赤髪の大王
王都の街を私たちは眺める。
フレッツェン侯爵領から王都までは馬車で三日くらいかかる距離にあるという。比較的近い方ということなので、三人には急いで向かって来いとメッセージを送っていた。
「さて、王都観光……。素直にしますか?」
「いんや……。王都にはたくさん依頼とかクエストとかあんだろ。私らの金も無限じゃねえし、金稼ぎと……冒険者のランク上げもしねえとなァ」
「そうですね。では、冒険者ギルドで依頼を受けましょうか」
マップを見ながら、私たちは冒険者ギルドに向かった。
冒険者ギルド本部と書かれた看板が掲げられ、中に入ると、あの田舎にあるギルドとは大違いで、規模がものすごいくらいだ。
掲示板も、なにもかもでかい。人数も多い。
「すごいですね……。まぁ、とりあえず受けれる依頼を受けましょうか」
そういって、ワグマが一つの依頼を手にした。
それは討伐系の依頼だった。行商人が小型の魔物にいたずらされるので、討伐するか追い払ってほしいということだ。
その依頼を受け、私たちは王都の門をくぐる。
「あれね。あの小型の魔物」
「おー、なんつーか、かまいたちみたいな感じの見た目してんな」
手には鎌のように鋭くとがっているイタチ。
鎌イタチ、か。私はとりあえず切られないように手を竜変化させておき、一気に仕留める。
「オラぁ!」
私は鎌イタチを竜の手で握りつぶし、切り裂き、ぶっ飛ばす。鎌で攻撃しようとしてきたが、竜の手で受け止め、そのまま返り討ち。
こういう雑魚は屁でもない。
「おー、さすがの戦闘力やなぁ」
と、木の上で誰かがいた。
私は拳を構えながら期の上を見ると、糸目の男が木の上に座っていた。プレイヤー、だな。その男は「よっ」という声を出して木の上から飛び降りてくる。
「あんたが有名な蒼眼の死神やな? その戦いぶりを見て確信したで」
「だから何だっていうんだよ。お前は私を知ってても私はお前を知らねえぞ」
「ああ、自己紹介まだやったな。俺はゲン。大阪では赤髪の大王として名をはせてるんや。いやぁ、一目お会いしたかったでェ。蒼眼の死神。不良なら俺を知っとるやろ?」
「知らねえよ。他人のことなんて興味ねえし」
「そか。なら、今覚えていってもらわへんとなぁ!」
と、拳を大きく振るう。私は不意を突かれて思わずのけぞった。
私はそのまま態勢を立て直し、竜の手を戻し、ぶん殴ろうとする。が、私の拳が受け止められ、拳が振り下ろされる。
私は左手で拳を受け止める。
「いきなりのご挨拶じゃねえかよ。そこまで喧嘩がしてえのか?」
「俺は別に喧嘩がしたいというわけではあらへんで? 東京の死神の腕が知りたいっちゅうだけや。死神さんの実力、俺以下やったらつまらへんからのぅ!」
「なるほど。強さを知りたいのかよ。ならゲーム内でやっても意味ねえだろうが!」
私は回し蹴りを食らわせる。
「こいつ、足も使えるんか!」
「私は女だからな。パワーで男に劣る分、テクニックのほうを重要視している」
「なるほど……。賢いなぁ。パワーなら俺のほうがあるとおもっていたが、テクニックに関してはお前のほうが上やな……。回し蹴りなどの蹴りは俺は得意やあらへん」
「……それが卑怯っていうんなら喧嘩じゃねえだろ」
「もちろんや。拳一つで戦うのはボクシングだけでええ。何でも使って勝つってのが、喧嘩やからなぁ!」
ゲンは石を投げてくる。
私ははじき落とす。私はそのまま距離を詰め、首根っこをつかむ。そして、地面にたたきつけた。そのまま、足で頭を蹴ろうとすると、ゲンは身を引き躱す。
「くっ……。やはり蒼眼の死神は力だけで屈服させれるほど甘くない」
「当たり前だ。赤髪のシャンクスだかトモだか知らないが、私はそうそう屈服するはずがない」
「これはまずいなぁ……。予想以上にやばいやつに喧嘩を吹っ掛けたもんや」
「それに、ひとつ言っておく」
「なんや」
「私は蒼眼の死神って呼ばれたくない。恥ずかしいし」
「……それは言わへんお約束やろ」
と、一気に空気が変わる。
相手の素のツッコミが来た。
「恥ずかしいだろ。蒼眼の死神って。青い目をしてるのは親がドイツ人だからその遺伝ってだけだし。お前の赤髪は絶対染めてるだろ」
「仕方ないやん! 俺かてそういう髪を染めるのにあこがれとったんや! 赤い髪に染めて喧嘩しとったらいつしか赤髪って呼ばれるようになったんや! 恥ずかしいいうな! 俺やって恥ずかしいんやぞ!」
「じゃあ言わなきゃいいだけじゃねえか!」
私たちがそう話していると、二人が私たちの前を遮る。
「そこまでにしておけ」
「そこまでですよ」
ワグマと、もう一人の男性だった。
「よぅ、久しぶりだな。阿久津」
「そうですね。不死帝様」
……知り合い?