◇ 存在してはならない
私はお父様にゲームから呼び戻されました。
お父様が私の部屋に来て、なにやら少しお怒りの様子。
「どうしたんですか?」
と、私が訪ねると。
「どうもこうもない! 花音という女の子……。あれはちょっとさすがにまずい存在だった!」
「まずい存在?」
お父様が紙を見せてきました。二つの書類を。
片方はDNA鑑定の結果が書かれており、片方はなにやら調査していた紙のようです。そういえば花音のことを調べるといっていましたが……。
私は書類に目を通してみます。
「……えっ」
思わず声が出てしまいました。
というのも、書かれていた内容は。
「阿久津 清治と市ノ瀬 花音の親子確率が99パーセント……?」
なんと、私の叔父と親子関係が証明されています。
叔父はもちろん市ノ瀬という名字の人と結婚していません。もう片方は生みの親についてかかれています。生みの親は市ノ瀬 カサンドラという日本人の姓のドイツ人。
このことから、叔父は市ノ瀬 カサンドラという女性と不倫していたこと、そして、厄介なのが不倫して捨てたのがうちの家系ということ。
この事実は本当にまずいですね。たしかに、花音は阿久津家にとっていてはいけない存在……。
「どうするんですか。花音を」
「あれは我が家の汚点の子……。あの子に罪はないとはいえ……。不倫を隠すというにはあの子の存在が大きすぎる」
「叔父さん……。昔からうさんくさかったですけれど……」
「あれを野放しにした私が悪かった」
叔父さんはいつも笑顔でニコニコしていました。
私たちにいつも優しくしてくれていたのですが、幼少期からどことなく恐怖感を感じており、私としてはそこまで近づきたくない人。
その正体がこれ……。
「クソ……。予想外だ。あの子の出生を調べるとこんな事実が出るなんて……」
「もう、全部白状するしかないですね。あることないことでっちあげるほうが自分の首を絞める結果になりますし」
「ああ。だが、月能。お前も覚悟することだ。我が家の汚点を公表するということは、お前の肩身も狭くなる」
「理解しております」
「ったく……。あいつ、面倒なことを……。市ノ瀬 カサンドラという女性は自殺しているし……。ろくでもない。あいつのせいで二人の人生が狂っている」
「私たちも狂ってますから阿久津家の人たち全員でしょう」
「あとあっちの結婚相手もか……。救いようがない」
お父様は頭を抱えていました。
「で、発表の場はどうするのです?」
「……近々行われる私の誕生会。もちろん、弟夫婦も呼ぶつもりだった。その時に行おう」
「わかりました。このことを花音には?」
「いうしかあるまい。当日、混乱させたくはないからな」
「わかりました。私の口から告げておきます」
まさに藪から蛇ですね。
私はしょうがないので、ゲームにまだログインしている花音を呼び出すことにします。私はログインして、花音にフレンドメッセージを送り、ログアウトさせることにしました。
気が滅入る。
ずぶとい私でも、ちょっとこればかりは……。というか、花音が予想以上に高スペックな理由はその血筋でしたか。
私の従姉妹……ということになるんですよね。
阿久津家の血が入っているから高スペックなんですか。はぁ。
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