弱者である自覚
私は奥へと進んでいく。
すると、そこには一人の男性が立っていた。ゾンビのような青白い肌をもっている。
「来たか。挑戦者よ」
と、その男は剣を構えたのだった。
構えがしっかりしている。それに、とてつもなく感じる強敵の雰囲気。油断できない相手だなこいつは。
私は拳を構える。
「汝の実力、我に見せるがよい」
「よし来た」
先手必勝。
私はまず一撃を加えようと殴り掛かる。だがしかし、男はその攻撃をよけた。
避けて、剣を突きあげようとしたので、私は手を竜変化させぶん殴る。刃の部分を殴ったらダメージは食らっていたと思いながらも、剣の軌道をずらした。
私はそのまま地面に落ち、立ち上がりちょっとだけ距離をとる。が、すぐに男は剣を持ち直し向かってきたのだった。
私は剣をかわし、まずは顔面に一発食らわせる。
「オラァ! まず一発!」
男は吹っ飛んでいく。
だがこれで終わるわけがない。男は立ち上がり、再び剣を持ち直した。そりゃあいつらを追い込むやつらだ。一発で倒れるわけがない。
だがしかし、男の様子がおかしい。
「侮っておった。驕っておった。汝のその強さ……。ならば我も本気でやらねば失礼であるもの」
と、その瞬間だった。一瞬だった。私に一瞬で間合いを詰めたかと思うと、素早い一撃が繰り出される。
私はただぼーっと見ていた。あまりにも早すぎてちょっとだけ反応が遅れた。私は剣を殴るが、その時すでに剣は私の腹部に突き付けられている。
軌道を少しずらしたが、ダメージを受けたのだった。
「なんと……!」
「ちっ……。反応が遅れた」
目にもとまらぬ一撃。もろに食らっていたらまずかった。ダメージをものすごく受けたのを見るに、もろにくらったら瀕死間違いなしだな。
そして、まずい状態が、もう鬼神スキルは使えないということ。鬼神スキルは最大HPの半分を消費するのだが、もう最大HPの半分を下回っている。最初から使わないで正解だったけれど不正解でもあった。
「すごいものだ。我の剣さばきについてこれるとは」
「ありがとよ!」
「ふむ。ならば次の一撃。次の一撃をいなすことができたのなら、汝を認め力を与えよう」
「あと一撃? 嘘はねえだろうな」
「無論。嘘などという無粋な真似はしたりせん。安心して、受けるがよい」
上段の構え。
やってくる攻撃は袈裟切りか、それとも突きか。どちらにも対応できるようにしないとだめだ。だがしかし、この一撃で終わるのは安心する。
あと一撃。耐えればいいということだ。
正直言って、この名前も知らない男に勝てる自信はねえ。私自身、強いという自信はあったがこの男の前では無駄なものだった。
私は弱者であるという自覚をもって挑まねばならない。倒せるビジョンが全く見えない。
だからこそ、あと一撃。一撃を耐えるだけというのはものすごく安心できる。
総合的な実力では劣っていても、一撃をいなすことは私ならできる。
「これは私に対する試練みたいなものか」
私は剣を見据える。そして、受ける構えをとった。
「来い!」
「南無!」
と、するどい突きが私の腹部を狙ってくる。
一瞬。躱すこともできない一瞬。私は剣を思い切りぶん殴る。剣が男の手から離れ、飛んでいったのだった。
男の手が私の腹部に当たる。ダメージは食らったが、武器がないので死ぬほどではない。
「……見事」
「っしゃあ!」
私の勝ち!
「我の敗北を認め、汝に力を与える」
《種族が竜人から常世の竜 に変化しました》
《スキル:常世之闇 を取得しました》
《スキル:黄泉平坂 を取得しました》
《ステータスが変化します》
《ステータスの最高値二つが強化ボーナスでステータスアップします》