ちょっくら世界を救ってくる ④
戦いは佳境に入る。
攻略の糸口はなんとなくつかめた。勝てる相手だ。私もそれなりにダメージはおってはいるが、心は折れていない。
まっすぐと、ニャルラトホテプを見据える。
『ちょこざいな青二才がッ! この私に逆らおうなどと思い上がりをおぉおおおおおおお!』
ニャルラトホテプは口にまた再びピンク色の気体をためる。
私はニャルラトホテプの体をよじ登り、そのまま口をふさいでやった。ニャルラトホテプは目を見開き、そのままそのピンク色の気体が口の中で爆発を起こしたようだ。
「やっぱてめぇ、そのエネルギーみたいなのは自分にも害があるようだな」
多分、あれは人間でいうガソリンみたいなものだろう。
よく大道芸で火吹き芸というので、ガソリンのような可燃性の液体を口に含んで火に吹き付けるというのがある。それの火がいらないバージョンのようだ。
人間だってガソリンを飲み込んでしまえば体に毒。死ぬからな。あれもニャルラトホテプが飲み込めばダメージがある。
『ぐが……が……』
「てめぇ、もう体力ほとんどないだろ」
『こうなれば……奥の手……を』
ニャルラトホテプは地面を思いきりぶん殴った。地面が崩れ、私もろとも落下していく。
『共倒れと行こうではないか! あのブラックホールは私でも制御できん代物! 私とともに飲まれるがいい!』
「そうはいくかよ」
私は落下する瓦礫の上に立つ。
上に、上にと飛び乗っていく。
『道連れをそうやすやすと逃がすと思うかァ!』
と、私の足に巻き付けてくる舌。
トゲトゲ武装でも引きはがせそうにない。私はあの体重を支えるのは無理だ。だがしかし……。私もいっしょに死ねば、もしかしたらこのニャルラトホテプは倒した扱いになるか?
……いや、こういうのは私が死んだらダメなパターンだろう。何とかして生き延びる道を……。
「……いや、めんどくせえ」
私は体を放り投げる。
「このまま地獄へと逃避行と行こうぜニャルラトホテプ! 実は私も混沌を招く側だったの忘れてたぜ!」
『ああ、そうかい私の女神よ! なら今までの喧嘩は同族嫌悪といったところか!』
「だと思うぜ! 一緒にブラックホール、飲まれてやらァ!」
私は秩序の使いじゃない。
不良だったのだ。喧嘩は当たり前。私自身、混沌を招くほうだった。不良であった過去は拭えたりはしないが、それでも、前を向く必要がある。
過去は変えられないが、乗り越えることはできる。受け入れ、乗り越えようか。
「ま、一つ言っておくけどな、私は混沌とはもうおさらばするつもりだよ! もう飽きた」
私がそういうと、ニャルラトホテプは最終形態から元の姿に戻ったようだ。シルクハットをかぶり直し、にっこりと笑う。
「そうですか。私も同様ですね。もう、私たちの死は逃れることができない。私が死ねば、混沌も終わる。そんな世界を見てみましょう。同志よ」
「ああ、ま、見れたらな」
私たちはそのままブラックホールに飲み込まれていったのだった。
次で終わり!




