モグラ帝国の逆襲
王都の地下にモグラが帝国を築こうとしているらしい。
私たちは再び井戸から地下へと入っていく。王都のどこかしらの地下にモグラがいるはず。私たちはそれの討伐が目的となった。
「明日はログインできないので、今日が勝負ですよ」
「大晦日、そんな忙しいのかよ」
「大晦日の夜は豪華にしますから。料理人と一緒に食材を見に行って、騒ぐ準備をします」
「ふーん。じゃ、早急に片づけんぞ」
「はい。ゼーレならできますね」
私たちは奥へ進んでいく。
すると、なにか音が聞こえてきた。ざっざっという音。目の前には何かがいる。私は拳を構えた時だった。
背後に誰か立っている。
「うきゃー--! 人間ー---!!」
「なにっ!?」
「おやぶぅん!」
と、後ろに立っていたのはたいまつを持った小さいモグラ。そして、振り向いたのは爪がちょっと鋭利な大きなモグラ。
大きなモグラはその詰めをこちらに向けてくる。
「人間、ここを立ち去れ。ここは俺らが掘ってる」
「……掘るのをやめさせに来たんだよ。この上、王都がある」
「……だからどうした?」
「王都の下を穴だらけにされると王都が崩壊するんだよ。小せえ穴ならまだしもこんなバカでかい穴掘られちゃな……」
話が通じる相手みたいでよかった気もするが。だが、まだ戦わないとは限らない。
「ふむ。そうなるとこの穴も陥没してふさがってしまうな。それはワシらとしても避けたい。だが、お前らの言うことが本当だとは限らない。おい、子分、上に掘ってみてこい」
「了解っすよ!」
たいまつを持ったモグラはたいまつを土の壁にさし、上へ掘り進めた。そして、すぐ戻ってくる。
「建物がたくさんあったっす!」
「……そうか。お前らのほうが正しい。じゃあ、あきらめて移動することにしてやる」
「ならよか」
「お前らが、このワシを倒せたらな」
と、爪を振り下ろしてきたのだった。
やっぱり戦闘かよ。私はモグラに近づき、その鼻をまずはぶん殴った。モグラの親分はその鼻に対する一発で気絶する。
貧弱だな。いや、的確な急所だからだろうか。急所に対する一撃で、ノックアウト。これ以上続けてやろうか?
私はまた再びぶん殴ろうとすると、私の前に子分のモグラが割って入る。
「もう決着はついたっす!」
「……まだそんな喧嘩の時間たってねえよ」
「でも親分のびちゃったっす!」
「関係ねえよ。自然界は弱肉強食だろ。モグラのてめえらが一番わかってるはずだ」
私はそういうと、モグラは押し黙る。
「でもっ……!」
「……」
「この通りっす! 移動するんでっ」
「……」
「ゼーレ」
「……ちっ。わあったよ」
殺したほうが経験値が入るんだがな。
私は拳を下した。すると、親分が目を覚ます。
「あれ、ワシは……」
「おやぶぅん!」
「なるほど。負けたのか……」
「そうっす。あきらめて移動しましょ」
「そうだな……。敗者は従うのみよ子分」
そういうと、モグラはこちらのほうに向く。
「悪かったな人間。ワシらは帝国の場所を変えることにする」
「おう。そうしてくれ」
そういうと、モグラの親分は私たちの隣を通った。
「ま、達者での。ワシらはここ近辺におるから、なんかあったらこの掘った道をたどってこい。地中にはワシらぐらいしか魔物がおらんしな」
「わかった」
これはモグラが仲間に加わった、ってことでいいんだろうか。