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喧嘩はできない

 ニャルラトホテプとの決戦後、私のアバターは使えなくなった。

 ログインできなくなったわけではなく、転生体アバターというのが用意され、その転生体アバターで行動することになったようだ。

 転生体となって変わったのはレベルだけ。レベルが20くらい下がったこと。それだけだった。


 そして、今現在。

 私は社長室の椅子に座っていた。


「なぁー、もうやめてえんだけど」

「跡を継いだのでしょう? しゃんとしなさい」

「茂治さん、急逝しちゃったしマジでいきなりだもん」


 高校卒業後、茂治さんの体に悪性の腫瘍が見つかった。余命宣告され、その余命の中で私に継がせるためにいろいろと動いていたようだ。

 大学を卒業してすぐに茂治さんがなくなり、私はいきなり社長の座についた。


「ねーえー。しゃちょー。お菓子ないのー?」

「お前な……。なんで入り浸ってんだよ私の会社に」

「女優業はないのですか? 衣織」

「あるけどー……。枕営業させられそうだったから逃げてきた」

「干されるぞ」

「あんな業界で干されるんなら干されてもいいよ。その代わり干されたら雇って?」

「お前な……。コネ入社は嫌われるぞ」


 衣織は社長室でお茶菓子をつまんでいる。


「で、月能。お前のほうは最近どうよ?」

「ぼちぼちですね。徹夜もたまにしますが、いいゲームは出来上がってますよ」

「そう。ならいい。お前の作ったゲームに外れないしな」


 私たちの年齢は24歳となっていた。

 月能は大学卒業後の二年間で3本ゲームを出し、どれも売れていた。

 衣織は父と母の影響で女優業になったが、思っていたのと違うようで、わがまま言っているようだ。


「おいーっす、社長。元気してるか?」

「どうもー」

「おう。菅原、本田」


 菅原と本田。アイドル二人組はまだアイドルを続けているらしい。

 最近、ファンの間じゃ大人の色気が増したとしてさらに人気に拍車をかけているようだ。大人パワーというのは恐ろしいものだ。

 私たちのクランのメンバーもそれぞれ前向きな未来に進んでいるようだった。アルテミスなんかうちに入社してすぐに専務となっていた。というか、優秀すぎて専務にするほかなかった。


「何の話してたんだ?」

「近況報告。最近会えなかったし」

「あー。あ、社長。この前のライブの出資ありがとな」

「今更かよ。いいよ。お前らはうちのCMでもこき使わせてもらってるしな」

「それもそうだね。あ、お菓子もらうよ」


 二人もソファに座ってお菓子を食べ始めた。


「で、今回呼び出したのはなんでだよ」

「なんかあったの?」

「ん? ああ、ちょっと私の大事な報告があってな」

「大事な報告?」


 私は左手の薬指を見せる。


「……まさか」

「えっ!?」

「へぇ……」

「誰と!?」


 四者四葉。

 

「結婚することになった」

「お前が一番乗りかよ……」

「恋愛と程遠い学生生活だったくせに……」

「で、相手は?」


 と、相手が気になるようで、月能と衣織は相手が誰かとものすごく訪ねてくる。


「高校時代に田中っていたろ。あいつ」

「ああー。あの人」

「どっちから告白された!?」

「あっち。卒業時に付き合ってくれと言われてな。そっから付き合って、大学卒業したら結婚しようといわれて、この前やっと籍いれてな。阿久津家に入る覚悟はあるかって言ったらびっくりしてた」

「まぁ、そうでしょう。高校時代まであなたの苗字は市ノ瀬だったんですから……」

「阿久津家の血が入ってるなんて夢にも思わないよね普通」

「とまぁ、そんなこんなで、結婚まで至ったわけだ。式には呼んでやるからな。アイドル二人は余興でも用意しておけよ」

「じゃ、とびきりのラブソングを用意していくよ」

「やめろ。式場を修羅場にすんな」


 アイドルのラブソングなんて騒ぎになるだろうが。


「話は終わり。解散でいいぞ」

「……このまま解散っていうのも味気ないよね」

「そうだな」

「んじゃ、飲みいこ! 飲みに! 私お勧めの居酒屋あるんだよねぇー!」

「いいですね。花音。いきますよ」

「おう。私の結婚祝いとしてパーっとやろうぜ」

「人の金だしじゃんじゃん飲もー!」

「……もしかして私奢らされんの?」

「いいじゃん! 金持ってんだから!」


 私の祝杯なのになぜ私が払うのか。

 わからないが……。まぁ、いいや。


「しょうがねえな。結構高めの酒でも飲むか」

「うれしそうですね」

「……まぁな」


 私たちは車に乗り込んだ。

 運転手の人が車を走らせる。


「しかし……あの不良少女だったあなたが今では社長ですか。感慨深いものがありますね」

「…………それはもう過去のことだろ」

「ですね」

「私は思い出に入り浸るのが嫌いなんだよ。それに、不良だとしても、蒼眼の死神と呼ばれていても、多分私はもう喧嘩じゃ勝てない」

「何年もしていないからですよね」

「ああ。体がなまってる」


 だからもう、喧嘩はできねえな。












駆け足気味で終わったかと思います。

なんか、終わる予定じゃなかったのに終わってた。なんかキャラが勝手に動いてた気がします。

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変態、ゲームに立つ!
新作です。VRMMOものです。
読んでもらえると嬉しいです。
― 新着の感想 ―
[一言] 完結かぁ……。最初から最後まで見させていただきました。本当に面白くてよかったです!まさか最後結婚するとは思わなかったです。でも、凄くほっこりしました!最後まで本当にありがとうございました‼️…
[一言] これで完結ですか…… 最後のフラグにしか聞こえない… それ故なのか、どっかにまだ続いて欲しいと思ってる自分がいます 完結おめでとうございます ところで、ゲーム内で戦って無かったの?
[一言] 田中って誰かと思ったら、修学旅行で、一緒だった人か……
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