侍の女
私たちは苦戦を強いられていた。
手数が多く、さばききれないヌンチャク。さすがにこれは難しいぜ。私はしょうがないので、覚悟を決める。
私はヌンチャクの片方をつかんだ。そして、そのままヌンチャクを引っ張る。こういう行動はいつでもできたが、やりたくなかったのは。
「ホワチャア!」
左手に持っていたヌンチャクがもろにわき腹に当たったのだった。
やりたくなかったのは、防御ができないからもろに食らってしまうということだった。防御していたからこそ、最小限のダメージで済んでいたが、一発大きなものをもらって割と瀕死寸前。もう体力が残りわずかしかねえ。
「こっち倒してもあっちがいるのが厄介だが……死ねや!」
引っ張られたクンフースワンにアッパーを食らわせたのだった。
竜の手に変化させ、力を込めて殴ったんだ。死ぬか、瀕死まで体力が追いやられるかのどちらかだ。
体力はないが、手数や素早さ、攻撃力で苦戦を強いられる大ボスタイプ。だからすぐにやれる。
「こっからは私の時間だぜ、クンフースワン」
私は地面を強くとび、上空に殴り飛ばされたクンフースワンを両手でがっちりとつかみ、地面めがけて思いきり投げ飛ばす。
そして、私はクンフースワンめがけてそのまま落ちていく。ゲームだからこそのジャンプ力だなこれは。
クンフースワンはふらふらと立ち上がるが、もう遅い。
「とどめェ!」
私はクンフースワンの脳天に思い切りかかと落とし。
脳天にもろにくらったクンフースワンはふらふらとして、バタンと倒れる。
「キエッ……」
と、まだ意識があるようだ。私の服をつかみ、手に持っていたヌンチャクを。
「キエッ……」
「くれんのかよ」
「キエッ……。キエエエエッ!」
と、ヌンチャクを私に手渡し、息絶えた。
このヌンチャクは装備にもなるらしく、クンフースワンのヌンチャクという武器だそうだ。私はとりあえず今は使わないのでヌンチャクをしまう。
「さて、残り一体……」
「終わったんなら助けてぇ!」
「今行く……。体力が残り救ねえけど……なんとかな」
と言いかけたとき。
一閃。なにかがクンフースワンの横を通り過ぎた。そして、クンフースワンにはものすごい大きいダメージが入る。
「なんだァ?」
突如として現れたのは袴を着た刀を持ったポニテの女性。刀をキンっという甲高い音を響かせさやにしまう。
「なんだお前」
「助けてやったのにそんな言い草か?」
「あー、すまん。私の言葉は割と荒っぽいから許してくれ。で、だれだお前」
「ふむ、まあいいだろう。私はユズリハ。職業は剣士だ。君は? 私が見る限り、結構なやり手だろう? 実力がありそうだ」
「ゼーレ。職業は武闘家だ」
「ゼーレ。覚えておこう。フレンド申請もしておこう」
と、フレンド申請が届く。
「助けてくれたんだろ? ありがとよ。すごい一瞬だったな。なんかのスキルか?」
「光芒一閃という居合切りスキルだ。この技は威力はあるが隙が多くてな。ああいう不意を突かないと攻撃できないのだ」
「へぇ」
「それより、もう一体クンフースワンがいなかったか? クンフースワンは二体で一体のはずなのだ」
「それなら私が倒した。おかげで割と削られたけどな」
「……あのクンフースワン一体を単騎で? すごいな。貴殿は」
「まぁ、な。喧嘩なら得意だ」
私たちが話していると。
「あのー、話してないで助けてくれると嬉しいんだが。さすがにゼーレでも苦戦するようなやつ、俺らじゃ今は無理だぜ」
「ガードで手一杯!」
まだ生きてたの忘れていた。
「しょうがないですね。一撃で決めましょう」
「わかってる」