絡まれている女の子
翌日も私たちはレベル上げをしていた。
今度は舞台を西の森に移し、森の敵を蹴散らす。すると、どこかから怒鳴り声が聞こえてきた。
「ったく、ここなら誰もこねえ! さっさと寄越せや! アイツみたいにキルされたくねーだろ?」
「ひっ……」
恐喝?
私はその光景を目にして少し嫌な気分になっていた。だが、嫌な気分になったのは私だけじゃないようで。
私の隣に立っているワグマが。
「ゼーレ。助けてやりなさい」
「いいのかよ。キルするかもしれねえぜ?」
「許可します」
「あいよ」
私は茂みを掻き分け女の子の前に立つ。
「お前、なにしてんの?」
「ちっ、邪魔すんなよ」
「何してるかって聞いてんだ。質問に答えろハゲ。それともなんだ? 人の言葉がわかんねーのか? 悪いな、私は人の言葉しか喋れないんだ」
「……死にてえみてえだな。じゃあ死ねや!」
と、剣を抜いて襲い掛かってきた。
私は避けて相手を掴み、腹部に膝蹴り。男を捕まえ、何度も膝で腹部に蹴りを入れる。
男は体力がなくなりかけてきていた。
「だから、何してんだって聞いてんの。答えられねーなら死んじゃうぜ?」
「あ、アイテムをもらおうと……」
「もらうだぁ? さっきのが貰う態度なのかおい。舐めたこと抜かしてんじゃねえよボケ」
「ご、ごめんなさい! もうしません! 死ぬ、死ぬからやめて……」
というので、私は男を離してやった。男はひいいい!?と叫びながら逃げていく。
私は女の子に声をかける。
「おい、大丈夫かよ」
「は、はひっ! ありがとうございますっ!!」
「私が通りかかったからよかったものの、なにかあの男と因縁があんのか?」
「あー、その、あの人が狙ってるレアドロップをドロップして……それを寄越せと……」
「なるほどな」
レアドロップは出ない人にはとことん出ないらしいから、奪った方が早いという結論が出ちまったわけだ。
ま、そういうことを考えるからバチがあたる。
「そ、それにしても強いんですね……。あの人レベル高いのに」
「ステータスの差なんて喧嘩の腕で誤魔化せんの。それより、帰るんなら気をつけていけよ? あの男がどこかにまだいるかもしれんし」
私はそう言ってワグマのところに戻ろうとすると、その女の子が私の装備を掴む。
「あ、あの、私はイリーナって言います。その、怖いので一緒にいさせてください……」
「……はぁ。私はゼーレだ。ついてきな。あっちに私の友人いるし、そいつらにも伝えておけ」
「はいっ!」
とてとてと小動物みたいに私の後ろをついてくるイリーナ。小柄な女の子だ。私もこんな小さかったら可愛かったんだろうか。
私たちはワグマのもとにもどる。
「あ、あの、一緒に行動させていただきますイリーナですっ! 職業は付与術士ですっ! サポートは任せてください!」
「私はワグマです。魔法使い。こっちは戦士のオイリです。よろしくお願いしますね」
「よろしくぅ! ま、楽しくやってこーね!」
「は、はい!」
ワグマとオイリはジロジロとイリーナを見ている。
「で、小学何年生? 6年生くらいかな」
「わ、わわ、私は高校一年ですけど……」
「私たちと同じなんですね。ただ、高校生にしては背が……」
「小さいんですよね。私もわかってるんです……。150もこえてません……」
「私よりチビの人初めて見た!」
オイリも割と背が小さいもんな。
「オイリも背が低いですもんね」
「二人が高すぎるだけ!」
「ゼーレ、身長は?」
「私は173cmくらいだったか」
「あ、私は170cmなので負けました」
よし、勝てた。
「巨人二人ですね……。あ、圧がすごい、です……」
「温厚な巨人と暴れん坊な巨人の二人だよ」
「温厚だって褒めんなよ」
「温厚なほうは私ですよ?」
「…………」
私も今は温厚だと思いますが。