今の親も親で
死神狩りを終え、私は王都の拠点に戻り、一時ログアウト。
晩飯の時間。私はカップ麺を食べようと棚を開くと車の音が聞こえ、私の家の前で止まった。
「なんだ?」
誰かが降りて来る。
まぁ、あんな高級車は一人しかいないと思うけどな。私はしょうがないのでカップ麺を片手に玄関に向かう。
すると、そこには今朝戦った月能父と月能がいた。
「あー、なんすか?」
「ディナーでもどうかと思ってね」
「ディナー? 私、そんな礼服とか持ってないんで格式高いとこ無理っすよ」
「えー、いこうよかのちん!」
「お前も乗ってんのかよ……」
「また夕食カップ麺でしょ? 体に悪いぞー」
「今はカップ麺も進化してるし大丈夫だ。料理なんてできねえし、一人ならこんなもんだろ」
カップ麺は手軽で素早く食べられていい。
私はカップ麺を下駄箱の上に置き、そのまま車に乗り込んだ。礼服とか着るつもりはねぇしな。
「髪とか整えなくて良いのか?」
「別にいいんす。喧嘩とかしたらすぐ崩れるんで髪型とかそこまで考えないんすよ」
「そういうとこほんとズボラですねぇ」
「いんだよ。どうせ私は恐怖の視線しか送られねえから誰も私のことを見ねえだろ」
「少なくとも私たちはちゃんと見てるんですけどね」
お前らはだろ。
私は多分生まれる性別を間違えた。男に生まれるべきだった。まぁ、もう言っても仕方ないが。
「髪型とかちゃんとしよ? そのほうがかわいーって!」
「嫌だよ。別に可愛くなりたいとか思ってねぇよ」
「花音の悪いところですねぇ。意外と卑屈なのはその出生からですか?」
「お前ほんとに容赦なく聞くな」
お前のそういうとこ嫌いじゃねえよ。
ったく。私の元両親を思い出させんな。私自身、忘れたい奴らだと言うのに。
「で、ディナーってどこでやるんです?」
「私の家ですよ。さすがに私たちの行く店はどこもドレスコードがあるので。我が家のシェフも一流の店と変わらないくらい美味しい料理出て来るので」
「そう。なら気楽でいいな」
「私の家に来るのが気楽とは。肝が据わっているのか」
「フツー緊張するよ! 金持ちの家でしょ!? 高い彫刻品とかあるのかな!? 触ったら壊しそー……」
「お前の家も割と高い家だろうが……」
「そーなの?」
お前、自覚ねえのかよ。
「お前の住んでるマンション、あそこものすごく家賃高い家だぞ。セキュリティとかバッチリだからな」
「そうですね。衣織の家は立地も良ければセキュリティも万全。両親が有名な俳優と女優ということもあるのでしょうけど」
「そーなんだ……。一軒家のほうがいいのかと」
「お前な……」
こいつは物を知らなさすぎる。
「私の家が一番格式低い。20年ローンで築年数も結構経ってるしな。うちそこまで裕福じゃねぇし。贅沢ばかりしてないで少しは学べ。私が惨めになるだろうが」
「ご、ごめん……」
「あまり自分のことを貶すのはやめたまえ」
「いいんすよ。私は。今の両親もちょっとアレな人だし」
「アレ? どゆこと? 引き取ったんならいい人じゃない?」
「誰も彼もが善意で引き取るわけがねえってこった」
私は親に恵まれない。
ぐれたのはもちろん自分のせいだ。環境とかのせいにするつもりは毛頭ない。
だがしかし、親に恵まれてもいいとは思う。
「……どういうことですか?」
「私の今の親も打算があって引き取ったんだよ」
「打算?」
「今の母親の方が不妊症でな。でも、結婚してるから見栄を張りたいってことで私を引き取ったんだよ。そっからは大体放置されてる。引き取って、食べるもん食べさせること以外は放置。今だって勝手にハワイにしばらく住むとか抜かしてるし。今の親も親なんだよ」
「……そうなんですか」
「んで、ちょっとだけ月能にお願いがあるんだ。ここまで話したから話だけでも聞いてくれ」
「どうしたんです?」
「金貸して、くれない?」
私がそういうと、少し固まっていた。
というのも残高がヤバくなっていた。親がハワイで生活費を振り込むのをやめたせいで、ここ一年で大体使い切ってしまった。
高一のときはバイトをができなかった。親からやるなと言われてたし、やってもよかったがバレた時に面倒だし。
だからまぁ、そこまで金がなかった。今のヘッドギアも安い時に買って、高くなったら売ろうと思ってたものだしな。
「え、お金ないんですか?」
「今月あと21円で暮らさなきゃいけないし、収入の見込みがないから……」
「えっ、振り込んでくれないの?」
「ハワイ行って頭がちゃらんぽらんの親だぞ。数日で忘れるわ」
「仕方ないですね……。さすがに可哀想というか、まず死にます。お父様」
「分かっている。話を聞く限り……少しばかり同情してしまうな。不良と呼ばれるような性格になったのは我々、周りの大人のせいか」
「別に。誰のせいでも」
「そうだな……。しばらくは我が家で暮らすといい。衣食住すべて補償しよう」
「……いいんすか?」
「構わん。今日のお詫びとでも思えばよい。ただ、君の過去は調べさせてもらうぞ」
「まぁ、いいっすよ」
背に腹はかえられぬ。
基本的に周りから恵まれないなあ主人公……