居候
翌日から私は月能の屋敷に住むことになった。
私はいろいろと必要なものをまとめ、車に乗り込む。
「なぁ、月能の家の執事さん」
「はい、なんでしょう」
「あの親父さん、私を認めてんのか? 私はこれでも有名な不良だし、本来あいつらがかかわっていいはずがない」
「そうですね……。まぁ、当主様は強い人が好きですから」
強い人が好き……。いや、だがしかし、そう簡単に認められるわけないだろう。娘を愛する気持ちはわかるし、人間関係を制限したいのもわかる。
私のような悪いやつに近づけさせたくないのは親心だろう。
「認めていますよ。今では」
「……そうっすか」
「さて、そろそろ到着いたしますよ」
といって、月能の屋敷についたのだった。
家の前に停められ、私は着替えとか入った荷物を手に持ち下りる。月能はゲームやってるから勝手に来なさいといっていたので出迎えはもちろんなし。
いや、出迎えはいらないがどこで暮らせと。外か?
「……私はどこにいきゃいいんだ」
私は屋敷の前で立ち尽くしていると。
「やっときましたね」
「……あれ? 月能?」
月能が扉を開いてでてきた。
「なんで? ゲームしてねえの?」
「先ほどお父様から連絡がありまして。屋敷の部屋に案内してあげろと。お父様、急に仕事が入ってしまったので私が代打ということで」
「ふーん。で、どこだよ。外か?」
「外のほうがお好みならそちらでもよいですよ」
「冗談だろ。で、どこだよ。居候させてもらう以上、文句は言わねえ。どうせ私の部屋になる場所だしな。雨風しのげる場所ならどこでもいいぜ」
「こちらです」
といって、案内されたのは。
一室が私の家のリビングルームかって言うほどでかい部屋だった。
ベッドもキングサイズなのかものすごくでかく、テレビが備え付けられており、トイレもあるようだ。この部屋で暮らせるぐらいには広い。
「え、こんなとこいいのか? もうホテルみたいな感じの部屋じゃねえか……」
「お父様があなたに選んだコンセプトは高級ホテルのような快適さですから。私は図書館に住む娘という感じの部屋になってます。本がびっしりあるので、読みたいものがあれば来るといいですよ」
「……部屋によってコンセプト違うの?」
「お父様は内装コーディネーターですから」
すげえ。
阿久津家の家の人はそういう風に自分の家も改造して楽しんでるのかよ。たしかに、ホテルっぽいといえばぽい。
小さい冷蔵庫も、水道も、ポットもある。今日から私の部屋なのか? ここが……。
「この屋敷にはトレーニングルームもありますから。そちらも案内しましょう。こちらです」
といって、トレーニングルームに案内される。
トレーニングルームには、ジムにあるような器具ばかりあった。ベンチプレスなどはもちろん、ランニングマシン、チェストマシン、ラットプルダウンマシンなどジムに負けない設備の良さだ。
「マジかよ……。なんでこんな部屋あるんだ?」
「お母さまの弟が筋トレ趣味でして。独り立ちして筋トレ器具もってくのはつらいということでおいていったんです」
「なるほど……。趣味でこんな本格的なマシンそろえるなんて馬鹿じゃねえの……。さすが金持ち。趣味にかける金が尋常じゃねえ」
もう驚くしかない。
月能の趣味もこんな金をかけるしな。っていうか、月能は金を使うこと自体に快楽を見出してるからこいつ、趣味=金を使うだからな……。
「改めてお前の家が怖くなってきたぜ……」
「ありがとうございます」