やられたらやり返す
私たちはコーラの川から場所を移すことにした。
だがしかし。
「なぜお前がついてくるデイズ」
「ししょーと一緒にお菓子食べたい!」
「呑気だねェ。君がここにいることで私がさらに恨まれるというのに」
「私、あの人たち嫌いだもん」
ばっさり切り捨てた。
「人をいじめるし、自分達は強いって自惚れてるし! ししょーと比べたらまだまだなのに!」
「私と比べんな。私は例外中の例外だ」
これでも自分の力には自信がある方で、比べたら可哀想だろうと思うことはある。
まぁ、何人か強いな〜とは思ったやつはいる。けれど、私よりはまだ弱い。
「はっはっはっ。今の言葉をクランのメンバーに聞かれていたら卒倒物だろうねぇ。実に愉快だ」
「だから私もしばらく別こーどーさせてもらうことにしたんでーす! リーダーがクランを変えられなかったら私もクランやめるー!」
「自由だな」
「まぁ、賢明だろうねェ。あそこは束縛が激しいから。リーダーが機能していない。ああいう輩はカリスマ性か、力で屈服させるのが一番なのだが……。残念ながらサンライトにはそれがないからねェ。一体、どこで間違えたのか。最初はみんな仲良くゆるくやろうという目標だったはずなのに……」
アルテミスは遠くを見つめる。
まぁ、なんか理由は明白な気がするが。というのも。
「大体デイズのせいだろ」
「そうだね。理由は明白だった」
「え!? なんで!?」
「お前、クランの奴らから崇められてるだろ」
前行った時、ものすごく慕われ、近くにいたからこそ私が喧嘩を吹っかけられた。
「誰にでも優しくするから勘違いすんだよ。オタクどものサークルに一人だけ可愛い女子来たらみんなもてはやすだろ。同じことが起きてんだよ」
「デイズのために戦うことがみんなの共通認識となってしまったからこそ、非戦闘員である私は要らないと言われたのさ。自覚がない姫ほど厄介なものはないね」
「これはお前が蒔いた種ってことだな」
キツい言い方になってしまった気がするが。
「男全員が全員ってわけでもねえが、出会いに飢えている奴ほど姫を大事にする。見た目がいいなら尚更で、自分達に優しくしてくれるのならもっと」
「優しさは無闇矢鱈に振り撒けばいいものではないよ。デイズ」
「……ごめんなさい」
デイズはペコリと頭を下げる。
やっと、自覚したらしい。優しくしてしまうことの悪さを。
「まぁ構わないよ。少しだけ食べ歩きしたら彼らのところに戻って現実でも突きつけようか。嫌いと一言いうだけで崩れ落ちるだろうね」
「うん……」
「誰かを傷つけたくないというのもあるかもしれねえけど、傷つけないなんてことはできねぇぞ。そろそろアイツらには現実を見せるべきだ。残酷で無慈悲な現実を。夢から醒めさせてやれ」
「これは君にしか出来ないよ。周りが嫌いでも、動かせるのは君しか現状いない」
「……わかった。でも」
何かを言おうとしている。それは嫌という否定の言葉か、それとも。
「でもさ、それに怒って襲いかかってくることもあるんじゃないです……?」
「あるかもしれないねェ。まぁ、その点は心配ないさ。君の後ろには誰がつくかを考えればその心配は杞憂だよ」
「ま、そうだな」
「それに……君自身も戦えるのだろう?」
「弱いですけど……」
「謙遜するな。戦闘のセンスはあるぞ」
戦ったからわかる。
小柄な体型を活かした戦い方をするので、もう少し技術を極めたら私でも少し苦戦するとは思う。
「……じゃ、やります」
「おう」
「ふっ。ま、そうこなくてはね」
「アルテミス。お前多分自分の報復のために焚き付けてんだろ?」
「それもあるさ。やられた分はきっちりやり返すのが私のモットーでね。いつか報復してやろうとは思っていたよ」
こいつ、本当に策士。
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