決着はすぐ
ゼーレちゃんの楽しい戦闘講座~。
「ま、つっても強くなる秘訣は一つだ。よく観て、よく学ぶこと」
「どゆこと?」
何事も観察が必要になる。
「例えばだ。剣を振るときはどう動く?」
私がそう質問すると、動きを交えてオイリが答える。
実に正しい素振りの仕方だ。
「じゃあ、そうだな……。2工程に分けると、こう、振り上げる動作があって、下げる動作がある。この最初の動作なしじゃ剣は切れないだろ?」
「ふんふん」
「これはゲームでよく言う予備動作ってやつだ。これはどの行動も同じ。食べるのだってつまもうと箸を下すだろ? 箸を下さなかったら食べれないもんな。魔物も攻撃をする際、そういう予備動作がある。それを観て学べ」
強くなる秘訣は相手を観察すること。相手を観察し、相手の思考を読むこと。
予備動作が分かれば相手が何してくるかなんて読みやすいからな。まぁ、私はこのゲームじゃそういう動きしてないで割と適当にやってんだけど……。
「私の場合はこう……自分で言うのもなんだけど天才だから割かし考えないでもなんとかなってるけどよ。お前らは違う。何回死んでもいいからとりあえず行動を観察することだ。死んで覚える死にゲーだ」
これ以上のアドバイスはない。正直言って、私に教えを乞うてもそれぐらいだ。
「以上。解散」
「っし。じゃ、いきますか。一人一体だよね? みんなで協力ってのは……」
「なしだ。一人一体。そのボスモンスターが倒れるときのスクショでもいいから証拠を送れ。それだけだ」
そういって、三人は郊外のほうに向かっていった。
私とワグマも、転職のためにギルドへと向かう。ギルドでワグマは神官の職にジョブチェンジし、レベルも下がったということでレベル上げ。
「ワグマ、私と戦闘だからターゲティングされるかもしれねえからな。気合で避けろ」
「わかってます」
「私たちもボスやんぞ。そのほうが早く終わる」
私たちも魔物が出る王都郊外にやってきた。
王都郊外で、ボスモンスターがいた。トラのような見た目をしていて、尻尾が二つ。鋭い牙が口の中に隠しきれておらず、ガルルルル……とうなっている。
私は竜の手に変化させ、まずは初撃。
「ガルッ!?」
「喧嘩しようぜ」
不意を突かれたトラは吹き飛び、着地。
私めがけて牙をむける。そして噛みついて来ようとしたので躱して竜の手で顔面を切り裂く。レベル差はあれど、この竜の手は予想以上に攻撃力を増している。グリズリーより超楽だなぁ。
私はもう一撃加えようとすると、今度はワグマのほうを向いた。ワグマのほうに走って向かう。私もそれを追う。
「ワグマ! 来るぞ!」
「観察ですよね……。腕が振り下ろされそうです……!」
ひょいっと避けるワグマ。
だがしかし、二連撃。右手を振り下ろし、そして、左手を振り下ろそうとしていた。ワグマはさすがにそれは想定外だったみたいで、虚を突かれたような顔をする。そして、目をつむり死ぬのを待っていた。
「一撃で仕留められなかった時点で負けだぜ猫ちゃんよォ!」
私は蹴り飛ばす。
トラは私の攻撃が予想外だったのか受け身が取れずそのまま地面に落ちた。ぎろりと私のほうをにらむ。私は拳を構え、待ち受ける姿勢をとった。
グリズリーの時より攻撃力があるから、そこまで長丁場にはならないだろう。決着はすぐにつく。