怖がられる存在
昼が過ぎ、私と月能は学校に登校してきた。
月能に関しては昨日は無断、今日も遅刻ということでがみがみ怒られ、私は普段は素行そんなによくないからあきらめられているだろうとたかをくくっていたら無事怒られたのだった。
「どしたのそのケガ!?」
「喧嘩したんだよ……。こいつが巻き込みやがったから」
「ええ!?」
クラスメイトもざわついていた。
普段から私は腫れもの扱いで、触らぬ神に祟りなしという感じなのか、だれも怖がって近づいてこない。
別に構わないのだが、喧嘩してきたってことを知るとさらに怖くなってしまったらしい。
「衣織。ノート見せてくれ。さすがに遅刻した分はやんねえと」
「おっけー。つきのんは昨日のもでしょー?」
「そうですね。お願いします」
「お前学年一位なんだから勉強の必要ねーだろ」
「あなたも二位なんですからする必要ないのでは?」
こいつ本当にああいえばこういう……。
私はむすっとしながら、道中買ってきた焼きそばパンを食べる。食べていると、クラスの中でも低身長の女の子が、私の隣を通ったかと思いきや、衣織のカバンに躓いて転び、その手が私の焼きそばパンに当たり、黒板に焼きそばパンがぶち当たる。
「んなっ……」
「ひいっ!? ごめんなさいっ! 殴らないで……」
「おい衣織! お前こんなとこにバッグおいてんじゃねえ! ってかお前席遠いだろうが! なんでこんなとこおいてんだ!」
「あ、今日こなさそうだからって置いたままにしてた!」
「おい」
「いやぁ、ごめんごめん。ほら、顔怖いよ? 今日子ちゃんビビってるし……。笑顔笑顔。にこーって……あ、あははぁ……」
お前……。いや、マジでお前さぁ……。
「あ、あの、ごめんなさい……。弁償でも何でもしますからぁ……」
「いや、お前にゃ怒ってねえよ。衣織だよ衣織! お前さぁ……」
「あ、ソロソロヤスミジカンガオワルジカンダナ!」
「お前、放課後覚えておけよ」
カバンを回収してそそくさと自分の席に戻る衣織。
私は今日子……日向に悪いとだけ言っておく。私はやっぱこういうことしてきてるし、こういう怖がられ方するのは慣れてる。
「ま、今度から足元気をつけろよ」
「は、はいぃ……」
休み時間が終わるチャイムが鳴る。
五時限目は社会科で、先生が入ってきて、黒板を見る。
「なんですかこの焼きそばパン」
「それ衣織のでーす」
「あ、ゼーレ……じゃない、かのちん!?」
「衣織がふざけて投げてましたー」
「花本さん。後で職員室へ」
「かのちん……」
「けっ」
お前だけ何の罰もないっていうのはずるいだろう?
授業を終えた後、衣織がどこかに連れていかれて、六時限目が始まる前に泣きながら戻ってきたのだった。怒られたくらいで泣くなよ。
そして、放課後。帰ろうとしていると、日向に呼び止められたのだった。
「あ、あのっ! 市ノ瀬さんっ!」
「あ? んだよ」
「わ、わわ、私を弟子に、してくださいです!」
と、唐突な弟子希望者が現れたのだった。