貴族の依頼
学校が終わり、ゲームにログインすると。
「なぁ、ゼーレ。ちょっといいか?」
と、ハーレーがなにか相談したいことがあるらしかった。
私はハーレーに割り当てられた部屋に入る。そして、椅子に座った。
「で? 相談ってなんだよ」
「その……な。俺の素手での喧嘩、どう思う?」
「あー」
そのことか。
確かに前々から気になってはいた。というのも、素手での喧嘩はこいつ、そこまで強くねえ。いや、オイリたちと比べたら強いんだけど……。どこか動きづらそうにしている。
そのことを本人はきちんと自覚していた。
「やっぱお前にはわかってたか」
「そりゃまぁ……。なんとなくはわかるが。もしかしてお前、素手での喧嘩はほとんどなかったのか?」
「まぁ……。現実世界じゃ喧嘩だつってもそこまでしてねえんだよ。お飾りみたいな……。ほら、あるだろ。中坊が悪さにあこがれるやつ。俺もそれだった」
「あー、あるよな。悪いこと=かっこいいって思うやつ」
「だから……実際はそこまで喧嘩なんてしたことねえんだよ。そのことで相談があってな……」
「……悪いが素手での喧嘩は多分これ以上無理だぞ」
「……知っている。俺の才能の限界はなんとなくわかってる」
なるほど。
「俺に合いそうな武器種を教えてくれないか」
「ハーレーに?」
「ああ。戦闘のことならばゼーレに相談すべきだからな。それともあれか? 俺には合う武器種はなさそうか?」
「……いや、なくはない」
ハーレーは私以上に身のこなしが軽やか。
「槍が一番合うんじゃないか?」
「槍?」
「身のこなしが軽やかだから素手よりかは棒術のほうが向いてるだろうし、槍か棒術のどちらかだろうとは思う」
「槍か。わかった。槍を練習してみる」
「ああ。がんばれ」
ハーレーは槍を買いに行った。
それにしても、私はバトル専門になってるのか。なんつーか、頼りにされてはいるが……。面倒ごとまで私に任せそうな気分。
私は部屋に戻ろうとすると、受付NPCが私を呼び止めた。
「ゼーレ様。依頼主でございます」
「依頼ィ?」
私がそちらのほうを見ると、なんとも豪勢な服を着た髭を生やしたおじさんが髭をいじりながらこちらを見ていた。
「ほぉ、竜人」
「あ、ども……。依頼っすか」
「そうだとも。頼みたいことがあってだね……」
「じゃあこちらへどうぞ」
私は応接ルームへ移動した。
受付NPCがお茶を出した。
「まず自己紹介をしよう。私はフルード・フリューレル。爵位は伯爵位を賜っている。貴殿らクライノートに頼みたいことがあるのだ」
「なんす……でしょうか」
「実は私の娘が病気でな……。薬が必要なのだ。それも、いち早くな……。だが、その薬のもとである薬草があの隕石平原に生えているのだ。医師がいうには、モンスターもいて、隕石が危険だということで止められての……。申し訳ないが、その薬草を私の代わりにとって来てほしい」
「薬草?」
「こういうものだ」
と、薬草がとられた写真を見せてきた。
ぐるぐると葉っぱが渦巻きにまかれており、きれいな花が咲いている。これが薬草だというらしい。
「名前は星の花。どうか頼む。報酬ははずもう」
「いいっすよ。でも、その隕石平原の前まで連れて行ってもらえたりしませんか」
「それぐらいはかまわん。だが、馬たちも隕石を怖がるからな……。前までしか送れぬ」
「それぐらい構いませんよ。では、今からまいりましょうか」
「準備はよいのか?」
「早くしないと娘さんが危ないのなら準備している暇はほとんどないっすよ。私はこれでも割と実力には自信あるんで」
「……わかった。信じよう。では、向かおうぞ!」
隕石平原へレッツラゴー。
感想で救える作者の命もある