三日月の龍
晩飯も食い終わり、再びログインする。
防具も一式揃えたので次は武器。だが武器を買う金はない。
また狼の群れに突っ込んで稼ぐか。
「あら、早いんですね」
「最後か! めっちゃ早く食べてきたのに!」
「お前ら来たのか」
二人も晩飯を終えたようだ。
「んじゃ、ま、行きますか」
「いくって?」
「レベル上げだろ。レベル上げなきゃステータスも上がんねーしな」
というわけで街の外にやってくる。
空はもうすでに陽が落ちて月が登っている。三日月が私たちを照らす。
夜となると魔物も少し変化しており、アニマルデッドというアンデッドの姿も見えた。
「さて、オイリ、ワグマ。戦ってみろ」
「私たちがですか?」
「ああ。お前らの実力だって知っておきてえし」
「わかりました」
ワグマはアニマルデッドに火の玉を放つ。
初期魔法がそれなんだろうな。威力はまあ、初期魔法ってことで許せるが、弾速が遅い。すぐに見切れてしまう。スキルが何かで弾速強化できるのだろうか。
「ほら、オイリ来たぞ」
「う、うん」
オイリは剣を構える。アニマルデッドはこちら目掛けて走ってくる。牙を広げ、ワグマに噛みつこうとしたところでオイリはその攻撃を受けとめ、剣で突き刺した。
うーん、無難。面白みが一切ねぇ。
「どうですか?」
「まずまずだな」
「そりゃ戦いが得意なゼーレにはそう見えるけど、周りから見たら上手い方じゃない?」
「いや、今のは誰でもできる技能だぞ」
誰でもカウンターはできる。
「まあ、お前らにそこまでの戦闘センスは求めてねえよ。ほら、まだ狩るぞ。レベル上げしなきゃすぐ魔物にやられるしな」
「はーい」
私たちはとりあえず魔物を狩り続けていると。
私たちの上空を何かが通った。それは額に三日月の紋章をつけたドラゴン。
そのドラゴンは私の方をチラッとみる。その瞬間、そのドラゴンは口を開け、何か魔法が飛んできた。
「おわっ! なんだ?」
魔法は私にぶち当たる。
不意ということもあり、かわすこともままならなかった。体力は削れていないようだが、何があったのか。
《三日月龍の加護を取得しました》
というアナウンスが流れる。
三日月龍の加護……? なんだよそれ。三日月龍ってのがそもそもなんだ。加護? 加護ってなんだ。
三日月龍というのは後で調べてみるとしよう。
「大丈夫ですか?」
「まあ……。なんか加護みたいなのもらったけど」
「へぇ。加護」
「三日月龍っていうらしいな。さっきの綺麗な龍」
「黒い鱗の端が黄色でしたよね。三日月のような鱗でした」
「あれは一体なんなんだろうな」
龍、あれは強そうだ。
アレを討伐できたらすげえんだろうな。いや、討伐出来ないとしても戦ってみてえ。
「アレと戦いてえな」
「……無理ですよアレは」
「実力差ありすぎるよ」
「いんだよ。勝ち負けじゃなく、戦ってみてえって話だから。このゲームは自由なんだろ? ならアレと戦える機会ももちろんあるはず。しばらくは私はそれを目標にするか」
あの三日月龍との交戦。
私の目標だ。