王都へ!
私たちは執務室に案内され、ソファに座らされる。
紅茶を差し出されたので、飲みながら話をすることになった。
「まずは、姫様を見つけていただきまことに感謝いたします」
深々と頭を下げる。
私は紅茶を飲みながらその感謝の言葉を聞いていた。
「うま」
「紅茶の感想の話してる場合ではないですよ」
「わり」
私は紅茶を置き、会話に集中することにした。
頭を上げるフレッツェン侯爵。
「改めて、私はフレッツェン侯爵家当主、アーノルド・フレッツェンというものです。よろしくお願いいたします」
「私はワグマです。こちらが仲間のゼーレと申します」
「ゼーレっす。よろ……」
そういうと、ばちんと頭をたたかれる。
「ゼーレです、ですよ」
「……ゼーレです」
「普段通りで構いませんよ。私には。それで……姫様を見つけていただいたお礼は私ではなく、王から授けられるとは思います。王は姫様がいなくなって夜も眠れなくなっていますから」
「…………」
リリスは視線を逸らす。
「なので……。今から出申し訳ありませんが、転移魔法でともに王都へと向かってはくれないでしょうか」
「私たちが? ともに?」
「王は二人の話も聞きたいと思われます。また、褒美の話をするにはあなたたち二人がいないと始まりません」
「……わかりました。行きましょう」
ということで、私たち二人は王都に向かうことになった。
転移魔法は限られた人間しか使えず、上級貴族の間では一人持っていたらいいといわれるまで転移魔法を所持するものが少ないのだとか。
この家にも一人いるらしいので、その人を呼ぶと、少し年老いた執事の人だった。
「旦那様、お呼びでございましょうか」
「転移魔法を使って王都まで向かう。頼んだ」
「かしこまりました。では、体に触れさせていただきます」
「ああ」
と、執事の人が右手をアーノルドさんの左肩に置く。
そして、執事さんの左手は私の右肩に置かれたのだった。
「ワグマ様、ゼーレ様と手をつないでくださいませ」
「あ、はい」
私の左手と、ワグマの右手が繋がれる。
なんだか恥ずかしい気がする。まぁ、それはいい。
「では、転移いたします」
そういうと、目の前の光景が一瞬で変わった。
部屋から部屋にいったことは変わりないが、なんだか内装が変わっていて、目の前に突然メイドが現れたのだった。
メイドはひゃあ!と声を出す。
「驚かせて済まない。さて、王都にある我が屋敷に転移した。これから馬車を手配して王城に向かいます。姫様、もう逃げないでくださいね」
「……はい」
「あなたがいなくなったことでどれだけの人に心配をかけたか、それをお考え下さい。あなたの立場では簡単に投げ出すようなことはできません」
「……だから王族っていう立場嫌なのに」
「生まれてしまったものは仕方ないでしょう」
リリスはぼやき、それをアーノルドさんは注意する。
私の目には二人、仲良しに見えた。
「仲いいな……」
と、ぼそっと言うと。
「「仲良くない!!」」
と、なぜかそういう返答が来た。
「私がこの姫様と仲がいいなんてありえません。立場も守らず、学生の時から……。思い出しただけで腹が立ってきます。もっとしっかりしなさい!」
「うるさいなぁ! 学生のときから変わってない堅物! バカ! あほ!」
「なにを!? すぐそうやって悪口いうことをやめろと言っているでしょう!」
「お前にだけしか言わないよーだ! バーカバーカ!」
と、なぜか口げんかが始まった。
というか、学生時代からの知り合い……。リリスたちって今何歳なんだろうか。いやまぁ、それはおいておいて。
隣のワグマがなにか言いたげに私を見ている。
「なんだよ」
「あなたが火をつけたんだからあなたが止めてくださいよ」
「夫婦喧嘩は犬も食わぬっていうだろ」
「「夫婦じゃない!!」」