北海道に来た!
雪が降っている。
私たちは暖かい車の中で、月能の別荘に移動していた。冬休みの期間は少ないが、その間は月能の家でバカンス。
「へぇ、ログハウス的な造りなんだな。スキー場のロッジみてえ」
「そういう風にしたんですよ。荷物はそれぞれ寝る部屋においてくださいね」
「一緒に寝るんじゃないの?」
「それでもいいですが、ホテルのように完全個室でもあるので好きなほうを選んでくださいね」
「一緒にねよーよ!」
「わかりました」
ということで、私たちは一部屋で寝ることになった。
荷物を部屋に置き、私は上着を羽織る。外はもうマイナスの気温の世界で、私たちが住んでいる東京よりはるかに寒い。
念のためにこれでもかというくらい防寒対策はしてきたが、それでもちょっと寒さを感じる。
「どこかいくんですか?」
「この近くの探検。コンビニとか近くにあったらいいなって思ってるけどなさそうだし、コンビニの場所とか把握しておきたいし」
「そうですか。私もついていきますよ」
「私もー!」
「じゃ、早くしろ」
私はもこもこのブーツを履く。ぬくぬくしたブーツだから大丈夫だが、心配なのはよくきく路面が凍ってて滑って転ぶこと。
さすがに滑り止めはないからな……。
「それじゃ、行きましょうか」
「はふー。外寒いから覚悟しないとねー」
私たちは外に出る。
少し積もった雪に私たちの足跡が残っていた。この雪が東京だったら今のところパニックだろう。東京は北海道と違って雪への対策がそこまでない。というかそこまで降らないからな。
私たちは道路を歩く。
隣には車が通っている。というか、街中ではなく郊外にあるからか、本当に距離があるな。
「コンビニまで距離ありすぎるだろ……」
「北海道は広いんです。夏場だったら自転車使えるんですけどねぇ」
「くしゅんっ。さむっ」
私たちは歩いていると、やっと街の中についた。
そして、目の前にはオレンジ色の看板がある。
「へぇ、これが北海道だけにしかないコンビニ……」
「茨城県とかにも一軒あるんですけどね」
「ここが最寄りか。歩いて何分かかってんだ……。なんか一駅分歩いた感じだな」
「もう足へとへとー……。寒いし中入ろうよ……」
「そうですね」
私たちはコンビニに近づいた。
だがしかし、コンビニの駐車場の路面が凍っており、私はつるっと足を滑らせて転んでしまった。顔面を思いきりぶつける。
「いっつぅー……」
「気を付けてください。凍ってるんですから」
と、月能が手を差し伸べてきたとき、どこかから笑い声が聞こえる。
「転んでやがる」
「笑ってやるなよ。可哀想だろ」
という嘲笑の声。
その声のほうを見ると、金髪に髪を染めた男二人が立っていた。私は立ち上がり、その男たちに近づいて、首根っこをつかむ。
「テメェ……笑うんじゃねえよ……」
「うがっ……す、すげえちか……くるしっ……」
「てめぇ! 放しやがれ!」
と、片方の男が殴り掛かってきた。私は首根っこをつかんだ男をその男めがけて投げ飛ばす。
「この私を嘲笑ったこと後悔させてやる」
「そこまでにしておきなさい」
と、私の頭をたたく月能。
思わず前のめりになり、また転んでしまう。
「ここまできて喧嘩はだめですよ。あなたたちもすいませんでした。でもまぁ、報復に来たらそれこそ返り討ちになると思いますから報復しないことをおすすめいたします」
「ひいいいい!?」
「そんなゴリラ女に誰が報復にいくか!」
と、逃げ帰っていった。
ったく、嫌な思いさせやがって。私は立ち上がろうとすると、後ろで月能が何か言いたげな気迫を放っているのに気づく。
怒ってらっしゃる……。
「花音。北海道まで来て問題ごとを起こすとは何事ですか……」
「ひっ!?」
「今先ほどの喧嘩で店員が警察を呼ぶところだったんですよ。今は衣織がなんとか警察はやめてもらうよう交渉に行ってますが……。手間をかけさせるんじゃありません」
「す、すんません……」
「前に警察に保護されて留置場にいたとき、だれがあなたを出してあげたと思ってるんですか? そこまで私に迷惑をかけるようなら考えがありますが」
「申し訳なかったです」
私は氷の床に頭をつけた。