強くなるためのステップ
まぁ、ボスモンスターはいずれ強くなるだろうから一人で狩れるようにはなる。問題は今だろう。今は私しか主力がいない以上、私がログインできない状況でクエスト達成は無理ということになる。ボスモンスター級の相手をする可能性もあるという以上、そういうことを言うしかない。が。
「それは今はさすがに無理じゃないでしょうか……」
「だからスパルタつってんだろ。強くなるにはそれしかねえ」
「でもなにも特訓なしじゃ……」
「こういうのは基本的に実戦なんだよ。机上論だけで戦えるわけねえだろ」
文句は聞き入れるわけがないぞ。
「別に最初は死んだっていいんだ。倒せるという事実があればいい。今からそれぞれ一人ずつボスモンスターを倒すこと。それを課題にしてやる。期間は一週間。討伐した証拠を持ってくること。それができねえのならクラン登録はやめちまえ」
「厳しいですね……。一週間……」
「でも、さすがに言うとおりだね。貴族も相手する以上、そういう魔物と対峙するしかないときもあるし、無理だと断ったらさすがにね……」
「聞くしかねえよ。俺はいいぜ。やってやる。ボスモンスターならなんでもいいんだな?」
「いいよ。ボスモンスター一体一体、今の私たちのレベルとかじゃ勝てるかぎりぎりのラインだ。簡単なやつは一体もいねえぞ」
グリズリーと戦ったからわかるけどな。ボスモンスターは私たちじゃ相当きつい。
私も相当粘って一体討伐できたぐらいだからな。あれは本来複数人数で戦うことを目的としたモンスターだろう。
「まぁ、しょうがない。僕もいいよ。ただ、戦う時のコツはさすがに教えてくれるよね?」
「それはまぁ、全員が受けるっていうんなら教えてやる」
「……しょうがないですね。私も」
「ワグマは……。まぁ、別にやんなくてもいいかもしれないけどな」
「なぜです?」
「闇魔法は見た限りだとデバフのほうが魔法の数が多い。火力がそんなにないし、サポートをメインとするならだれかと組むこと前提になるからな。むしろ、この挑戦で一番きついのはワグマだ」
そういうと、ワグマは少し考えこむ。
「……じゃあ私はパスで。私はサポートに徹することにします」
「楽なほうに逃げた!」
「そうじゃねえよ。私たちが一緒に戦う時に回復役とかいなかったら困るだろ。ワグマの場合は条件は一つだ。回復魔法を覚えること。ゲームで回復がないとまず始まらねえ」
「わかりました。ただ、回復魔法となると魔法使いより神官のほうがいいのですが……。転職するとレベル1になっちゃうんですよね」
「それはしょうがねえだろ。ワグマの場合は私もレベル上げには付き合ってやる」
「じゃあ、転職しましょうか」
残りはあと一人だ。やるといってないやつは一人。
「オイリ。あとはてめえだ」
「えっ」
オイリはまだ悩んでいるようだ。できるかどうか。
出来るかどうかじゃなく、本来はやるしかない。けれど、オイリはこの状態だと非常に悩む。優柔不断で、なるべく楽をしたいほうだから本来はしたくないはず。
でも、心の中でやるしかないと理解している。だからこそ葛藤するはずだ。
「オイリに決断させるのは難しいわ……」
「ま、そんときゃみんなに置いていかれるだけだ。たった一人の足手まといとしてクランに所属することになる」
「……るもん」
「ん?」
「やるもん!!!」
と、むきになって言い出した。待ってた。
「あなた……。煽りましたね……」
「やらせるって言わせんなら煽ったほうがいい。これも戦いだ」
「はぁ……。まぁ、勢いでやらせるのはいいんですけどね。オイリ。そういったからにはもう弱音はいて無理だとかは言えませんよ。それでもいいんですね?」
「足手まといになりたくないし! 私も強くなるし!!! やる!!!」
「オッケー。じゃ、ゼーレ先生からの戦闘講座でも始めてやるよ」
さすがに、何も教えずに戦えというのも酷な話。それをするほど私は鬼じゃねえ。