私のもんだ
デイズはクランのメンバーのところに戻った。
戻ってくるや否や、無事を心配されて声をかけられる。が、デイズは何も反応はしない。
「あの……」
「なんでしょう」
「その……、やめてください。迷惑、です」
「……ふぇ?」
デイズは溜まっていた鬱憤が、口を開いたことで止まらなくなっていた。
日々迷惑かけられていることをとめどなく口から放つ。
「正直言って今のあなたたちは大嫌いです! 戦えないからとアルテミスさんを追い出したりして! 戦えないからなんですか! あなたたちはサポートの重要性もわかってないくせに! 一人でどうにかなるとか考えてるのも迷惑! あなたたちの行動で嫌な気持ちになる人がいることを理解してください!」
と、言い切った。
一瞬、静寂。そして、やつらから出た言葉は。
「……は?」
と、まさかの逆ギレ。
「手伝ってやったのに……」
「可愛くねえじゃん」
「ムカつくな」
と、各々怒りを露わにしていた。私は前に出る。拳を構え、笑いながら出ていった。
デイズは私の方を向く。
「ゼーレ師匠!」
「よし、こっから喧嘩だな。私の専門だ。受けて立つぜ」
「俺は見ていた方がいいのか? それとも参加すべきか?」
「自衛だけしてろ。この喧嘩は私のもんだ」
最近、暴れたりないんだよな。ワグマが制限してくるせいでモンスターとしか戦えん。
人と戦うのは。ましてやこの大人数。血が騒ぐな。
「デイズ、お前もクランを抜けろ。私んとこ入れ」
「そ、そうします!」
「っし、じゃ、逃げてろ。私が全部蹴散らす」
指を鳴らし、拳を構える。
男の一人が剣で切り掛かってきた。私は剣を弾き飛ばし、そのまま殴る。
常世之闇を発動し、一人をまたキル。
「どうしたよ! 私は一人だぜ! 一人の相手を殺さねえほどてめえら弱いのかよ!」
「チッ……!」
「前から一歩も進歩してねぇ! 欠伸が出るな!」
私はどんどん蹴散らしていく。
十分後にはほぼ全員キルしていた。カルマ値が相当溜まっただろうが、スッキリした。
無傷。少しくらいはダメージを負うと思っていたが。
「その、私たちは別に怒ってないので……」
「うちの男どもが悪かったんだよ。その、デイズ。今まで迷惑だった?」
「女の私たちがカバーできれば良かったけど……。私たち、見ての通り見た目よくないでしょ? 馬鹿たちは……」
「いいんです! 可愛がってくれてましたし私はあなたたちのことは好きですよ! あなたたちもこの馬鹿みたいなクランは抜けた方がいいです。リーダー以外マトモじゃないですし」
「リーダーはいい人なんだけどねぇ」
リーダーしか褒められるところがない。
「よし、じゃ、いちぬーけた。流石に付き合ってらんないよ」
「私もぬーけた」
「私も抜けた」
「リーダー泣きますね」
「リーダーには申し訳ないよ。せっかく楽しめるためにと誘ってくれたのにさ。こんな結末になるなんて馬鹿たちも思ってなかっただろうに」
「袋叩きで女子一人に敵わないとか流石にダサい」
ボロクソ言われていた。
「あの、あなたもありがとうございました」
「そしてごめんなさい。迷惑かけたね」
「おう、気にすんな。私もまぁ、少しは滾った。けど……」
「けど?」
「ワグマにこのこと言ったらすげードヤされそう……」
あれ、ぐちぐちうるせえしな。
私ははっとして辺りを見渡す。というのも、ワグマの悪口とかを言ったり心で思ったりしたら結構な確率で周りにいたりする。
今回はいないようだった。
「ま、ともかく、リーダーには伝えてこいよデイズ」
「はい!」
「デイズはゼーレさんのクランいくんだよね。うん、また遊ぼうね!」
「あそぼーね!」
「じゃ、私たちはちょっと説明と抜けることを言っておくからさ。もう行きなよ」
「流石に心痛いでしょ。デイズちゃん」
「……まぁ。こういうの苦手ですから」
「迷惑とか嫌いとか、デイズちゃんは普段から言わないもんねぇ」
人を傷つけることを嫌がるデイズ。そんな奴がなぜ私に憧れているのかはわからない。
が、強くなるためだとしたら。こういう現状が嫌だったんだろうか。だからこそ、嫌いだとはっきり言えるようになるために。いや、考えすぎか。
「これ説明しなきゃダメだよなぁ〜。デイズが入ることを告げるにゃ。何人キルしたんだ? サンライトメンバーの男子全員だろ?」
「15人ですね」
「のうち、5人からは先に攻撃受けてるから正当防衛だと加算して……。あー、カルマ値ちょっとやばいか。こりゃ近々噂に聞く掃除屋来るかもな」
掃除屋とは。
まぁ、PK専門の対処組織の役人みたいな感じ。カルマ値が高ければ高いほど出会いやすく、死ぬか、心から反省しないと戦いをやめない。
キルされるだけならまだいいが、カルマ値が高いプレイヤーが掃除屋によってキルされた場合、他のやつより重いペナルティがある。
専用スキル、職業スキル以外のスキル一つ没収、そして、レベルダウン。わりかし重い。
「……君、少々加減して戦え」
「ははは。力余ってたくさんキルしちゃった」
「掃除屋なんてきたら洒落にならないだろう。巻き込まれる位置にいる味方もろともキルしてくると聞く。庇うことはできんぞ」
「誠意の土下座するしかないか」
「土下座で済むのか?」
「済まなそうですけど……」
「……まじでどうすっかなぁ。チョコレー島までは来ないとおもうけど、陸に上がった瞬間出会したってのはマジで避けてえ。教会があれば奉仕作業すんのに。なんでこの島に教会がねえんだ!」
魔女二人しかいないし。
「まぁ、掃除屋も恐ろしいが……」
「問題はワグマたちだろ。オイリはともかくよォ」
「…………すごく怒るよな」
「めちゃくちゃ怒ります」
「……しゃあねぇ。腹括る」
掃除屋もワグマもかかってこいや。
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昨日3話更新してたんですね。間違ってました