夕飯どうしましょうか
夜にログアウトすると、吹雪はすでに止んでおり、外は満天の星空だった。
扉に雪がこびりついたりしているので、私はプラスチック製のスコップで突っつき、落とす。私は月能から雪かきを命じられたので、寒い中、雪を掻く。
「花音。夜ご飯どうします?」
「あれ? 昨日みたいに来てくれないの?」
「吹雪で交通網がマヒしてるんですよね。私も料理できませんし……。コンビニで買ってくるしかないですかね」
「かもな。私もできないし」
私たちがそう話していると。
「話は聞かせてもらったぁ!」
と、衣織もログアウトしていた。
衣織はくしゅんっとくしゃみ。
「私作るよ?」
「……食えるもん作れんの?」
「失礼なっ! こうみえても料理得意だもんね!」
そういって、キッチンのほうに向かっていった。
心配で、私も早く雪かきを終えようとスコップを動かす。月能もスコップを手にして、雪かきを始めたのだった。
そして、終わったのは30分後。除雪車も通り、雪を見事に置いて行ってくれたので時間がかかった。
中に入ると、いい匂いがしてくる。テーブルのほうに向かうと、立派なエビフライが。
「うお、美味そうじゃん……。お前マジでできたんだな」
「信じてなかったなー? 私、両親が不在の時も多いから自分で作ってるんだよん。それに、親にいい店にも連れていってもらってるから舌も肥えてるし。ふっふっふ。いつもののろまな私だと思うなよ~?」
「これは素直に見くびってました」
「それより早く食べようぜ。おなか減ったしな」
私は席に着き、いただきますと手を合わせる。
ものすごくでかい頭付きのエビフライ。ナイフで一口サイズに切り、タルタルソースを絡めていただく。
うん、エビがぷりっぷり。タルタルも少しカレー風味でおいしい。カレー風味のタルタルもうまいものだな……。
「うまい。うまいよ衣織」
「申し分ないですね……」
「かのちんはともかく月能はいいものばかり食べてるから酷評されるかもと思ったけどよかったぁ」
「おい。それじゃ私はまるで普段からいいもの食べてないみてえじゃねえか」
「事実じゃないですか」
「普段カップ麺でしょ」
そういわれると言葉に詰まる。カップ麺は昔より味も進化しているから悪いものではないはず。うん。うまいし。
でも、こうやっていいもんを食べると、まぁ、普段からも食べたいっていう欲はあるが、私の家庭は貧乏でもなければ裕福でもないといういたって普通の家庭なので、そこまで贅沢ができない。
「仕方ないだろ。料理できないし、今一人暮らしっていう感じだから生活費そこまで使えないし。カップ麺のほうが安上がりなんだよ」
「感覚マヒしてたけどかのちん家は一般家庭だもんね……」
「親の片方がドイツ人っていうことと、自由奔放過ぎるということを除けば普通の家庭ですからね……」
「そ。そこまで金に余裕ないの」
私はエビフライを完食した。
「そういや、かのちんがコンビニでお菓子とか買ってるの見たことないな……」
「……少し恵みましょうか?」
「施しはいらねえよ……。てめえらは私の悩みとは程遠い生活してるから可哀想に見えてるけど意外と幸せだぜ」
「でも、お金を好きに使えないというのもなんだか考え物ですよね」
「お前……浪費癖すげえもんな」
「金を使ってる時が生を感じます」
さすが趣味が浪費というだけある。
「かのちんが最近買った高いものは?」
「高いものって、いくらくらいだよ」
「一万こえてたらいいかな?」
「うーん。なら三か月前にヘッドギアを買った程度だな。ヘッドギアを買う金がやっとたまったから買ったんだがな……。その時はしばらく昼飯抜きだったな」
私はいつでもお金に困る毎日だ……。
「北海道の飛行機代も割とやばかったんだぜ」
「……その分のお金は払いますよ?」
「……まじで?」
「さすがに出しますよ」
よっし。飛行機代浮いた。