだまだこれから、らしい。
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