空手vs喧嘩
翌日。私は学校へ行こうと扉を開けた時だった。
黒い高級車から、40代くらいの男性が下りてくる。少し月能の面影があり、こいつがきっと。
「ふむ、蒼眼の死神と呼ばれる不良……。私は認めんぞ」
「認められたかねえよあんたに」
「認めるつもりもない! さぁ、始めようではないか。ここでは目立つからな。仕方がないが、我が敷地内でやろう」
ということで、月能の屋敷にお招きされたのだった。
月能の屋敷の庭。月能父が半裸になり、空手の構えをとっていた。私も拳を構える。執事の人が、はじめ!と声を上げると、回し蹴りが飛んできた。私は防ぐが、結構いてえ。有段者は伊達じゃねえな。
「ほう?」
「いっ……」
「受け止めるか! それも関係ない! 倒れるまで殴るだけよ!」
と、今度は襟首をつかみ、投げてくる。私は力を籠め踏ん張り投げられるのを拒否。だが、力負けし投げられる。
背中を強く打ち付けた。が、この程度の痛みは屁でもねえ。
「学校があるってのになんで喧嘩なんかさせられてんだか……」
「無駄口たたいている暇あるのか!」
と、顔面に拳が飛んできた。鼻からだらりと血が出る。
私は、鼻血をごしごしと制服の袖でふき取り、親父さんの顔面をつかみ、膝蹴りを食らわせた。さすがに膝蹴りはいたかったのか、鼻血を出して顔を抑える月能父。
「まだ私の番は終わらねえ」
私は足払いをして転ばせる。転んだ月能父は地面に手を突いた。その瞬間を見定め、膝蹴りを腹部に食らわせる。
全体重を乗せた膝蹴りは、さすがに痛い。月能父も言葉をなくし、うずくまっている。
「もうやめだ。これ以上やったら怪我する」
「……見事」
「勝ちは私でいいだろ。月能父。これでてめえの娘と私が付き合って……これじゃ恋人関係みたいな言い方になるからやめるか。友達でいてもいいんだろ?」
「うぐぅ……」
肩が痛い。背中も痛い。腕も痛い。顔も痛い。が、最後に立っているのは私だ。
私は執事に私の勝ちだと告げ、学校に行こうとすると。屋敷の門の前に家でぐっすり眠っていた月能が立っていた。
月能は、さすがですと肩をたたく。
「お前、ここまでやらせたんだからマジで後でなんか奢れよ」
「家の一軒くらいならいいですよ」
「そこまではいらねえよ」
月能は父に駆け寄っていく。
「お父様。これで文句はないでしょう? 取り決めによれば、こちらが勝てば自由に付き合ってもよいということでしたね」
「…………」
「ねえ、お父様」
「差し出がましいのですが、今茂治様は腹部に強烈な膝蹴りを食らい喋れる状態ではありません」
「とりあえず病院が先ですね。ったく。ほら、さっさと連れて行くんですよ」
「はっ、ただいま」
そういって、黒い高級車がそばに停まったかと思うと、担架に月能父がのせられ運ばれていく。私も付いていくことにした。
まぁ、ここまで付き合ったしな。
病院につき、お互い医師の診察を受ける。
月能父は腹部の骨にひびが入っており、また鼻の骨が折れているということ。私も鼻の骨にひびが入っており、肩、腕が内出血。
「治療費はお前出せよ」
「もちろんですよ」
「ああ……」
月能父は包帯を巻かれながら、声を出す。
「私の負けだな」
「あら、ずいぶんと潔く負けを認めるんですね」
「勝負においては私は潔くすると決めている」
月能父はそういって。
「悪かった。だがしかし……親にくそくらえというのはやめなさい」
「それはそうだな。お前、私とつるんでやっぱ口悪くなってんだろ」
「そうですか? まぁ、それは環境が悪いので。私は悪くありませんし」
「環境のせいにするんじゃねえ!」
「それはそこの不良少女と同意見だ」
こいつまじでずぶとい。
「お前は顔は私に似たが、性格は母親寄りだな……」
「ほめても何も出ませんよ」
「ほめてねえだろどう見ても」